「フォト上海(Photo Shanghai)」レビュー(1) アジアのアート写真中心地となるか?

9月5日から7日にかけて第1回「フォト上海」が上海展覧センターで開催された。
上海は中国中部の東海岸、長江の河口に位置する人口約2300万人の中国最大都市。経済成長を続ける中国を目の当たりにできる場所なので、フェア開催地としては最適だと思う。マネージメントは世界的にアートフェアーを手掛けるモンゴメリー(MONTGOMERY)が出資するWorld Photography Organisation (WPO)が担当。約40のアート写真を取り扱うギャラリーが世界中から参加している。約半分が上海をはじめ中国から。その他は、香港、東京、ロンドン、ベルリン、フロリダ、プラハ、ロサンゼルス、チューリヒ、サンタ・モニカ、コペンハーゲン、パリなどからだ。

Fahey/Klein、Peter Fetterman、Camera Workなどの業界大手ギャラリーも参加。日本からはアマナ・サルトが来ていた。初回でこれだけのギャラリーが世界中から集まったのは、実績のあるマネージメント会社への信頼と中国市場への大きな期待があるからだろう。

会場の上海展覧センターは、ソビエト連邦の経済技術支援を受けて「中ソ友好記念会館」として1955年に竣工したもの。先細りの塔が中央ホールの中心軸上にそそり立ったスケールの大きな歴史的な建造物。 

会場内部はアーチ型の高い天井と照明などの設えによりレトロな雰囲気を強く感じられる。ニューヨークのフォトグラフィー・ショーやパリ・フォトに近い趣がある。
ブースは2フロアーに分けて施工されており、1階のメイン展示場を囲むように2階展示場が設置されていた。会場の細部の作り込みには、一部雑な仕上げの箇所も散見された。メイン・スポンサーはソニーとイタリアの高級車マセラーティ。4K技術の実演や会場外の実車の展示などがあった。
特別展示は現代中国写真を展示する「Contemporary Photography in China, 2009-2014」と、Peter Fettermanコレクションからの見ごたえのあるヘンリ・カルチェ=ブレッソン展覧会だった。
私は土曜日の午後に訪れたのだが、会場の混雑ぶりには本当に驚かされた。一般入場料は50元(約850円)と地元感覚では決して安くはないとのことだったが、人気ブースの周りは本当に立錐の余地がない感じ。じっくりと作品を見る余裕はなかった。また来場者が人気作品をカメラで撮りまくっているのも特徴。記念撮影も当たり前だ。イコン的作品、ユニークなヴィジュアルの作品の人気が高いようだ。
職業柄どうしても作品売上をチェックするのだが、私の見た限り作品自体はそんなに売れている感じはなかった。東京、ソウル、タイペイなどのフォトフェアと同様に、鑑賞目的の観客か、カメラ好きのアマチュア写真家が数多く来場している印象が強かった。
しかし今回は中国での初フォトフェアであることから主催者も地元の観客の啓蒙を開催目的に掲げている。複数の参加者もそのように発言していた。会期中にわたり、写真コレクションに関するトークイベントなどが数多く企画されていた。
やはりギャラリーにとって、経済発展が続いている中国市場はとても魅力的であり、この地でギャラリーの知名度を富裕層たちにいち早くアピールしておきたいという心理が強いのだと思われる。街の持つエネルギッシュな雰囲気に実際に触れると、誰しも将来的にマーケットが育っていくような印象を抱いてしまう。 とにかく人口が多いので何が起きてもおかしくない。今回のフォトフェアがきっかけでもし実際にコレクターが生まれてくると、アジアにおけるアート写真の中心地は上海になる可能性も十分にあると感じた。
(以下はパート2につづく)