「ブリッツ・フォトブック・コレクション2026」開催中!
日本のフォトブック市場を振り返る

ブリッツは、5月の連休明けに定期的に行っている、コレクター人気の高い、貴重な写真集を紹介する国内外の貴重な絶版写真集(レア・フォトブック)、限定写真集、サイン本、プリント付き特装版を紹介する、「ブリッツ・フォトブック・コレクション2026」を開催中。

フォトブックを中心に紹介する企画の原点になるのが、いまはなき渋谷のパルコパート1地下1階のロゴスギャラリーで2004年から2010年までに7回開催した「フォトブック・コレクション」展となる。同ギャラリーは洋書販売の洋書ロゴスの横にあるパルコ主催のイベントスペースだった。同企画は書店での新刊とレアブックの相乗効果を狙ったものだった。

2000年代の日本は、洋書写真集のコレクションがミニ・ブームだった。このブームのきっかけはネット普及によりアマゾンで洋書がかなり割安で購入できるようになったからだと分析している。90年代、洋書店で売られていた写真集は高額の高級品だった。よく雑誌のインテリア特集のページ内でお洒落な小物として使用されていた。アマゾンの登場は衝撃だった。とにかく重い写真集が送料込みで、ほぼ現地価格で入手可能になったのだ。当初は一部の目ざといマニアや専門家が欧米のアマゾンで購入していた。2000年11月に日本語サイト“amazon.co.jp”が登場して日本の一般客も今まで高価だった洋書写真集がほぼ現地価格で購入可能になるのだ。このブームは、高価で高級品だった洋書写真集が信じられないような低価格で買えるようになったから起きたのだ。そして、洋書写真集ブームがきっかけになり、同時に絶版写真集も注目されるようになった。

コレクター拡大きっかけは、1999年以降に歴史的な写真集を紹介するガイドブックの相次いでの発売も影響している。それまでは、写真集の出版歴、流通の情報がなく、評価基準となるフォトブック史が存在しなかった。
“The Book of 101 Books: Andrew Roth, PPP Editions, 2001”と“The Photobook: A History –Volume 1-3 by Martin Parr, Gerry Badger, 2004、2006、2014”がフォトブックのガイド本の代表になる。これらのガイド本自体がいま絶版になりレアブック化している。

時間経過とともに、人々が今までに持っていた高額だった洋書写真集の価格基準が、次第に下がってくる。洋書価格が安く買えるという驚きがさめ、その価格の認識が一般化し始めるのだ。そのようなときに2008年のリーマンショックが起きた。アート系商品は、心は豊かにするが、お腹を満たしてくれない不要不急の際たる商品だ。それ以降は、本当にファインアート写真が趣味の人が興味を持つ写真家の本を購入するという従来のパターンに戻っていく。

2010年代には、アベノミクスによる円安で輸入価格が上昇して、景気の長期低迷とともに市場規模は縮小均衡してしまった。レアブックの方は、フォトブックのインターネットでの情報が一般普及するようになる。大手のアマゾンやヤフオクでもレアブックや絶版写真集を取り扱うようになる。レアなフォトブック販売価格の相場は、だれでもネット検索で調べられるようになる。価格情報が民主化したことで、レアブック売買での利益率が下がり世界的に取り扱い業者数が減少していくのだ。この辺の経緯は「ファインアート写真の見方」(玄光社2021年刊)に詳しく書いたので、興味ある人は読んで欲しい。

ところで昨今の外国為替相場での円安/ドル高の進行は、フォトブックコレクターにとって本当に悩ましい状況だ。
約10年前と比べると、アマゾンでの販売価格の上昇は目を見張るものがある。だいたい10年間に渡り継続して販売されるフォトブックはかなり限られる。いまでも人気の高く販売されている“”Stephen Shore: Uncommon Places: The Complete Works”が好例になるので紹介しておく。なんと2016年は5,042円、2017年には6,631円、そして2026年のいま11,080円なのだ。もちろん価格上昇は為替だけでなく、物流コストの影響もあると思われる。しかし、10年で円貨での販売価格が2倍以上になっているのは驚くべき事実だ。特に新刊になると、本のサイズが大きくなり生産コストも上昇している。ブルース・ウェバーの最新刊「Bruce Weber. My Education」は150ドルもして、送料込みのアマゾンの販売価格は24,101円。決して気軽に買える値段ではなくなってしまった。とても残念なのだが、洋書のフォトブックは30年前と同じく高額な高級品に戻ってしまったのだ。

ブリッツは90年代から2,000年代までは、写真作品とともにレアブックを常時取り扱ってきた。しかし、その後は数年に1回程度、写真作品とともにレアなフォトブックを展示するイベントを開催するようになる。さて2年ぶりの開催となる今回の企画では、特定の写真モチーフのテーマを設けずに、ファッション、ポートレート、ドキュメンタリ、ヌード、風景、ネイチャーなど幅広い分野のフォトブックを紹介する。また、壁面ではギャラリーが取り扱う写真家/アーティストの写真作品を紹介するとともに、コレクションしている貴重な写真作品も同時展示する。海外で行われるフォトグラフス・オークションのプレビュー会場を意識した展示構成になっている。

フォトブックは、初心者にとってコレクションが比較的低予算で始められる魅力的分野といえる。かつてのように写真を掲載した本だと認識すると最近のフォトブックは非常に高価格になっている。しかし視点を変えて、さらに高騰しているファインアート写真作品の一部の、いわゆるマルチプルなのだと考えると、一転して極めてリーズナブルな価格だと感じられるのではないだろうか。
ギャラリーがお薦めするのは、小振りのプリントが付いた特装版のフォトブック。エディション数が多く設定されているので、通常のファインアート写真のプリントと比べてはるかにリーズナブルな価格設定になっている。今回の展示でも、多くの種類のプリント付き特装版を用意している。

ファインアート写真コレクションに興味ある人は、まずフォトブックの収集を検討してはどうだろうか。多くのカテゴリーのフォトブックを比較検討できる本展が、そのきっかけになれば幸いです。

(ご注意) 本展会期中は水、木曜は予約制の営業になります。ご注意ください。

・写真作品/フォトブックが紹介される予定の写真家の一部

ブルース・ウェバー、デヴィッド・ベイリー、スティーブン・ショアー、マイケル・ドウィック、テリー・オニール、ノーマン・パーキンソン、ホルスト、ジャンルー・シーフ、アーヴィング・ペン、ウィリアム・エグルストン、アンドレ・ケルテス、メルヴィン・ソコルスキー、ジャック・ピアソン、ライアン・マッキンレイ、アレック・ソス、リリアン・バスマン、テリー・リチャードソン、テリ・ワイフェンバック、川田喜久治、横須賀功光、鋤田正義、篠山紀信、倉田精二、奈良原一高、ノブオ中村、丸山晋一、ハービー山口、ヒロミックスなど、その他多数

以上

ブリッツ・フォトブック・コレクション 2026
2026年5月15日(金)~ 7月12日(日)
1:00PM~6:00PM
休廊 月曜火曜、
予約制 水曜木曜
入場無料 ブリッツ・ギャラリー