テリ・ワイフェンバックの写真世界 デジタルで広がる表現の可能性!

現在、ブリッツで開催中の”As the Crow Flies”展。長年にわたる友人のテリ・ワイフェンバックとウィリアム・ウィリーによる二人展だ。10月に始まった写真展の会期も今週末までとなった。
ここで改めて写真展の見どころを紹介しておこう。以前、ウィリアム・ウィリーの詳しい解説は行ったので、今回はテリ・ワイフェンバックを取り上げる。
Ⓒ Terri Weifenbach 禁無断転載
ワイフェンバックは長年ライカ・カメラを使用してタイプCプリントで作品制作してきた。今回の作品は、ソニーα7RⅡというデジタルカメラで撮影され、インクジェットで制作されている。レンズは彼女が長年使用してきたライカ・カメラのものを利用している。彼女はデジタルカメラを使用して表現の幅を大きく広げている。私たちが普段見過ごしている自然をカメラを通して提示することが彼女の大きな作品テーマだ。今回写真展タイトルにもはいっている鳥。彼女は、自然の一部として常に気にかけていた。しかし鳥は動きが早いのでアナログのフィルムではうまく表現することができない。彼女の過去の作品にも、空中で静止している蜂やトンボなどの昆虫類は登場するものの鳥はでてこない。デジタルカメラを手にしたことでかなり早いシャッタースピードでの撮影が可能になった。デジタルの採用により鳥が作品の中心として登場可能になったのだ。
また今回の作品で彼女は自宅裏庭の自然風景の四季を表現している。個別タイトルの”The 20X35 Backyard”は彼女の裏庭の広さを意味する。季節によっては光線が弱い時期もあるわけで、フイルムでは限界があった状況でもデジタル利用で撮影が可能になったと推測できる。
もう一つの新しい表現は、抽象的な作品が含まれていること。デジタルの方が抽象的なヴィジュアルを作りやすいかどうかは私は専門家でないので判断できないが、明らかに絵画を感じさせる表現が増えている。フィルムだと現像しないと画像がわからないが、デジタルはその場で確認できる。たぶんそのような作成過程の違いが、抽象的なヴィジュアル探求のきっかけになったのだろう。彼女は元々は絵を描くアーティストなので、新たな方向性としてカメラによる絵画制作に挑戦していると思われる。
ワイフェンバックは来年4月に静岡県三島のIZU PHOTO MUSEUMの個展が決定している。伊豆で撮り下ろされた作品群を中心に、2005年のモノクロ作品”The Politics of Flowers”も展示されるという。新作の一部を見せてもらったが、古の日本人が山河で感じた自然の神々しさが表現されているように感じた。そこにも抽象画を感じさせるような作品が含まれていた。同展ではかなり大きなサイズの作品が展示されるという。これもデジタル写真の恩恵といえるだろう。全貌が明らかになるのが非常に楽しみだ。
なお、ブリッツでも4月にテリ・ワイフェンバックの個展開催を予定している。

“As the Crow Flies”展は、アート写真のコレクターはもちろん、写真撮影を趣味とする人にも技術的に興味深い展示だ。ワイフェンバックはフルサイズのデジタル・カメラで、ウィリーは8X10のアナログ・カメラを使用。両者の写真には、絞り解放のカラーと絞り込んだモノクロという明確な違いがある。そしてともにインクジェットで制作された作品なのだ。ワイフェンバックは元々はCプリントのプリントを自身で行っていた。いまでも学校で写真とプリントを教えている。今回のカラーの展示プリントもプリント専門家の彼女により制作されている。

ウィリーの作品は専門のプリンターがスキャンからプリントまでを手掛けた現在のアメリカのインクジェットによるモノクロ・ファイン・プリントのスタンダードだ。銀塩写真の表現力を凌駕しているという意見も聞かれるクオリティーだ。アマチュアはもちろん作家を目指す人もプリント基準を知るために必見だ。
「As the Crow Flies」
テリ・ワイフェンバック & ウィリアム・ウィリー
2016年12月17日(土)まで開催
1:00PM~6:00PM/ 入場無料
ブリッツ・ギャラリー
(*ギャラリー特別オープンのご案内)
好評につき12月18日の日曜日もブリッツはオープンします。
日曜しか来廊できない人はぜひお出でください!
1:00PM~5:00PM