秋のニューヨーク・アート写真オークション クリスティーズがMoMA所蔵品セール!

今秋のニューヨーク定例オークションでの大きな話題になっているのは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の所蔵品がクリスティーズで競売されることだ。
まず10月10日に“Photographs From The Museum of Modern Art”のデイ・オークションが開催。続いて同月の“MoMA: Pictorialism into Modernism”、“MoMA: Henri
Cartier-Bresson”を皮切りに、12月に“MoMA: Women in Photography”、来年1月に“MoMA: Garry  Winogrand”、”MoMA: Bill Brandt”、4月の“MoMA: Walker Evans”まで、テーマやアーティストを絞って複数回のオンライン・オークションが行われるという。オークション前には全米各都市で内覧会が行われるという。写真部門ではとても珍しく、クリスティーズの本セールへの異例の力の入れようがわかる。
ちなみにササビースは、オンラインのみのオークションの落札手数料の廃止を発表したが、クリスティーズのポリシーに変更はない。
美術館がコレクションをオークションで売却するのは、日本人にはやや違和感があるかもしれない。しかし、欧米の主要美術館だと、複数のプライベート・コレクションから節税目的で作品が寄贈される。当然のこととして、特に写真の場合は有名作品が重複する場合もでてくる。また、コレクションには各館の方針があり、それ以外のカテゴリーの作品の収蔵数が意図せずに増える場合がある。その場合は、将来の収蔵予算捻出を理由としての作品売却が可能なのだ。決して経営が苦しくて運営費用のためにコレクションの切り売りをしているのではない。
今回は約400点が売却され、落札予想価格は1000(約11万円)~30万ドル(約3300万円)まで、総額約360万ドル(約3.96億円)の売り上げを見込んでいるとのことだ。出品されるのは、20世紀初期から戦後にかけて活躍した写真史を代表する人たちが中心になる。アルフレッド・スティーグリッツ、エドワード・スタイケン、マン・レイ、エドワード・ウェストン、アンリ・カルチェ=ブレッソン、ウォーカー・エバンス、アンセル・アダムスなど。
目玉になるのは、1923年と1928年にマン・レイにより制作されたともに1点もののレイヨグラフ作品。20~30万ドルと、15~25万ドルの落札予想価格になっている。前者はマン・レイの友人の、詩人、ダダイズムの創始者のトリスタン・ツァラ(Tristan Tzara)が寄贈した作品とのことだ。

ニューヨーク近代美術館同館は1940年に全米で初めて専門部門を設立している写真コレクションの殿堂。同館でコレクションされていたことは、作品評価上で最高の来歴となる。世界中の美術館、企業や個人コレクションが強い興味を示すと思われる。

(為替レート 1ドル/110円換算)