2021年のアート写真オークション
現代アート系で300万ドル超えの落札が続出

2020年のオークション市場は、世界的なパンデミックの影響で総売上高が2019年比で約31%も急減した。2021年も感染状況はあまり好転しなかった。しかし、各オークションハウスは、前年の経験からライブとオンラインとの組み合わせでほぼ通常期通りの開催予定を消化した。
総売り上げも約61.1億円と、2021年比で約20%増加した。出品点数は6276点から5063点に減少、落札率は約67.8%から71.6%に上昇している。落札点数の減少に関わらず、前記のように落札金額合計は約20%増加した。これは1点の単純落札単価が119万円から168万円に大きく増加したことによる。
2020年は、高額評価作品では出品の先送り傾向が見られ、中低価格帯では多数の換金売り的な売却が見られた。2021年になって、市場は一時のパニック状態から冷静になり、投げ売りが減少し、高額価格帯の出品が戻ってきたのだろう。なおオークションは、開催地の通貨が違うのですべて円貨換算して比較を行っている。

2021年は世界中の写真作品中心の38オークションをフォローした。いまや現代アート系オークションにアーティスト制作の写真作品や、高額なリチャード・アヴェドン、ダイアン・アーバス、アンセル・アダムスなどの20世紀写真が当たり前に出品されている。それらを取り出して、集計に加えるという考え方もあるが、ここでは今まで継続して行ってきた統計の一貫性を保つために除外している。ただし、総合の高額落札ランキングには現代アート系オークションの結果を反映させている。しかし、例えば11月のササビーズ・ニューヨークのContemporary Artオークションに出品されたロマーレ・ビアデン(Romare Bearden/1911-1988)の作品などは、写真素材を使ったコラージュ作品だ。写真作品に含めるかどうかの解釈は分かれると思う。今回の集計では、オークションへの出品実績が少ないことから除外している。
またオークションは世界中で開催されている。今回の集計から漏れた高額落札もあるかもしれない。また為替レートは年間を通じて大きく変動している。どの時点のレートを採用するかによって、ランキング順位が変わる場合もある。
それらの点はご了承いただくとともに、漏れた情報に気付いた人はぜひ情報の提供をお願いしたい。以上から、本ランキングは写真作品の客観的なランキングというよりも、アート・フォト・サイトの視点によるものと理解して欲しい。

「Twin Flames #83. Bahareh & Farzaneh, accompanied by Twin Flames Full Physical Collection (100 prints), 2017-2018」,Christie`s NY “Photographs”

さて2021年のオークション市場で特筆すべきは、やはりクリスティーズ・ニューヨークの秋のオ―クションに出品されたジャスティン・アベルサノ(Justin Aversano/1992-)による、“Twin Flames”シリーズの写真NFT作品だろう。本作は主要オークションハウスが写真オークションでNFT(Non-Fungible Token)写真作品を出品した最初の事例となった。出品されたのは、アベルサノの作品集のカバー作品「Twin Flames #83. Bahareh & Farzaneh」に対するNFTと、100枚の同シリーズの物理的なプリント作品が含まれる。落札予想価格10万~15万ドルが、予想をはるかに上回る111万ドル(約1.22億円)で落札された。写真オークションで初めて落札されたNFTであり、写真NFTの世界記録となる。
またクリスティーズの2021年の写真(Photographs)部門での最高額となった。知名度があまり高くない人の作品の落札価格が、ダイアン・アーバス、アンセル・アダムス、マン・レイなどの希少なヴィンテージ作品を遥かに上回ったことは大きな驚きだった。歴史的にも、オークションでの高額取引の実績は市場ルールを変えるきっかけになっている。果たして今回の落札がNFTブームが反映された特殊例なのか、それとも写真の伝統的市場がさらに流動化する兆候なのか?2022年の展開を注意深くを見守りたい。

高額落札総合ランキングでは、ここ数年の市場の低迷から特に現代アート系の高額落札件数が大きく減少していた。つまり市況が良くないので、高額評価の作品の出品が控えられていたということ。2016年以来、300万ドル越えの高額落札はなかった。2020年の最高額の落札は、現代アート系のリチャード・プリンスを差し置いて、リチャード・アヴェドン「Dovima with Elephants, Evening Dress by Dior, Cirque d’Hiver, Paris, 1955」の約1.99億円だった。(クリスティーズ、“ONE, a global 20th-cantury art auction”、2020年7月10日)
しかし2021年は、好調な現代アート市場の影響により状況が一変した。11月9日にクリスティーズ・ニューヨークで開催された“21st Century Evening Sale”で、久しぶりにシンディー・シャーマンとリチャード・プリンスの作品が300万ドル越えで落札された。特に年後半に現代アート系中心に100万ドル越えの落札が続出した。2020年1位のアヴェドン作品は、2021年では6位でしかない。

総合順位

1.シンディー・シャーマン「Untitled, 1981」
クリスティーズ・ニューヨーク、 “21st Century Evening Sale” 、
2021年11月9日
約3.46億円

Christie’s New York, Cindy Sherman

2.リチャード・プリンス「Untitled (Cowboy), 1997」
クリスティーズ・ニューヨーク、 “21st Century Evening Sale” 、
2021年11月9日
約3.33億円

3.リチャード・プリンス「Untitled (Cowboy), 2000」
クリスティーズ・ニューヨーク、 “21st Century Evening Sale” 、
2021年5月11日
約2.4億円

4.シンディー・シャーマン「Untitled, 1981」
クリスティーズ・ニューヨーク、 “21st Century Evening Sale” 、
2021年11月9日
約2.27億円

5.ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット「Henry Fox Talbot’s Gifts to his Sister: Horatia Gaisford’s Collection of Photographs and Ephemera, 1820-1824, 1844, 1845-1846」
サザビーズ・ニューヨーク、“50 Masterworks to Celebrate 50 Years of Sotheby’s Photographs”、
2021年4月21日
約2.15億円

6.シンディー・シャーマン「Untitled, 1981」
クリスティーズ・ニューヨーク、 “21st Century Evening Sale” 、
2021年11月9日
約1.74億円

7.ゲルハルド・リヒター「Strip, 2012」
クリスティーズ・ロンドン、“20th/21st Century Evening Sale and Post-War and Contemporary Art ”、
2021年10月15日
約1.4億円

8.バーバラ・クルーガー「Untitled (Your Manias Become Science), 1981」
クリスティーズ・ニューヨーク、 “21st Century Evening Sale” 、
2021年11月9日

約1.28億円

9.ジャスティン・アベルサノ「Twin Flames #83. Bahareh & Farzaneh, accompanied by Twin Flames Full Physical Collection (100 prints), 2017-2018」
クリスティーズ・ニューヨーク、“Photographs”、
2021年10月6日
約1.21億円

10.リチャード・アヴェドン「The Beatles, London, August 11, 1967」
クリスティーズ・ロンドン、“20th/21st Century Evening Sale and Post-War and Contemporary Art ”、
2021年10月15日
約1.12億円

◎出品カテゴリー別ランキング

・19/20/21世紀アート写真(Photographs)

William Henly Fox Talbot, Sotheby`s NY, “50 Masterworks to Celebrate 50 Years of Sotheby’s Photographs”

