2022年秋のニューヨーク・アート写真オークション。大手3社のオークションとともに、中堅業者のボナムス(Bonhams)とスワン・オークション・ギャラリース(Swann Auction Galleries)とで複数委託者による入札が10月に行われた。今期ドイル(Doyle)は、12月にオークションを開催する予定だ。
欧米のオークションでは、大手と中堅とでは業務の棲み分けがかなり明白に行われている。通常、高額落札が期待される中高価格帯作品は、優良顧客と世界的ネットワークを持つ大手業者に委託される場合が多い。中堅業者では、1万ドル以下の低価格帯の作品が中心に取引される。
10月11日にボナムスが「Photographs」オークションを開催。88作品が出品されて落札率は約43%、総落札額は34.1万ドルにとどまった。低価格帯作品の出品が約62%だった。最高額落札は、カナダ出身でコンセプチュアルな写真作品で知られる現代アーティスト、ロドニー・グラハム(Rodney Graham)の、「Typewriter with Flour, 2003」。落札予想価格1.2~1.5万ドルのところ、46,955ドル(約680万円)で落札されている。残念ながら13点出品されたポール・ストランド作品は9点が不落札。特に注目された、1点もののヴィンテージのプラチナ・プリント「Central Park, New York,1915」は、落札予想価格5~7万ドルだったが不落札。
スワン・オークション・ギャラリースは、10月20日に「Fine Photographs」を開催。314点が出品されて落札率は約66.8%、総落札額は約115万ドルだった。 低価格帯作品の出品は約63%だった。
今回の目玉は中堅業者のオークションでは珍しいドロシア・ラングの有名作品「Migrant Mother, Nipomo, California (Destitute pea pickers in California. Mother of seven children. Age 32), 1936」の、極めて貴重なヴィンテージプリントの出品。落札予想価格10~15万ドルのところ、なんと30.5万ドル(約4425万円)で落札されている。これはニューヨーク市公立図書館ピクチャー・コレクションのキュレーターで、20世紀写真の歴史的かつ貴重なコレクションを作り上げたロマーナ・ジャヴィッツ(Romana Javitz)が所有していた由緒正しき作品。
20世紀写真では、歴史的に知名度が高い有名な絵柄の作品への需要が相変わらず強いようだ。今回のスワンで高額落札されたドロシア・ラングのアイコニック作品はまさにその好例だろう。
一方でボナムスに出品されたポール・ストランド作品の場合、貴重だが絵柄が地味で知名度が低い作品は苦戦していた。有名写真家の貴重な作品であっても、コレクターが有名作を好むという、いわゆる市場の2極化傾向は相変わらず続いているようだ。
アート写真オークションは、これから欧州、英国市場に舞台が移る。クリスティーズ・パリが10月25日~11月8日、サザビーズ・パリが11月10日~16日、フリップス・ロンドンは11月22日に相次いで開催される。
(為替 1ドル145円で換算)