AXISフォトマルシェ3
同床異夢の参加者による写真イベント

欧米の写真界では、ファイン・アート系のフォト・フェア、写真家が集うフォト・フェスティバル、インテリア・デザイン系の商品見本市が全く別に行われている。今回のフォトマルシェはそれらの個別分野のイベントが一体化して開催されたと理解すればよいだろう。まさに日本の写真の現状を見事に表しており、共通項は写真というメディアを使用しているという点だけだ。
参加者には、ファイン・アート系、現代アート系、インテリア・デザイン系、写真家のプロデュース系、個別の写真家系、日本独自のレンタル・ギャラリー系などが見られた。それぞれの目指す目的や夢、価値観が全く違う。同グループ内では交流するものの、違うとまったく互いに関心を持たず交流もない。
それら参加者のカテゴリー別のシェアー比率もまさに日本の写真の現状が反映されていた。中心となるのはインテリア・デザイン系、個別写真家系、レンタル・ギャラリー系となる。ファイン・アートや現代アート系は少数で、ほとんど存在感がない。
今回は4日の会期中に約1300名が来場したという。各カテゴリーの観客動員をみてみよう。それは膨大に存在しているアマチュア写真家との関連性で決まってくる。アマチュア写真家を多数取り込んでコミュニティーを作っている個別写真家系、写真展示の場を提供するレンタル・ギャラリー系、幅広い商品の品揃えを目指してアマチュア写真家を含む若手写真家をリクルートしているインテリア・デザイン系の観客が多くなっている。
アート系はそのギャラリーの特色を生かした少数のコレクターを意識した展示を心がけている。アマチュアは相手にしないので、動員力は他のカテゴリーより著しく劣る。

2000年代になってアジアでも、パリ・フォトやフォトグラフィー・ショー(NY)のような海外のフォト・フェアを意識したイベントが開催されてきた。しかし、コレクターがいないのに表層だけ海外のフェアの真似をしても長続きしない。市場規模が小さいアジアでは海外のギャラリー参加が必要不可欠となる。しかし彼らは純粋に利益目的で参加する。最低でも経費が出るほどの売り上げがないと、二度とフェアに戻ってこない。海外参加者は回を重ねるごとに、激減していったのだ。

写真が売れない現状を踏まえて、フェア主催者も新たな可能性探究を行ってきた。東京・フォトもソウル・フォトも、販売目的のフォト・フェアと写真家が集うフォト・フェスティバルを融合したイベントを試みた。しかし、方向性が違う写真を無理やり融合させたイベントは中途半端なものになってしまった。うまく機能しなかった原因は、アート系の市場規模を大きく見積もり過ぎていたからだと解釈している。アジアでの現実的なイベントは、もっとアート系の比率を落として、写真家やアマチュアの取り込みを中心としたスタイルだろう。そして欧米的基準の価格帯の写真が売れないことを前提に、参加費を安くすることが現実的な主催者の運営方法と考える。
今回のフォトマルシェは、このような日本写真の現状が見事に反映された、様々な写真がサラダボール的に展示された現実的なイベントだったといえるだろう。3回目のイベントにして、かなり”写真の蚤の市”に近いものになっていた。
様々な意見があるだろうが、もし参加者が現状を正しく認識していれば(これが難しそうだが)、私はこのような日本およびアジア独自のイベントがあってよいと考える。来年以降の更なる展開に期待したい。