1.ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット 2.15億円

2.ジャスティン・アベルサノ 1.21億円

3.アンセル・アダムス 1.02億円

4.ダイアン・アーバス 6875万円

5.ヘルムート・ニュートン 6703万円

最高額は、4月21日にササビーズ・ニューヨークで開催された、“50 Masterworks to Celebrate 50 Years of Sotheby’s Photographs”に出品されたウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットのサルトプリントの写真とアルバムのセット作品。落札予想価格30-50万ドルが、195万ドル(約2.15億円)で落札(上記掲載画像はその1点)。

・現代アート系

1.シンディー・シャーマン 3.46億円

2.リチャード・プリンス 3.33億円

Richard Prince”Untitled (Cowboy), 1997″, Christie’s NY , “21st Century Evening Sale”

3.リチャード・プリンス 2.4億円

4.シンディー・シャーマン 2.27億円

5.シンディー・シャーマン 1.74億円

現代アート系では、上位20位のなかにシンディー・シャーマンが7点、リチャード・プリンスが5点、ジョン・バルデッサリが2点含まれる。代表作の出品がなかったアンドレアス・グルスキーは1点にとどまっている。

上記のように、いま市場での写真表現の定義は極めて複雑になっている。「ファインアート写真の見方」(玄光社/2021年刊)で詳しく触れているが、これからは「19-20世紀写真」、「21世紀写真」、「現代アート系」へと分かれていくとみている。21世紀になって制作された写真作品は、すべて現代アート系写真だという考えもある。しかし内容的には、19-20世紀写真の延長線上にある「21世紀写真」と「現代アート系」とに分かれるのではないだろうか。
オークションハウスによるカテゴリー分けでは、中期的には19-20世紀写真の貴重で高額作品、21世紀写真のサイズの大きくエディションが少ない高額作品が現代アート・カテゴリーに定着し、その他の「19-20世紀写真」、「21世紀写真」が「Photographs」カテゴリーへ分類されていくと予想している。

(1ドル/110円、1ポンド・152円、1ユーロ・130円)

大転換期のアート作品
いま何が求められているのか?

(C)Terri Weifenbach/ Cloud Physics

2020年代のいま、社会は従来の価値基準の大転換期を迎えているといえるだろう。キーワードを思いつくだけ挙げてみても、幅広い分野に及ぶ。
それらは、気候変動、脱炭素化、SDG’s、コロナの世界的感染、グローバル化の揺れ戻し、所得/地域格差の拡大、民主主義の危機などがある。また経済的には、インフレ懸念、過剰債務問題、ワクチン格差、中国の不動産バブル崩壊、再生エネルギー転換による原油高騰、コロナ禍による在宅勤務、リモートワーク、オンライン会議の一般化、など枚挙いとまがない。今まで内在化していた変化の兆しが、地球温暖化防止の流れ、コロナウイルスの世界的な感染拡大がきっかけで、一気に顕在化してきた感じだ。

このような時にいままでのようなアートは機能するのだろうか?私が最近ずっと抱いている素朴な疑問だ。
社会が長期に渡り安定しているときの方が、人は様々な先入観に影響され、思い込みに囚われやすくなる。変化が少ない時の方が、それらが強化されるからだ。そのような時には、アーティストが一般人の気付かない社会に横たわる問題点を発見して、新しい視点を提示する。人々を客観視させるような行為には意味がある。しかし社会で次々と起こる大きな変動や問題点の噴出の前に、アーティストが紡ぎだす視点の影響力は弱くなるのではないか?いままでのように、アーティストが世の中の何かに心が動かされ、情報を収集したうえで新たな視点を獲得し、それを社会と関わるテーマとして作品で提示するのは極めて難しい状況だともいえる。個人レベルで提示されるテーマやアイデア、コンセプトはあまりにも小さいのだ。いま世の中では、アートがなくても誰もが容易に意識でき、気付くテーマだらけなのだ。このような現実を前に、多くの個人は生き残りに必死で、社会経済的な思い込みに囚われているどころではないのだ。
最近は欧米のアート界でも、NFTなどの新しい仕組みのみが注目され、また市場でもブランドが確立した人の作品に人気が集中するのは、このような状況が反映されているからではないだろうか。

変動や不安定を誰もが当たり前に意識する時代には、自分の外側に広がる、社会的、文化的な事柄への視線を持つ作品ではなく、より本源的な人間の存在に向いた作品が求められているのではないか。人間は空蝉(うつせみ)のような空虚な存在と言われるが、幻想である世界に生きていくしかないことに気付かせてくれる何かだ。私はそれこそがすべてのアーティストが表現を行う究極の動機だと考えている。しかし、それが果たしてアートで、また写真でどのように表現可能なのかと常に思い悩んでいた。例えば悟りの境地と言われる円相などをヴィジュアルで象徴的に表現したような、ややわざとらしいようなものしか思いつかなかった。人間の存在自体を問う表現とはどのようなヴィジュアルなのだろうか。

そのように悩んでいるときに、今回のテリ・ワイフェンバックによる2つの写真展示に関わることになった。そしてそのような作品では、人間は究極的に孤独であると、その存在をリアルな視点で見ているアーティストによる発せられる言葉が重要な役割を果たすかもしれないと気付いた。

小作品による「Until the Wind Blows」については以前に詳しく解説した。ワイフェンバックは、一瞬穏やかなフランス郊外の田園地帯の風景を、良い時も悪い時もある、波乱万丈の人間の人生に重ね合わせている。様々な出来事に過度に喜んだり悲しんだりする必要はない、いまという瞬間を生きるのが重要だと示唆している。自然が撮影対象だがアーティストの人生を達観したリアリストの視点が文章から伝わってくる。ここでは彼女の言葉がヴィジュアルの理解や感じ方に大きな影響を与えている。

(C)Terri Weifenbach/ Cloud Physics

そして「Cloud Physics」では、SDG’sで謳っている持続可能な開発目標のひとつの「気候変動に具体的な対策を」が作品テーマと重なっている。「Until the Wind Blows」で表現されているのは、気候が大変動する前の嵐の前の静けさのシーンとも解釈できる。ここで「Until the Wind Blows」が提示する、アーティストの人間存在に対する冷徹な視線が、「Cloud Physics」の外部の社会的なテーマとつながるのだ。たぶん「Cloud Physics」だけの提示では、見る側が誤解する可能性があっただろう。彼女がこのテーマを長年追及している事実を知らない人は、今の世の中にある流行りの大きなテーマを取り上げたと理解するのではないか。それだと作品は見る側に感嘆は呼び起こすが、大きな感動はもたらさないのだ。彼女は本展で言葉を駆使して見る側に重層的にメッセージを伝えようとしている。本人が意識的に二つの作品を同時に提示しているかは、ぜひ今度聞いてみたいところだが、どちらにしても、この組み合わせからは現在においてのファインアート作品の新たな提示の可能性が感じられる。

(C)Terri Weifenbach/ Until the wind blows

ワイフェンバック作品には見る側の感情のフックに引っかかる様々な仕掛けが、ヴィジュアルと言葉でちりばめられている。どこで共感するかは、見る側のもつ経験と情報量で左右される。そして、それぞれが反応する所で立ち止まり、それらと能動的に対峙することになる。そして、彼女の深遠な写真世界に引き込まれていくのだ。彼女のフォトブックや写真作品のコレクションする人は、それらが提示する彼女の世界観に賛同していることの意志表明を行っているのだ。
「写真作品に触れることで、心動かされて、また世の中の見方が本当に変わることがあるのですね。」これはある女性の来廊者の感想だ。彼女は熱心に掲示されている彼女のメッセージを読み、時間をかけて作品を鑑賞し、最終的に
「Until the Wind Blows」 シリーズの作品を購入し写真集を予約してくれた。

