
ニューヨークで定期的に行われているファインアート写真関連作品の大手3業者による秋の定例オークション。今年の大体の開催概要、スケジュールと注目作品の情報をお届けする。
これまで何度も指摘しているように、いま現代アート市場の拡大とデジタル化の進行により「写真」の概念が大きく変化している。従来の19/20世紀写真に加えて、現代アート作品の影響を受けた、21世紀写真、現代アート系写真が市場で混在して取引されている。オークション会社も様々なアプローチで写真のカテゴリー分けを行っている。最近よく見られるのは、高額作品とそれ以外を作品の評価額により選別化する試みだ。また写真をプリント(版画)作品と同じオークションで取り扱うケースも散見されるようになった。今期のオークションでその傾向がより鮮明化してきたのがサザビーズだ。彼らは「Prints & Photographs」というカテゴリーを新設。10月22日開催のパートIではプリントと写真の高額作品11点が出品。その後、写真とプリントの単独オンライン・オークションが、10月14日から23日にかけて「Print Part II」、10月16日から23日にかけて「Photographs Part II」として開催される。以下がサザビーズによるプレスリリースの内容だ。
“「Prints & Photographs Part I」は、版画と写真の巨匠たちによる傑作を称える新たなライブ・オークション・プラットフォームです。2025年10月、主要な季節オークションと同時開催される本オークションでは、古典的な巨匠版画家から現代に影響を与えた現代・現代美術家まで、厳選された作品群を一堂に集めます。ハイライトには、アルブレヒト・デューラー、マン・レイ、ダイアン・アーバス、ロバート・メイプルソープ、ロイ・リキテンスタインらによる版画・写真作品が含まれます。”
同社のオークションでの高額落札候補は、ダイアン・アーバスのフォトブック表紙にもなった代表作“Identical Twins, Roselle, N. J., 1966”。落札予想価格は50万~70万ドル(約7400万~1.03億円)となる。

一方、クリスティーズは「Photographs」のオンライン・オークションを9月25日から10月10日まで開催する。幅広いカテゴリーの209点が出品される。高額落札候補は、ロット47のアンセル・アダムス“Aspen, Northen New Mexico,1958”。1968年ごろにプリントされた、77.5X97cm サイズの大判作品、落札予想価格は30万~50万ドル(約4400~7400万円)となる。ちなみに同作は2017年4月6日にクリスティーズNYで開催されたオークションで落札予想価格20万~30万ドルのところ、43.95万ドルで落札されている。

フィリップスは、10月8日に 20世紀ファッション写真の巨匠アーヴィン・ペンの写真とペインティングの代表作を含む70点の「 Visual Language: The Art of Irving Penn 」を開催。ファッション、ポートレートからスティル・ライフまで、 彼の約70年の多彩な キャリアを回顧するオークションとなる。落札予想価格は、1万ドルから30万ドルのレンジとなる。また10月9日にはライブオークションの「Photographs」を開催する。こちらは幅広いカテゴリーの213点が出品される。高額落札候補は、ダイアン・アーバスのロット119“A Jewish giant at home with his parents in the Bronx, N.Y., 1970”。これはアーバス本人が1970~1971年かけて自らがプリントしたヴィンテージ作品となる。落札予想価格は30万~50万ドル(約4400~7400万円)。続いてはシンディー・シャーマンの“Untitled #470. 2008”で、落札予想価格は20万~30万ドル(約2960~4400万円)となる。
全般的に、大手3社の取り扱い写真作品は、評価1万ドル以下の低価格帯の作品数が少なくなっている印象だ。サザビーズは上記のように高額作品が中心となっている、5000ドル(約74万円)以下の作品は、クリスティーズで209点中44点、フィリップスで213点中45点にとどまっている。低価格帯の写真作品の取り扱いは、Bonhams、Swann、Heritageなど中小のオークション会社とオンライン・オンリーにシフトしていくのだろう。ニューヨーク秋のオークション落札結果の本格的レビュー/分析は今月末にはお届けできると思う。
(1ドル/148 円で換算)
