マン・レイ作品がクラシック写真の
世界最高落札額!
欧州英国オークションレビュー

11月、大手業者のアート写真オークションは舞台を欧州英国に移して開催された。
まず2日にロンドンでフリップスの”Photographs”が開催。続いてパリフォトの開催に合わせて、クリスティーズとササビーズが、それぞれ単独コレクションと複数委託者のセールを開催した。ちなみに春には、大手3社ともにフォト・ロンドンに合わせてロンドンでオークションを開催している。
合計5セールの総出品数は486点で前年同期より約3%減。しかし落札率は約58%から約64%に改善した。売り上げ高は、ロンドンのフィリップスが約43%も減少したものの、パリの2社合計は約64%増加。トータルではユーロとポンドを円貨換算して合計すると約12.56億円となり、昨年同期を約33%上回る結果となった。
各社の売上結果を見る比べると、クリスティーズは約71%増、ササビーズが約57%増。数字からは、市場の中心地がロンドンからパリに移りつつある印象を受ける。
今回のロンドン・パリの結果は、2017年に回復傾向を示し始めたニューヨークと同様といえるだろう。景気が順調に回復して、株価も1年前と比べて上昇している状況が素直に反映しているのだろう。ちなみに為替レートは対ポンド・ユーロ共に昨年と比べて円安になっている。
最高額は、クリスティーズ・パリの”Stripped Bare: Photographs from the Collection of Thomas Koerfer”に出品されたマン・レイの”Noire et Blanche, 1926″。落札予想価格上限の150万ユーロを大きく超える268.8万ユーロ(3.57憶円)で落札された。(上記のカタログ表紙作品)
クリスティーズによると、これはオークションでのマン・レイ作品の最高額であるとともにクラシック写真の世界最高額とのことだ。クラシック写真の時期の定義は難しいのだが、もちろん現代アート系の写真作品は含まれない。続いたのは同じオークションに出品されたダイアン・アーバスの双子を撮影した代表作”Identical twins, Roselle, N.J, 1966″。落札予想価格の範囲内の54.75万ユーロ(約7281万円)で落札されている。

アーヴィング・ペンの”The Hand of Miles Davis (B), New York, 1986″も人気が高く、落札予想価格上限の10万ユーロの2倍近い19.95万ユーロ(約2653万円)で落札された。

今シーズンは、ペンのスティル・ライフや花などの作品の高額落札が多くみられた。ササビーズ・パリの”Collection Europeenne de Photographies”では、ダイ・トランスファー作品の”STILL LIFE WITH WATERMELON, NEW YORK, 1947″が、落札予想価格上限の8万ユーロを超える15万ユーロ(1995万円)、プラチナ・プリントの”PICASSO (B), CANNES,1957″が11.87万ユーロ(約1578万円)、”FROZEN FOODS, NEW YORK, 1977″が8.75万ユーロ(約1163万円)で落札されている。

フリップス・ロンドンでも、写真集”Flowers”に掲載されている”Single Oriental Poppy, New York, 1968″(上記画像の作品)が落札予想価格上限の7万ポンドを超える11.87万ポンド(約1780万円)で落札されている。今年はペンの生誕の百年を祝ってニューヨークのメトロポリタン美術館で大規模回顧展が開催された。ここ数年はやや上値が重かったペン作品だったが、再び注目が集まるようになったのだろう。

欧米では美術館での展覧会開催は作家の相場に大きな影響を与える。現代アート分野では2017年2月~6月にかけては、ウォルフガンク・ティルマンスの回顧展”WOLFGANG TILLMANS:2017″が英国ロンドンのテート・モダンで開催された。今年になって彼の巨大抽象作品は急騰しているのだ。

フィリップス・ロンドンで、6月29日に開催された”20th Century & Contemporary Art”では、彼の”Freischwimmer #84,2004″が、落札予想価格上限の約2倍の60.5万ポンド(約9075万円)で落札。ちなみに、同作は2012年10月フリップス・ロンドンでわずか3.9万ポンドで落札されている。4年間で約15倍に高騰したのだ。
現代アート分野の写真作品の動向は機会を改めて分析してみたい。
(1ユーロ/133円、1ポンド/150円)