(C)Terri Weifenbach/ Until the wind blows

「ファインアート写真の見方」(玄光社、2021年刊)でも指摘したが、写真作品に対して能動的に接して、アーティストのメッセージを読み解こうという意思を持った新しい世代の人が増加している。そのような人たちが、この時代で求めているのが、まさに今回のワイフェンバック作品のような、複数のレイヤーを持つ作品ではないだろうか。ややわかり難い、小難しい解説となったが、今回の気付きはもう少し深く掘り下げてみたい。もう少し分かりやすい解説を試みたいと考えている。これから「大転換期のアート作品”のパート2に展開していきたい。

2021年秋/ロンドン・パリ
アート写真オークションレビュー

例年は11月に開催されるフォトフェア「Paris Photo」。2020年はコロナウイルスの感染拡大の影響で延期になった。2021年のフェアは通常通り11月11日から14日にかけて無事に開催された。しかし大手業者によるパリ/ロンドンの定例アート写真オークションは、今年も開催時期を集中することはできず、11月中に分散して行われた。
クリスティーズは11月9日にパリで“Photographies”、ササビーズは11月16日にロンドンで“Photographs”(オンライン)、フィリップスは11月23日にロンドンで “Photographs”を 開催した。

欧州のオ―クションは開催地の通貨が違うので円貨換算して昨年同期と単純比較している。大手3社の合計売上は、2019年が約7.64億円、2020年は7.87億円だったが、2021年は7.15億円と微減だった。2021年に欧州通貨に対して円安が進んだことを考慮すると、市場規模は若干縮小したといえるだろう。落札率は2019年の約75.6%、2020年約70%に対して、2021年は約80.5%と改善した。特にフィリップス・ロンドンの約93.1%という高い数字が全体の数字を押し上げた。米国市場では今秋のニューヨーク定例オークションの売り上げが大きく回復した。それに比べて、英国/欧州市場の回復ペースはまだ緩やかのようだ。 

Phillips London “Photographs”, Irving Penn, “Milkman (A), New York, 1951”

今シーズンで注目されたのは、フィリップス・ロンドンに“ULTIMATE IRVING PENN”と題されて出品されたアーヴィング・ペンのSmall Tradesシリーズの貴重なプラチナ・パラディウム・プリント10点だった。これは1950~51年に撮影され、ペンがプラチナ・パラディウム・プロセスを完成させた1967年に自らが制作に携わってプリントされた作品。ペンは、彼の特徴的なグレーの背景の前に、作業道具を持ち、仕事着でたたずむ様々な職種の人々をヴォーグ誌用に撮影。これらの作品は時代性が反映された一種のファッション写真として制作されたのだ。彼は、世紀の変わり目にパリの職人を撮影したアジェ、そして“American Photographs”のウォーカー・エバンスに触発されてこのプロジェクトに取り組んだという。当初は市場で過小評価されていたが、2009年にJ・ポール・ゲティ美術館で開催された“The Small Trades”展以降に再評価が進み相場は大きく上昇。同展に際して刊行されたフォトブックも完売、いまではレアブック扱いになり、古書市場で値上がりして取引されている。
今回の出品作の特徴は、シートサイズが約57.5 x 46 cmと大きめ、エディション数は少なめで、他作品は世界の主要美術館がコレクションしている貴重作品であること。オークションハウスによると、10年以上にわたって同じプライベート・コレクションに所蔵されており、オークション出品は今回が初めてとのこと。

今回の落札予想価格は、作品により5万~7万ポンド(約760~1064万円)だった。結果は全作が落札、10点のうち7点が落札予想価格の上限を超えた。最高額は、“Milkman (A), New York,1951”で、なんと落札予想価格上限の5万ポンドの約3倍の15.12万ポンド(約2298万円)で落札。“Barber, New York,1951”も、13.86万ポンド(約2106万円)で落札されている。

今回の3つのオークションの最高額は、これもフィリップス・ロンドンに出品されたヘルムート・ニュートンの大判作品“Charlotte Rampling at the Hotel Nord-Pinus, Arles, France 1973”だった。イメージサイズは 161.5 x 111.9 cm、AP 1/2、落札予想価格は25万~35万ポンドのところ、44.1万ポンド(約6703万円)で落札された。ちなみに同作は、2017年10月3日にクリスティーズ・ロンドンで開催された“Christie’s, London, Masterpieces of Design & Photography”で落札予想価格は20万~30万ポンドのところ、33.275万ポンドで落札された作品。手数料などの諸経費などを勘案すると所有期間4年間の収支はだいたいとんとんだろう。

Phillips London “Photographs”, Helmut Newton, “Charlotte Rampling at the Hotel Nord-Pinus, Arles, France, 1973”

ニュートンに続いたのは、クリスティーズ・パリに出品された、2019年に亡くなったピーター・リンドバークの大判ファッション写真の“Mathilde on the Eiffel Tower (Hommage a Marc Riboud), Paris, 1989”だった。210 x 168 cmサイズのデジタル・プリント作品でエディション1/1という1点ものの貴重作。落札予想価格上限の8万ユーロの約2倍以上の20万ユーロ(約2600万円)で落札されている。

Christie’s Paris, “Photographies”, Peter Lindberg, “Mathilde on the Eiffel Tower (Hommage a Marc Riboud), Paris, 1989”

リンドバークに続いたのが、上記のフィリップスで落札されたアーヴィング・ペンの“Milkman (A), New York,1951”の15.12万ポンド、そして“Barber, New York,1951”の13.86万ポンドとなる。
高額落札が期待されたのは、ササビーズ・ロンドン(オンライン)に出品された、マン・レイの“Erotique Voilee, 1933”。落札予想価格18万~26万ポンド(約2736万~3952万円)だったが不落札だった。

パリ/ロンドンの定例アート写真オークションでは、高額落札上位にニュートン、リンドバーク、ペンなどの20世紀のファッション写真が並んだ。特にニュートン、リンドバークなのアイコニックな大判作品は、現代アート系作品だと認識されているようだ。見方を変えると、これらの有名ファッション写真家の大判作品は、アート写真市場だけ見ていると高額だが、現代アート市場の相場レベルからみるとリーズナブルだと解釈可能なのだと思う。ちなみに11月のニューヨーク現代アートオークションでは、シンディー・シャーマンの“Untitled, 1981”やリチャード・プリンスの“Untitled (Cowboy), 1997”などの写真作品が300万ドル(約3.36億円)越えで落札されているのだ。たぶん今後も、これらの20世紀ファッション写真の大判貴重作品への需要は変わらないのではないだろうか。

(1ポンド・152円、1ユーロ・130円、1ドル・112円で換算)

テリ・ワイフェンバック最新作
ブルゴーニュの静謐な風景
「Until the Wind Blows」

(C) Terri Weifenbach

テリ・ワイフェンバックは長年にわたりに米国ワシントンD.C.に居を構えていた。その自宅周りにある、日常の何気ない自然風景から数々の名作が誕生している。それらは、ピンボケ画面の中にシャープにピントがあった部分が存在する、まるで夢の中にいるような、瞑想感が漂う光り輝く作品。彼女はもともとは抽象的な絵画を描いていた。それを写真で表現する可能性の探求中に生まれた作品スタイルなのだ。
現在、ブリッツで開催中の新作「Cloud Physics」。同展に寄せたエッセー「Ephemerality(はかなさ)」で書かれているように、近年彼女は拠点をフランスのパリに移している。 作品制作で試行錯誤を続ける中で、パリへの移住がきっかけとなり作品が完成した経緯が同エッセーには書かれている。

