壁面にアート、写真などを展示するギャラリー。店舗の一種類なのだが、内装の設備投資などが最も少なく開業できる業種だろう。ほとんど什器など必要なく、ホワイト系の壁面と、簡単なスポットライトさえあればすぐにオープン可能だ。
ファイン・アート系作品の展示では、ギャラリー空間はできるだけシンプルな設えが好ましい。アート・コレクターはテーマ性の見立てを行うからフレームや展示空間など作品以外の周りには過度に主張してほしくないのだ。
また私が最近提案している限界芸術や民藝の写真版のクール・ポップ写真はどうだろうか。コレクターは写真家の作品制作背景の見立てを行い、購入後のアート展示スペースを意識して、場所との取り合わせと、フレームの設えの見立てを行うことになる。こちらも想像を膨らませられるように展示空間はミニマムな方が好まれるだろう。
作品を自律した存在として取り扱う美術館はいわゆるホワイトキューブが基本だろう。しかし本音を言うと、売買を前提として作品を取り扱うアートギャラリーにおいては、作品と相性の良いフレームや壁面色が存在するのも事実だと考える。欧米では、展覧会ごとに壁面を塗り替え、フレームも特別に用意するブランド・ギャラリーも存在する。彼らはアート・フェアでも、出品作にあった壁紙をわざわざ数日間のイベントのために設える場合もある。また欧米のコレクターの中には1点の作品のためにインテリアをすべてを変えてしまう人もいると聞く。しかし、単価の低いアート写真系はそのような予算はギャラリーにもコレクターにもない。上記のような理由を述べながら無難な白色の壁面で対応してきたのが実情なのだ。
最近では、白色壁紙の空間ではなく、個性的な色や素材の壁面や家具を設え、豊富なフレームの選択肢を提案するギャラリー・スペースも散見されるようになった。会場を作ったインテリア・デザイナーの名前が誇らしく謳われていることもある。
これらは、いま流行りのライフスタイル系のショップの傾向が強いといえるだろう。欧米では、この分野の作品供給のために広告写真家が仕事の一環として綿密なマーケティングを行い商品開発を行っている。それらはデザイン重視のインテリア系アート写真作品として様々な場所で売られている。市場規模もアート市場よりもはるかに大きい。このカテゴリーでは、フレーム・デザインやショップ・インテリアも作品の一部と考えられているのだ。実際のところすべての顧客が自分で作品の見立てができるわけではない。見立てができる人はかなりのベテラン・コレクターだ。
世の中には、経験も知識もないがアート作品を求める顧客層が多数存在する。これら一般客には、専門家によりトータルかつ巧みにマーケティングされて提示される作品の方がアピールするのだ。
ギャラリーと同様に、写真家の中にもフレームや展示スペースにこだわる人がいる。作品のテーマとコンセプト等が明快に語られるのなら、作品展示方法やフレーム選択は作品の一部と解釈される。ただし作品をデザイン感覚で理解している人もいるので注意が必要だ。それらもインテリア系のアート写真作品と判断したほうが良いだろう。
同じ写真というメディアで制作され、同じ価格帯でも、実は様々なカテゴリーのものが混在しているのだ。ファインアート系写真のコレクションでは、作品購入は自己責任が基本だ。自らが情報を収集蓄積して、考えて判断を下さなければならない。ギャラリーはそれらの情報をコレクターに提供するメディア的な役割も担っている。
ライフワークとしてコレクションに取り組む人は、ヴィジュアルの表層、ショップの展示方法、セールス・トークに惑わされることなく、能動的に作品と接して、各種の見立てを行う努力を心掛けて欲しい。それが、将来的に資産価値を持つ作品をいち早く見極めて選ぶことにつながるのだ。経験を積むと今までは見えなかった作品の良さが突然見えてくる。自分のアート写真リテラシーが次第に高まっていくのだ。それこそがコレクター冥利に尽きるだろう。
ライフワークとしてコレクションに取り組む人は、ヴィジュアルの表層、ショップの展示方法、セールス・トークに惑わされることなく、能動的に作品と接して、各種の見立てを行う努力を心掛けて欲しい。それが、将来的に資産価値を持つ作品をいち早く見極めて選ぶことにつながるのだ。経験を積むと今までは見えなかった作品の良さが突然見えてくる。自分のアート写真リテラシーが次第に高まっていくのだ。それこそがコレクター冥利に尽きるだろう。
シンプル系かライフスタイル系か、お店構えのなかにも作品の本質を見極めるヒントが隠れている。