2014年現代アート系写真の高額落札
アイコン系作品の人気が継続する予感

今年の現代アート系写真市場の動きはどうようになっているのだろうか?
まず2014年の高額取引を振り返っておこう。以下に2014年の現代アート系写真のオークション高額落札ベスト10リストを掲載しておく。
1位はシンディー・シャーマンの代表作”Untitled Film Stills”21点のポートフォリオで$6,773,000(約7.45億円)。1点ものだとリチャード・プリンスの$3,973,000(約4.37億円)が最高額となった。
昨年のプリンス人気はすさまじいものだった。特に1980~1992年までに制作されたマルボロの広告写真から引用されて制作されたカウボーイス・シリーズが多数ランクインしている。アメリカの男らしさの理想像と、メディアにより作られているカウボーイの実像をテーマにした同シリーズは、プリンスの代表的なアイコン作品になったといえるだろう。現代アート市場の活況からの希少作品への需要の高まりが影響しているとも考えられる。

2013年のランキングを席巻したアンドレス・グルスキーだが、昨年はわずか8位にはいっただけだった。彼の人気はやや鎮静化してきたようだ。
7位は現代アート作家マイク・ケリー(Mike Kelley)の写真作品。中古のぬいぐるみを撮影した8作品からなるチバクローム作品で、ロックバンドのソニック・ユースの1992年発売のアルバムジャケット”Dirty”に採用されているアイコン的作品だ。

 1.シンディー・シャーマン $6,773,000(約7.45億円)
“Untitled Film Stills (21photographs),1977-1980”
クリスティーズNY 11月
 2.リチャード・プリンス  $3,973,000(約4.37億円)
“Spiritual America, 1983” クリスティーズNY 5月
 3.シンディー・シャーマン $3,861,000(約4.24億円)
“Untitled#93, 1981”
ササビーズNY 5月
 4.リチャード・プリンス  $3,749,000(約4.12億円)
“Untitled (Cowboy),1998”
クリスティーズNY 5月
 5.リチャード・プリンス  $3,077,000(約3.38億円)
“Untitled (Cowboy),2000”
ササビーズNY 5月
 6.シンディー・シャーマン $2,225,000(約2.44億円)
“Untitled Film Still #48, 1979”
ササビーズNY 11月
 7.マイク・ケリー $1,925,000(約2.11億円)
“AH…YOUTH,1990”
ササビーズNY 5月
 8.リチャード・プリンス $1,805,000(約1.98億円)
“Untitled(Cowboy),1998-1999”
フィリップスNY 11月
 8. アンドレアス・グルスキー $1,805,000(約1.98億円)
“RHEIN I、1996”
ササビーズNY 11月
 10.リチャード・プリンス $1,745,000(約1.91億円)
“Untitled (Cowboy), 1994”
クリスティーズNY 5月
 (2014年の実績は1ドル110円で換算)

2015年になり、現代アート系作品のオークションが、2月ロンドン、3月ニューヨークで開催された。今回はそこでの高額落札作品をレビューしてみたい。

クリスティーズ・ロンドンは、2月11日~12日に”Post-War
and Contemporary Art”を開催。アンドレアス・グルスキーが香港の証券取引所を撮影した180X280cmの “Hong Kong Borse II,1995,”が302,500ポンド(約5590万円)で落札された。

ササビーズ・ロンドンでは2月10日~11日に”Contemporary
Art”を開催。アンドレアス・グルスキーのゴシック様式の教会を撮影した237X333cmの大作”Kathedrale I,2007″が461,000ポンド(約8500万円)、トーマス・シュトルートの”Museo Del Prado I Madrid 2005″は、158,500ポンド(約2932万円)で落札されている。

ニューヨークでは、3月5日~8日にかけて開催された世界的に有名なアートフェアのザ・アーモリー・ショー(The Armony Show)の会期に合わせて大手がキュレーションに趣向を凝らした現代アート系オークションを行った。

フリップス・ニューヨークでは、3月3日に”Contemporary Art & Design Evening” 、4日に”Under the Influence”を開催。 リチャード・プリンス人気は相変わらず高く、”Richard Prince, Untitled (Cowboy), 1986″が114.5万ドル(約1.37億円)で落札されている。

ササビーズ・ニューヨークでは3月5日に”Contemporary Curated”を開催した。バーバラ・クルーガーの “Untitled (Our Prices Are Insane!), 1987″、250 X 248.3 cmサイズの作品が、50.2万ドル(約6024万円)で落札された。

クリスティーズ・ニューヨークでは、3月6日に”First Open”を開催。トーマス・シュトルートのエディション10、227.3 x 186 cm.の大作”Musee d’Orsay II, Paris, 1990″が19.7万ドル(約2364万円)で落札。

5月にニューヨークで開催される本格的現代アート・オークションへの助走はとりあえず順調のようだ。いままでアート写真市場での特徴だった、アイコン的作品の人気が現代アート系写真にも拡大してきた印象だ。高額の現代アート系写真セクターの中でも2極化が起こる予感がする。さていよいよ、来週から本格的アート写真のオークション・シーズンがニューヨークで始まる。低・中価格帯の写真市場の動向が注目される。

(1ドル120円、1ポンド185円で換算)