(C)Terri Weifenbach

ブリッツの展示では、iPhoneにより撮影された小サイズの美しい風景作品16点も紹介されている。本作は2021年に撮影された最新作「Until the Wind Blows」、和訳すると「風が吹くまで」のような意味になる。実は彼女とパートナーは、今年にフランス郊外のブルゴーニュ地方にある古いファームハウスを手に入れたという。外国人の不動産取得には煩雑な審査が必要で、約1年くらい手続き時間がかかったそうだ。本作は、彼女がたびたび訪れたブルゴーニュ地方での散策中に撮影された作品群となる。

(C) Terri Weifenbach

彼女は同作に以下の様なメッセージを寄せている。

「Until the Wind Blows」
この写真はとても穏やかです。
ところがしばらくして突風が吹いて木が折れたこともありました。
穏やかであること、そしてその穏やかさは永遠ではないのです。
私たちの人生のように…  地球上のすべての人にとっても…
風が吹くことがあります。また吹くことを知っています。
私たちの快適さは当てにならないのです。
テリ・ワイフェンバック

(C) Terri Weifenbach

彼女は一瞬穏やかなフランス郊外の田園地帯の風景を、波乱万丈の人間の人生に重ね合わせているのだ。「Cloud Physics」との関連では、気候変動前の嵐の前の静けさのようなシーンを意識的に提示しているとも解釈可能だろう。近年、フランスでも異常気象による豪雨により洪水が各地で発生している。 提示された作品タイトルにより、何気ない自然風景のシーンが全く違う印象を持つようになる。アーティストが世の中とどのように対峙しているかが、作品に的確に反映されている。まるでファインアート写真の教科書的な構成の作品に仕上がっている。小さなスマホで撮影されているので、彼女の通常の作品と比べると画質が劣るのは仕方ないだろう。しかし、小さな作品でも彼女のアーティストとして世界を見つめる視点は変わらないのだ。
本作は、スマホ作品の市場の可能性を探求する意味で実験的に制作されている。
各作品、すべて額とブックマット付きで、限定2点のみの販売となる。価格も彼女と相談して極めてリーズナブルにしている。もちろん裏面に彼女のサインが入っている。 フランスに拠点を移したワイフェンバックが、パリやブルゴーニュを舞台にどのような作品を生み出すか非常に楽しみだ。
本展では、「Cloud Physics」だけでなく、ぜひ「Until the Wind Blows」にも注目して欲しい。

(C) Terri Weifenbach

なお「ファインアート写真の見方」(玄光社/2021年刊)には、テリ・ワイフェンバック論を収録している。彼女の現在までのキャリアを本格的に振り返り、その作家性の秘密を探求している。興味ある人はぜひご一読を。

(開催情報)
「Cloud Physics」/「Until the Wind Blows」
テリ・ワイフェンバック写真展

ブリッツ・ギャラリー
東京都目黒区下目黒6-20-29  
JR目黒駅からバス、目黒消防署下車徒歩3分 /
東急東横線学芸大学下車徒歩15分

2021年 11月10日(水)~2022年1月30日(日)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜日 / 入場無料

ブリッツの次回展
テリ・ワイフェンバック写真展 「Cloud Physics」を開催!

ブリッツの次回展は、米国人写真家テリ・ワイフェンバック(Terri Weifenbach)の写真展「Cloud Physics」となる。会期は11月10日~1月30日まで。本展は約1年半ぶりの来廊予約なしでの開催となる。

ⓒ Terri Weifenbach 禁無断転載

タイトル「Cloud Physics」は気象学・気候学と密接な関係があり、気候変動の研究と切り離すことができない大気物理学のこと。
ワイフェンバック作品は、撮影場所や時期が違っても、一貫して自然風景や植物が主要な撮影対象。彼女はそれらに、自然を愛し崇拝する感覚を持って接している。私たちが普段は見過ごしてしまうような何気ないシーンが、彼女の手にかかると特別なヴィジュアル世界へと高められる。忙しく生きる現代人にとって、身の回の自然や動植物は完全に無意識化した存在だろう。彼女の作品は、人間が自然やさらに大きい宇宙の中で生かされてい事実に気付かせてくれる。

本作でワイフェンバックは自らの自然をテーマにした作品スタイルを、大気の中で起こる様々な気象現象と関連付けて探求している。彼女は、雲と植物・生物との複雑な関係を表現するために、世界のさまざまな場所で、あらゆる季節と時間帯に撮影を敢行。その後、何千枚もの写真と、ウォレス・スティーブンスの詩を参考にした編集作業が行われる。最終的に約7年の歳月をかけて、2020-21年の都市のロックダウン中に作品は完成している。
彼女は「パンデミックが起こり、自然は我々よりも強いということが明らかになりました」とコメントしている。

本作では、天候と科学をキーワードに、地球上の雲と生物などとの複雑な関係性を、ヴィジュアルの形態や質感の探求を通して表現。フォトブック巻末には全作品の、撮影場所、撮影日、降水量、気温、湿度、風速、海面気圧の詳細なデータが記載されている。
彼女はフォトブック刊行に寄せて「私が言葉ではなく、写真で表現したいのは、気候変動によって失われるものは美しさだということです」と記している。本作では、いま世界規模で起きている様々な気候変動問題が意識されているのだ。地球温暖化による環境破壊の最前線を撮影する写真家は多くいるが、彼女はあえて美しい理想化された自然を意識的に切り取って作品化している。私たちは彼女のヴィジュアルを見るに、こんな美しい地球の風景や、精一杯生きている鳥や植物たちを大切にしないといけないと、心で直感的に理解できるのではないか。

ⓒ Terri Weifenbach 禁無断転載

本作の非常に複雑な作品制作の過程を、彼女は「Ephemerality(はかなさ)」というエッセーで語っている。本文はギャラリー内で掲示する予定だ。制作アイデアがどのように生まれ、それが作品として展開し、完成するかを丁寧にまた詩的に記している。ファンは必読だろう。

本展では、フォトブック「Cloud Physics」収録作から、デジタル・アーカイヴァル・プリント作品による約23点が展示される。
ギャラリーの展示レイアウトも彼女がディレクションしている。また同時に、iPhoneにより撮影された小サイズの新作約16点も紹介する。フランス郊外のブルゴーニュ地方で撮影された美しい風景のスナップ作品となる。

なお同名のフォトブックは、フランスAtelier EXBと米国The Ice Plantから刊行。テキストでは、写真史家のリュス・ルバール (Luce Lebart)が、ワイフェンバック作品をビジュアル・アートと環境科学の歴史的文脈の中で検証している。

本展会場ではフォトブック「Cloud Physics」の販売を予定。重いフォトブックはどうしても包装が過多になる。ブリッツでは環境を意識した本作品のテーマ趣旨を尊重して、リサイクルコットン製のエコバックに入れて販売する予定。(一部の洋書専門店でもエコバック入りで販売予定)

プレスリリース

プレス用プリント

・展示予定作品の画像の一部は、当ギャラリーホームページに掲載予定

(開催情報)

「Cloud Physics」テリ・ワイフェンバック写真展

ブリッツ・ギャラリー
東京都目黒区下目黒6-20-29
JR目黒駅からバス、目黒消防署下車徒歩3分 /
東急東横線学芸大学下車徒歩15分

会期:2021年 11月10日(水)~2022年1月30日(日)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 月・火曜日 / 入場無料

