2014年春のアート写真シーズン到来 オークション・プレビュー

長い冬が終わり、いよいよ春のアート・シーズンの到来だ。
今週から始まるニューヨーク・アート写真・オークションのプレビューをお届けする。
私が注目しているのは、現代アート系コレクターの動向だ。ウィリアム・エグルストン、リチャード・ミズラック、ピーター・ベアードなどはもともとは写真分野だったが、現代アート系コレクターが評価したことで相場が上昇している。
20世紀写真のうち、ヴィンテージ・プリントの相場展開も興味深い。同じように、貴重な20世紀写真も上記コレクターの物色対象になりつつあるからだ。つまり、どんな貴重な写真でも現代アート写真と比べると割安だということ。
またアンセル・アダムスはクラシック写真の巨匠だが、彼の大判サイズ作品は現代アート写真の元祖的な解釈が行われるようになってきている。クリスティーズに出品される彼の巨大作品の入札にも注目したい。

・フィリップス(Phillips de Pury & Company)、ニューヨーク
4月1日

フィリップスは、大手3社では一番多い約271点が出品される。
注目されているのは13点が出品されるウィリアム・エグルストン。目玉となるのは赤くペイントされた天井を撮影した名作”Greenwood, Mississippi,1973″。これはエディションが付けられて販売される前に制作された1970年代の貴重作品。落札予想価格は22万~28万ドル(約2200~2800万円)。杉本博司のポートレートシリーズからの134.9 x 106 cmの大作”The Music Lesson, 1999″が出品される。これは17世紀のオランダの画家ヨハネス・フェルメールの絵画がベースの作品で、落札予想価格20万~25万ドル(約2000~2500万円)。人気が高いピーター・ベアード作品も複数出品される。
注目は”Tsavo north on the Athi Tiva, circa 150 lbs.- 160 lbs. Side bull elephant, February, 1965″。これは約122.9 x 202.6 cmの超大作で、落札予想価格は8万~12万ドル(約800~1200万円)。現代アート系では、トーマス・ディマンドの182.9 x 243.8 cmサイズの”Abgang/ Exit, 2000″が注目されている。落札予想価格は10万~15万ドル(約1000~1500万円)。アンドレアス・グルスキーの約101.6 x 194 cmサイズの”Paris, Centre Pompidou, 1995″の落札予想価格12万~18万ドル(約1200~1800万円)。
20世紀写真も非常に充実しており、アンドレ・ケルテス、ロバート・フランク、ダイアン・アーバス、ドロシア・ラング、アーヴィング・ペン、ヘルムート・ニュートンなどの逸品が出品される。
その中で注目されるのは彫刻家として知られるコンスタンティン・ブランクーシの珍しい写真作品”Endless Column in Steichen’s Garden at Voulangis, circa 1923″。落札予想価格は、8万~12万ドル(約800~1200万円)。ラースロ・モホリ=ナジの”Mein Name ist Hase ?ich weiss von nichts (My Name is Hare ? I Know Nothing), 1927″は落札予想価格6万~8万ドル(約600~800万円)。

・ササビーズ、ニューヨーク
4月1日~2日

ササビーズは”The Inventive Eye: Photographs from a Private Collection”で31点、複数委託者の”Photographs”で187点がオークションに出品される。19世紀から現在に至るまでの写真史を網羅する興味深い名作が並んでいる。
特に20世紀初頭のヴィンテージ作品が数多く出品されているのでその動向は要注目だろう。カタログ表紙のエドワード・スタイケンの”Gloria Swanson,1924″、アルフレッド・スティーグリッツの”Georgia O’Keeffe (Nude Study),1918-19″、同じくスティーグリッツの”Georgia O’Keeffe (By Car),1933″はすべて落札予想価格が30万~50万ドル(約3000~5000万円)。
エドワード・ウェストンの”Head Of An Italian Girl (Tina Modotti)”の落札予想価格は25万~35万ドル(約2500~3500万円)。マン・レイの1点物”Rayograph (With Coil, Handkerchief and Chain)”も注目作。落札予想価格は40万~60万ドル(約4000~6000万円)。ラースロ・モホリ=ナジ作品は4点出品されるが、”Fotogramm (Photogram with Spiral Shape)”の落札予想価格15万~25万ドル(約1500~2500万円)。もう1枚のカタログ表紙作品はアウグスト・ザンダーの”The Painter Heinrich Hoerle”。こちらの落札予想価格も15万~25万ドル(約1500~2500万円)。

・クリスティーズ、ニューヨーク
4月3日

クリスティーズは”The Range of Light:Photographs by Ansel Adams”という、アンセル・アダムスの単独オークションと複数委託者オークション”のPhotographs”を開催する。
それぞれ25点と212点が出品される。アダムス・オークションのハイライトは、大判約92X139cmサイズの”Winter Sunrise, Sierra Nevada from Lone Pine, California,1941″。落札予想価格は30万~50万ドル(約3000~5000万円)。ちなみに同作品の35X45cmサイズも出品されており、こちらの落札予想価格は希少性が違うことから3万~5万ドル(約300~500万円)。
複数委託者オークションはほとんどがモダンプリントの出品、そのなかで注目作は、カタログ表紙のフィリップ・ハルスマンのライフ誌のカヴァー写真”Marilyn Monroe,1952″。これは作家のエステートから出品された貴重作で、落札予想価格は7万~9万ドル(約700~900万円)。
ピーター・ベアード作品はここでも複数出品されるが、注目作は”Orphaned cheetah cubs at feeding time, Mweiga, near Nyeri, Kenya, March 1968″。これは約84 x 113 cmの大作。落札予想価格は15万~25万ドル(約1500~2500万円)。
今回アーヴィング・ペンは25点が出品。そのなかでも初期プラチナ・プリントの”Woman with Roses on Her Arm (Lisa Fonssagrives-Penn), 1950″と”Cuzco Children,1948″が注目されている。落札予想価格はともに15万~25万ドル(約1500~2500万円)。
(為替レートは1ドル100円で換算)