フランシス・ベーコン作品が約142億円で落札 アート作品のオークション史上最高値!

今月のニューヨークの大手オークションハウスで開催された現代アートセールでは、アート作品のオークション史上最高額と第4位の落札があった。史上最高額を記録したのは、2013年11月12日にクリスティーズで開催された”Post-War & Contemporary Art”のイーブニング・セールに出品されたフランシス・ベーコン(1909- 1992年)の“Three Studies of Lucian Freud” (1969年)。友人の画家ルシアン・フロイドが木製の椅子に座ってポーズを取っている三連作(トリプティック)だ。ベーコンは今年春に東京国立近代美術館で開催された展覧会もまだ記憶に新しい20世紀を代表するアイルランド出身のアーティスト。落札予想価格上限を大きく超える142,405,000ドル(約142億4050万円)で落札され、2012年の春にササビーズ・ニューヨークでつけたエドヴァルド・ムンクの“叫び”の119,922,496ドルを上回った。

続いて開催されたササビーズの”Contemporary Art”イーブニング・セールでは、アンディー・ウォーホールの“Silver Car Crash (Double Disaster)” (1963)が、これも落札予想価格上限を大きく超える $105,445,000ドル(約105億4450万円)で落札。ウォーホールは、ベーコン、ムンク、ピカソに続きオークション史上第4位の高額落札となった。

現代アート分野の一部として取り扱われる写真作品では、特にクリスティーズで高額落札が散見された。シンディー・シャーマン(1954-)の71.1 x 121.9 cmの巨大作品”Untitled #92,1981″が落札予想価格上限を大きく超える2,045,000ドル(約2億450万円)で落札。
二人組アーティストのギルバート&ジョージの”Red Morning (Hate), 1977″が落札予想価格内の1,805,000ドル(約1億8050万円)で落札されている。

これらはいかにも景気の良い話なのだが、アート業界の全分野が活況なわけではない。
経済実態はというと、雇用や消費の先行きに不安が残る中で中央銀行の金融緩和策継続が株高や貴重な現代アート作品などの高騰を招いているわけだ。しかしここ数年続いている市場の2極化傾向にいまも変化はない。高額な希少作品への需要が強い半面、オークションに頻繁に出品される低価格帯作品の動きが鈍い。
またブランド化している大手高級オークションハウスでの落札は比較的好調だが、その他の知名度が低い業者での落札率は低迷傾向にある。特に低価帯アートが圧倒的に多い写真作品の動きは相変わらず低調だ。

ちょうど10月~11月にかけて、中堅以下のブランド力にやや欠けるオークションハウスでの写真オークションが相次いで開催された。Bonhams(ニューヨーク)の総売上高54.9万ドル(約5490万円)、不落札率は約45%。Yann Le Mouel(パリ)の総売上高31.7万ユーロ(約4280万円)、不落札率は約60%。Heritage Auctions(ダラス)の総売上高46.1万ドル(約4610万円)、不落札率は約18%。 売り上げは総じて低調で、特にBonhamsとYann Le Mouelの不落札率は際立って高いといえよう。

アート写真市場でのオークションは、ディーラーの在庫を仕入れる場でもある。最低落札価格の下限近くでは必ずその作家を取り扱う業者のビットがある。店頭での顧客の買いが強い場合は、多少多くの金額を支払っても在庫を補充しようとする。現在のオークションの低迷は、彼らが運よくバーゲン価格でなら買おう、という弱気姿勢の表れだと思う。店頭での低価格帯作品の売り上げがそんなに強くないことを反映しているのだろう。
主要コレクターはアート分野によって異なる。それは現代アートでは富裕層だが、アート写真では中間層だと言われている。いまの状況は所得や雇用が伸びない中間層の状況が反映されているのだろう。

11月大手オークション・ハウスはパリで写真オークションを行う。ササビーズ、クリスティーズは、ともにパリフォトの期間に合わせて開催。クリスティーズは3つのセールを実施している。こちらの結果分析は別の機会に行いたい。

(1ドル@100円、1ユーロ@135円換算)