2021年秋ニューヨーク写真オークションレヴュー
写真NFT作品の高額落札で市場が騒然

2021年秋の大手業者によるニューヨーク定例アート写真オークション、
今回は9月下旬から10月上旬にかけて、複数委託者、単独コレクションからによる合計7件が開催された。
サザビーズは、9月29日に現代アート系作品中心のプライベート・オークションから“A Life Among Artists: Contemporary Photographs from an esteemed private collection”、10月5日に“Classic Photographs”と、“Contemporary Photographs”を開催。
クリスティーズは、10月6日に複数委託者による“Photographs”、メトロポリタン美術館コレクションからの単独セール“Photography of the Civil War: Property from The Metropolitan Museum of Art”を開催。
フィリップスは、10月7日にプライベート・コレクションからの“Reframing Beauty: A private Seattle collection”、複数委託者による“Photographs”を開催している。
昨年の春以来、オークションハウスはコロナウイルスの影響により、開催時期の変更、オンライン開催などの対応を行ってきた。今秋からほぼ通常通りの開催モードに戻った印象だ。

結果は、3社合計で922点が出品され、654点が落札。不落札率は約29.1%だった。総売り上げは、約1484万ドル(約16.32億円)で、コロナ禍で相場環境が状況が厳しかった2020年秋の約765万ドル(約約8.41億円)、2021年春約969万ドル(約10.65億円)から大きく改善。ほぼ約2020年春の約1368万ドル(約15億円)、2019年秋の約1381万ドル(約15.2億円)の売り上げレベルを回復している。
落札作品1点の平均金額は約22,692ドルと、2021年春の23,774ドルと同じレベルにとどまった。2021年秋の約16,000ドル。2020年春の約17,000ドルよりは改善しているものの、 2019年秋の26,800ドル、2019年春の約38,000ドルと比べるといまだに低い水準だ。高額セクターの動きにまだ活気がないとともに、中価格帯セクターも全般的に上値を積極的に追っていくような力強さは感じられなかった。
これで2021年のニューヨークの大手業者の総売り上げは、約2454万ドル(約26.9億円)となった。2020年の約2139万ドル(約23.47億円)より微増している。しかし、コロナ禍前だった2019年の約3528万ドルには及ばない。

NY 大手オークション会社 春/秋 シーズンの売上 推移

今シーズンの写真作品の最高額は、クリスティーズに出品されたジャスティン・アベルサノ(Justin Aversano/1992-)の、“Twin Flames”シリーズのポートフォリオ・セット。本作は主要オークションハウスが写真オークションでNFT(Non-Fungible Token)写真作品を出品した最初の事例となった。出品されたのは、アベルサノの作品集のカヴァー作品“Twin Flames #83. Bahareh & Farzaneh”に対するNFTと、100枚の同シリーズの物理的なプリント作品が含まれる。落札予想価格10万~15万ドルが、予想をはるかに上回る111万ドル(約1.22億円)で落札された。写真オークションで初めて落札されたNFTであり、写真NFTの世界記録となる。またクリスティーズの2021年の最高額の写真作品となった。

Christie’s NY, Justin Aversano, “Twin Flames #83. Bahareh & Farzaneh”

2位は、同じくクリスティーズに出品されたアンセル・アダムスの名作“Moonrise, Hernandez, New Mexico, 1941”。60年代後半にプリントされた103.8 x 150.4 cmサイズの超大判作品。このサイズは15~20作品位しか存在しないと言われている。落札予想価格50万~70万ドルが、予想上限を超える93万ドル(約1.02億円)で落札された。本作は1996年4月のササビーズ・ニューヨークで取引された作品。当時の落札予想価格は3万~5万ドルだった。

Christie’s NY, Ansel Adams, “Moonrise, Hernandez, New Mexico, 1941”

3位もクリスティーズのダイアン・アーバスの代表作“Child with a toy hand grenade in Central Park, N.Y.C., 1962”。本作は極めて貴重なダイアン・アーバス本人によるプリントされた作品。落札予想価格50万~70万ドルが、予想予想価格の範囲内の62.5万ドル(約6875万円)で落札。

Christie’s NY, Diane Arbus “Child with a toy hand grenade in Central Park, N.Y.C., 1962”

4位はササビーズに出品されたマン・レイのソラリゼーション作品“Calla Lilies, 1931”。落札予想価格30万~50万ドルが35.2万ドル(約3872万円)で落札されている。同作は、2002年10月のクリスティーズ・ニューヨークで18.55万ドルで落札された作品。約19年の利回りは各種手数料などのコストを考慮しなくて1年複利で単純計算すると約3.41%となる。

Christie’s NY, Justin Aversano, “Twin Flames”

今秋、一番話題なったのは、やはりクリスティーズに出品されたジャスティン・アベルサノによる、“Twin Flames”シリーズの写真NFT作品。落札価格が、ダイアン・アーバス、アンセル・アダムス、マン・レイなどの希少なヴィンテージ作品を遥かに上回ったことは大きな驚きだった。歴史をみても、オークションでの高額での取引実績は市場ルールを変えるきっかけになっている。
果たして今回の落札がNFTブームが反映された特殊例なのか、それとも写真の伝統的市場がさらに流動化する兆候なのか?この判断は極めて難しいだろう。実際、今後の展開を注意深くを見守りたいという、写真関係者の意見が多いようだった。

(1ドル/110円で換算)

ブリッツ関連の最新情報!
六本松 蔦屋書店で
鋤田正義の写真展示など

・六本松 蔦屋書店で鋤田正義写真作品を展示
写真集「SUKITA ETERNITY」刊行を記念する写真展示が、銀座 蔦屋書店に続き、鋤田の地元福岡の六本松 蔦屋書店で開催される。デヴィッド・ボウイ、T-REX、YMO、忌野清志郎など、新刊写真集に収録されるミュージシャンのポートレート作品を中心に約18点をアートスペースにて展示し、受注販売する。飾りやすいお買い得価格の小作品も含まれる。

写真集特装版に付いてくる3点のプリント作品の現物も展示される。九州在住のお客様は現物を見て購入予約ができる貴重な機会だ。プリントの1枚は、カラー作品のデヴィッド・ボウイ“Dawn of Hope”。2018年春に鋤田の生まれ故郷の直方谷尾美術館で開催された、鋤田正義写真展「ただいま。」で、会場エントランスに同作大判作品が展示されていた。地元の人にはなじむ深い作品が購入できるチャンスとなる。

直方での展覧会エントランス 2018年(C)SUKITA


また緊急事態宣言解除を受けて、10月23日(土)に限定数のお客様を入れてのトークイベントも開催する。トークイベントに参加できないお客様へ、サイン本のみご購入の予約も受け付ける予定。鋤田正義のサイン本は貴重なので、福岡のファンはこのチャンスをお見逃しなく!(サイン本の予約は10月23日(土)イベント開催前まで受け付け)

期間 2021年10月19日(火)~2021年11月3日(水)
場所 六本松 蔦屋書店アートスペース
展示会詳細
イベント詳細

・鋤田正義写真展の最新情報
ブリッツでは、鋤田正義の写真展「SUKITA Rare and Unseen」を10月11日まで開催中。東京の緊急事態宣言の解除を受けて、最終日の11日は午後1時~6時まで、予約不要で営業を行う予定。それ以前の日は、面倒をかけて申し訳ないが、引き続き予約制で営業を行う。

今週からから鋤田正義の新作の追加展示を行っている。鋤田が最近に取り組んでいるテーマが、写真表現での時間の可視化だ。写真集「SUKITA ETERNITY」の最初の収録写真が「母 1957年」。盆踊りの浴衣をまとい、笠をかぶった母親のポートレート。最後に収録されている作品が「姪 2018年」。親戚の姪が母親を撮影したのと同じ場所で、同様の格好で、カラーで撮影されている。2枚の写真はともに、笠をかぶっていることから顔はあごのラインしか見えない。しかし、時代は約60年離れているものの、二人のあごのラインはまさに瓜二つなのだ。
鋤田は2枚の作品を通して、時代経過の可視化に挑戦している。カメラはフィルムからデジタルへ移行し、ほとんどの事象は変化したものの、それとは一線を画して受け継がれていく血の流れの存在をも提示している。

今回展示する新作は彼が長年にわたり撮影しているデヴィッド・ボウイを被写体に時間の可視化に挑戦している。ボウイの2枚のポートレートが組み合わされて、1枚のシートにプリントされている。
サイズはA3ノビ、デジタル・アーカイヴァル・プリント、エディション、販売価格は未定だ。来場者の反応を聞きたいという鋤田の希望で今回のサンプル展示が急遽実現した。

(C)SUKITA

1973年のジギー・スターダスト時代、1989年のティン・マシーン時代の作品で、ともにニューヨークで撮影されている。2枚の構図、ライティング、トリミングはほとんど同じに仕上げられている。まるで同種類の被写体の集積や比較により違いを浮かび上がらせるタイポロジ―的作品なのだ。本作で表現されているのは、ボウイの顔に刻み込まれた、時間の経過、人間の人生、そして背景にある時代性の変化なのだ。

本作制作のきっかけは、複数写真家が撮影したボウイのポートレートをコレクションした写真集「David Bowie : Icon」のフランス版(Flammarion、2020年刊)。表と裏カバーには、ともに鋤田によるボウイのポートレートが採用されている。

鋤田の膨大なアーカイブの中から、本テーマに合致したする2枚の写真の組み合わせが新たに発見されることを期待したい!

・もう一つビッグニュースがある。
今回の写真展のアピール・ポイントは、タイトルの「Rare and Unseen」で象徴されているように、貴重な未発表のヴィンテージ作品の展示となる。キャリアを回顧する写真集刊行に際して、膨大な作品アーカイブスの本格的な調査が行われ数多くの未発表作が発見された。本展ではそれらのうち7点が展示されている。当初は貴重な鋤田本人の手焼きの1点もののヴィンテージ作品ということで非売品扱いだった。しかし複数の熱心なコレククターのお客様からの要望があり、今週から販売が開始された。
作品の撮影年は1973年~1992年、1992年刊行の写真集「デヴィッド・ボウイ ki “氣”」の準備過程で本人が制作したと思われる。やや専門的になるが、厳密にはファインアート写真市場の成立以前の、だいたい80年代くらいまでの写真作品で、撮影して5年以内にプリントされた写真がヴィンテージ・プリントと呼ばれている。今回の展示作品は、撮影後5年以降にプリントされたのでヴィンテージ作品と呼んでいる。販売価格もそれを考慮して付けている。裏面にサインはあるが、エディションはない。しかしすべて鋤田様自身が暗室でのプリントを行っており、女性用ストッキングなどを利用してイメージに紗がかかる効果を引き出している。ネガは残っていると思われるが、プリント自体は手作業での個別制作なので1点ものになる。おかげさまで早くも多くのお客様からお問い合わせをもらっている。古い作品だが保存状態は極めて良好だ。しかし興味ある人には額から作品を外して現物を確認可能としている。

希望者は来場予約の段階で現物確認したい旨をコメント欄に書いて欲しい。

見どころ満載の鋤田正義展も残すところ10日。どうお見逃しなく!
この度は予約制によりたいへんご不便をおかけしました。ご来廊いただいた皆様、ありがとうございました。

ブリッツギャラリー今秋の予定
次回はテリ・ワイフェンバック
「Cloud Physics」展

ブリッツでは、鋤田正義の写真展「SUKITA Rare and Unseen」を完全予約制で10月11日まで開催中。銀座蔦屋書店での関連イベントが終了したことから、同店で人気の高かった“Kiyoshiro Imawano, In Memphis, 1992”や、デヴィッド・ボウイの8X10″サイズの3点セットなどが今週からブリッツで追加展示されている。

会場では、鋤田正義のオリジナル・プリントや、今までに刊行された写真集の貴重なサイン本が限定販売されている。「SUKITA ETERNITY」の3種類ある特装版の付属作品の現物も展示している。なお、ブリッツで販売する特装版は3種類とも持ち帰り用の限定トートバックが付いてくる。完全予約制なので、各1時間に限定2名の入場となる。来場客が密になることなくゆっくりと安全な環境で作品と対峙できる。コレクション希望者への個別相談にも対応している。今週末から始まるシルバーウイークの休廊は9月20日、21日。祝日の9月23日もオープンする。週末は予約が取り難い状況だが、平日や25日以降ならまだ余裕がある。
初めてブリッツへの来廊を考えている人は、私どもはあくまでも写真作品や写真集などを展示販売するコマーシャル・ギャラリーであることを理解してから予約して欲しい。本展は作品の展示数も34点程度、鋤田正義の作品を数多く紹介するイベント的な大規模写真展ではない点を予めご理解ください。

(C)Terri Weifenbach

ブリッツの次回展は、テリ・ワイフェンバックの新作展「Cloud Physics」となる。本作は、2015年に授与されたグッゲンハイム奨学金のプロジェクト。作品完成は、当初の予定よりかなり遅れているが、新型コロナウイルスの感染拡大による自宅待機で、本人は集中して編集作業に取り組めたそうだ。彼女は、自らの自然をテーマにした作品スタイルを、気象と関連付ける可能性を探求。天候と科学をキーワードに、私たちが眼で見えるものと見えないものをテーマにしており、やや難解だが「思考と感受性との関係性の提示を目指している」と本人は語っている。

Terri Weifenbach “Cloud Physics”

本展の展示レイアウトはすべて彼女が考えてくれた。昨年に埼玉の大宮で展示した「Saitama Notes」を彷彿させるような、大小様々なサイズの作品を組み合わせたシークエンスで見せる展示になっている。

写真集はフランスのAtelier EXBと米国のThe Ice Plantから刊行。テキストは写真史家/キュレーターのリュス・ルバール(LUCE LEBART)が担当。2021年11月11日~14日に開催予定のパリ・フォトで初お披露目されると聞いている。世界中で撮影された作品が収録されているが、日本のファンに嬉しいのは奈良、東京、香川などで撮影されたものも含まれることだろう。

(C)Terri Weifenbach

彼女は本書に寄せて「 私が言わずにおきたいのは、しかし暗示しておきたいのは、気候変動によって失われるものは美しさだということです。 」と記している。 本作では、まさに現代社会で世界中の人がいま大きな関心を持つ大きなテーマに挑戦しているのだ。
本書がきっかっけとなって、彼女のアーティストとしての評価がさらに高まるのではないだろうか。写真展に際しては、詳しい「Cloud Physics」の作品分析を行いたいと考えている。現在、展示用の作品はパリで制作中。写真集は10月に日本に到着予定。サイン本も含まれる。
写真展はパリ・フォトでの写真集発表に合わせて11月上旬頃に開始する予定だ。どうか楽しみにしていて欲しい!

ありのままを受け入れる
運を呼ぶ鋤田正義の写真流儀

いまブリッツで好評開催中の写真展「SUKITA Rare and Unseen」。同展の大きな特徴は、被写体のほとんどが男性だということ。代表作のデヴィッド・ボウイ、T-Rex、YMO、イギー・ポップ、 デヴィッド ・シルビアンなどはみんな男性ミュージシャン。女性が被写体の代表作は母親を撮った初期作“Mother,1957”となるのだ。
実際のところ、アート系ファッション/ポートレートの写真展では、女性の俳優、モデル、ミュージシャンなどが被写体になる場合が圧倒的に多い。しかし、これは鋤田が特に男性を専門にしているというわけではない。女性が被写体の写真作品もあり、最近では資生堂のウェブマガジン花椿の「GIRLS ROCK BEGINNINGS」という連載で、矢野顕子、尾崎亜美、小泉今日子などの日本の女性ミュージシャンを撮り下ろしている。

ところが、写真展で男性被写体の作品が大部分を占める事実は、意識して見ないとなかなか気付かない。私はこの分野を専門としているが、最初のうちはそれに全く気付かなかった。その後、これこそが鋤田によるポートレート写真の魅力の秘密なのだと気付いた。この分野の写真のコレクターはいまだに男性が多い。彼らは、自分好みのスタイルや表情の女性が被写体の写真作品を購入する傾向が強い。つまり彼らは被写体自体の魅力で作品をコレクションしているのだ。しかし、例えば鋤田によるデヴィッド・ボウイのポートレート作品は、多くの男性コレクターが購入している。ボウイには男性コレクターを魅了する色香があることは事実だろうが、購入理由は鋤田作品の高い作家性によるところが大きいと思う。つまり、ただボウイの写真が欲しいのなら、安価なスナップ的/ブロマイド的写真は世の中に数多ある。また写真集で十分だろう。
一方で、一般的な鋤田作品は、約40X50cmサイズ、エディション30で約21万円~となる。つまり鋤田作品はコレクターにとって単にボウイの写っている写真ではない。鋤田の作家性が反映されたボウイが被写体のファインアート系ポートレート写真なのだ。もちろん対等のアーティストである鋤田とボウイによるコラボ作品であるという認識もあるだろう。

先日、銀座蔦屋書店で写真集「SUKITA ETERNITY」の刊行記念のオンライントークが開催された。実はトーク終了後の控室で、鋤田から非常に興味深い若かりし時代のエピソードを聞くことができた。

1965年、鋤田は大阪から東京に移り住み、デルタモンドプロダクションに勤務し、ファッション・美容会社向けの広告キャンペーンを手掛けている。当時はちょうど既製服の女性ファッション市場が盛り上がっていた時期だった。女性ファッション誌もこの時期に相次いで生まれている。1969年に「流行通信」、1970年に旧平凡出版の「anan」、1971年に集英社の「non-no」が創刊されている。
それらの女性ファッションの分野では、写真家の立木義浩、操上和美、十文字美信、篠山紀信などが活躍していた。実は、大阪経由で東京に来た鋤田はこの女性ファッション・ブームに乗り遅れることになる。
そこで、彼が眼をつけたのは当時の売れっ子写真家が行わなかった外国人男性モデルのファッション撮影だった。その仕事の一部がメンズファッションブランドのJAZZのキャンペーンだったのだ。当時は主流でなかったメンズ・ファッション。予算は少なかったが、逆に写真家に多くの自由裁量が与えられたという。たぶん女性ファッションの仕事では、写真家はクライアント、編集、デザイナーから撮影上のかなりの制約が課せられたと思う。
鋤田は画家ルネ・マグリットに触発されたシュールレアリスム的作品のポートフォリオを制作する。写真集「SUKITA ETERNITY」も、“Jazz,1968”、“Flower I &II、1968”など5点が収録されている。

“Jazz, 1968” (C)SUKITA

これは、この時代の鋤田作品は厳密には広告だが、現在の定義でいうとファインアートになりうるファッション作品だったことを意味する。言い方を変えると、それらはJAZZの広告写真であるとともに、鋤田正義のパーソナルワークでもあったのだ。その後、このポートフォリオが鋤田の人生に大きな影響を与えることになる。

1972年、憧れの若者文化最前線のロンドンを訪問した時、T-Rexが鋤田のポートフォリオをみて、撮影セッションを承諾する。男性モデルをスタジオで撮影した作品で、彼の高い撮影技術と表現力を見抜いたのだ。そして、スタジオでライブ演奏に没頭するマーク・ボランをとらえた名作”Get it on”が誕生することになる。

“Get it on, 1972” (C)SUKITA

さらに鋤田作品は、シュールリアリズム映画「アンダルシアの犬」が好きだったデヴィッド・ボウイも魅了する。シュールなJAZZやFlowerのポートフォリオがきっかけで、撮影セッションが実現するのだ。

“Backstage By door, Royal Festival Hall, London, 1972” (C)SUKITA

若かりし鋤田は当時主流の女性ファッションを撮ることができなかった。しかし、彼はその状況を嘆くことなく、外国人男性モデルの撮影を丁寧に行って、経験や撮影ノウハウを積み重ねた。その結果に生まれたポートフォリオがきっかけとなり、ボウイを40年以上も撮影することになる。そして1977年には、名作「Heroes」のLPカバー写真が生まれたのだ。もし60年代後半に鋤田が女性ファッションを撮影していたら、現在のような世界的なファインアート系ポートレート写真家の地位はなかっただろう。

才能だけでは成功をつかむことはできない。私たちは致命的失敗という地雷をできるだけ避けながら、運を引き寄せなくてはならない。そのために必要なのは、“いつも、ものごとをありのままに受け入れること”なのだ。実はこれこそが禅で言う「空性」の意味に他ならない。「ファインアート写真の見方」でも書いたが、私は彼のこの生きる姿勢がボウイを魅了したと考えている。鋤田の歩んできたキャリアは、その時その瞬間にある仕事に全霊を注ぐことにより、運が引き寄せられることを私たちに教えてくれる。
今回の「SUKITA Rare and Unseen」展はその軌跡の展示でもある。結果的に、彼に運と成功をもたらした男性被写体の写真の展示が多くなっているのだ。

SUKITA : Rare and Unseen 鋤田 正義 写真展
2021年7月28日(水)~ 10月11日(月)
1:00PM~6:00PM / 月曜火曜休廊 / 完全予約制 / 入場無料
http://blitz-gallery.com/index.html

鋤田正義の豪華本がコロナ禍でも刊行された理由とは
オンライントークイベント8月21日に開催!

7月に世界同時発売された、鋤田正義の集大成となる本格的にキャリアを回顧する豪華写真集「SUKITA ETERNITY」。本来ならば、大規模な写真展、トークイベント、サイン会などを大々的に開催して出版を祝いたいところだ。しかし、コロナウイルスの感染状況は全く改善の兆しはない。ワクチン接種は進んでいるものの、デルタ株の蔓延で新規感染者や重症者が急増中。東京にはいまだに緊急事態宣言が発令中で、再延長される可能性が高いと言われている。アート業界を見回しても、展覧会の途中での中止など、厳しい状況が過去1年以上も続いている。鋤田正義の写真展も、2021年4月に美術館「えき」KYOTOで開催された「時間~TIME 鋤田正義写真展」が、会期途中で強制的に中止になってしまった。

しかし、ないものねだりしてもしょうがない。いまは、今回のような豪華写真集が、この厳しい環境下に刊行された事実を素直に喜びたいと思う。周りには中断や延期になった出版プロジェクトは数多くある。正直のところ、昨年の英国での感染急拡大期には「SUKITA ETERNITY」刊行の一時中断を覚悟したこともあった。コロナ禍の厳しい経済状況でも最終的にこの豪華本が出版に至ったのは、単に運が良かっただけではないだろう。やはり鋤田のポートレート作品は、ボウイなどの被写体とで共同制作された極めて優れたコラボ作品であり、そのブランド価値はコロナ禍でもあまり影響を受けないと考えられたのだと解釈したい。
出版に至る過程で、1点だけ大きな変更が行われている。ACC Art Books版カバーの掲載写真は、当初はT-Rexの「Get it on」の予定だった。それがコロナ禍の昨年秋にボウイ作品「Just for one day」に変更になったのだ。鋤田自身の提言とともに、出版社側にも70年代のスーパースターよりも、ボウイのヴィジュアルの方がブランド価値が高く、より広い世代にアピールするとの考えがあったのだろう。

”SUKITA ETERNITY” ACC Art Books版の幻のT-Rexのカヴァー・ヴァージョン

これは景気悪化時に必ず起こる、中途半端なものは売りにくくなる、という消費のトレンドと同じことだ。コロナ禍でも高級車や高級ブランド品は売れているという報道は聞いたことがあるだろう。またマンションなどの不動産も同じで、景気が悪化すると、付加価値の高い物件には買い手が集まり、価値の低い物件には値もつかないような状況が発生するという。コロナ禍ではこのような流れが加速したのだろう。アート系では、ブランド価値や知名度の低い若手新人の作品、また強いアート性が前面に出た作品ほど苦戦しているのだ。
どちらにしても、本書出版元の英国ACC Art Booksと玄光社の、この環境下における英断には心より感謝したい。

とても重い高価な豪華本なのだが、いったん出版されれば、売り上げに関しては心配無用だと考えていた。日本版は約2000部弱が特装版を含めて刊行されている。売り上げは、日本にはデヴィッド・ボウイ、T-Rex、YMO、イギー・ポップなどの熱狂的なファンがどれくらいいるか?写真家・鋤田正義のファンや応援団、フォトブック・コレクターがどれだけいるか?を想像すれば容易に予想がつくだろう。それらの人数の合計のうちで、購入してくれる熱心なファンやコレクターは、どんなに低く見積もっても、たった2000人ということはないだろう。すぐというわけではないが、完売にはそんなに長い時間がかからないのではないか。本書のような豪華本は完売したら再版されることはほとんどない。個人的には将来のレアフォトブックの候補だと考えている。

”SUKITA ETERNITY” プリント付き特装版 玄光社刊

特にプリント付きの特装版は、写真集というよりもファインアート写真の作品だと考えて欲しい。日本では、海外の出版社のような高品質のプリント付き豪華版はほとんど制作されない。今回の特装版の、豪華化粧箱、輸送ケース、などのデザイン、クオリティーなどは非常に高品質。完全に国際標準レベルをクリアしている。日本人の、編集者、デザイナー、職人による妥協のない質の高い仕事を見せてもらったと高く評価したい。
ついでに、ファインアート写真の取り扱いディーラーの視点から、特装版の将来の価値を予想してみよう。まず収録の3作品は、40X50cm、エディション30の通常サイズでは販売されていないイメージである点に注目している。貴重な作品である上に、鋤田作品の国際的な作品相場と比べて極めて割安なのだ。1枚のサイズは8×10インチと小さく、エディション数も多いが、1枚換算で約2.5万円程度で購入可能。写真集、豪華化粧箱、輸送ケースが付いていることを考えると、鋤田正義のオリジナル作品が1枚2万円程度で購入できるのだ。ちなみに、日本版の特装版は国内限定販売となっている。つまり輸出ができない契約になっているからこれだけの低価格が実現したのだ。日本のファインアート写真市場の規模は極めて小さい。鋤田が将来的な市場拡大を願って特別に配慮して低めの価格設定に協力しくれたのだ。初めて写真を買う人は、当然のこととして価格の相場感がない。できるだけ安くすることで、そのような人に買ってほしいとの願いなのだ。
ちなみに、海外のACC Art Booksにも特装版がある。販売方式が違うので単純比較はできないが、同じ8X10″サイズのプリント1枚が付いたエディション50の作品が現地価格で約5.6万円(350ポンド)もする。いや、このくらいの価格が鋤田作品の国際相場として適正なのだと思う。もしかしたらこれでも割安かもしれない。日本版は直接は海外に輸出できない。しかし、いまはグローバル経済の時代だ。遅かれ早かれ、何らかの方法で海外に流れていくと思われる。各国の市場で、同じアーティストの同様の作品に価格差が存在すると、時間経過と共に裁定取引が行われて価格差は次第になくなっていくのだ。完売後には、特装版はかなり短期間にセカンダリー市場でプレミアムが付いて売られるようになると考える。今日の段階では、特装版は3種類ともにまだ在庫があると聞いている。セールス・トークではなく、興味ある人は早く行動を起こした方が良いだろう。

現在、銀座 蔦屋書店では鋤田正義の作品展示を8月25日まで行っている。メインは、写真集表カヴァーの「David Bowie, Just for one day」、またボウイが昨年に亡くなった山本寛斎デザインのテージ衣装「TOKYO POP」を着た「Watch That Man III、1973」、忌野 清志郎を米国のメンフィスで撮影した「Kiyoshiro Imawano – In Memphis、1992」の16X20″サイズ作品3点の展示。飾りやすい小ぶりの作品中心に約15点を展示している。写真集特装版の3点のプリント作品の現物も展示されている。

なお、8月21日(土)14:00~15:30には、鋤田によるオンライントークイベントが開催される。鋤田自らが写真家人生を振り返り、写真集『SUKITA ETERNITY』についての思いを語る予定だ。普段聞くことができない、撮影時の数々の興味深いエピソードや写真の流儀などを聞くことができる貴重な機会となるだろう。写真を趣味とする人、アーティストを目指す写真家・学生、ファインアート写真・コレクションコレクションに興味のある人、などにおすすめのトークイベントだ。
実は本イベントには特典が用意されている。参加券の他に、書籍付参加券として、特別に鋤田正義のサイン入写真集『SUKITA ETERNITY』も用意される。極めて貴重なサイン本が入手できる絶好のチャンスだ。早い者勝ちなので、もし既に予定数に達していたらどうかご容赦いただきたい。

[オンライン・トークイベント開催日時]
会期:2020年8月21日(土) / 時間:14:00~15:30
聞き手 ブリッツ・ギャラリー 福川芳郎
[参加条件]
イベントチケット予約・販売サービス「Peatix」にて、以下のいずれかをご購入いただいたお客様
・イベント参加券 1,500円 (税込)
・サイン入り書籍付きイベント参加券 9,900円 (本7,000円+イベント参加費/送料・税込み)

*サイン本はなくなり次第終了。数に限りがあるのでご了承ください。

■イベントページ
https://store.tsite.jp/ginza/event/art/21493-0958440730.html

■PEATIXお申込みページ
https://peatix.com/event/2456088/view