ブリッツでは2014年に開催した「Hidden Sites」以来の5回目の個展となる。本展は2017年4月9日から静岡県三島のIZU PHOTO MUSEUMで行われている、国内外の美術館での初大規模個展「The May Sun」に合わせての開催となる。同展のパンフレットと入場割引券をブリッツ店頭で配布しているので興味ある人は声をかけて欲しい。(数に限りがあります)
今回の展示は、ワイフェンバックの約20年以上にわたる写真家キャリアを振り返る内容。IZU PHOTO MUSEUMでは、2005年に発表された「The Politics of Flowers」(onestar press刊)と、伊豆に長期滞在して撮り下ろされた最新作「The May Sun」シリーズ、映像やインスタレーション作品が展示されている。こちらのレビューは近日中に紹介する予定だ。
ブリッツの展示では、「In your dreams」(1997年)、「Hunter Green」(2000年)、「Lana」(2002年)、「Hidden Sites」(2005年)、「Some Insects」(2010年)、「Between Maple and Chestnut」(2012年)からの作品セレクションとなっている。
デビュー作の「In your dreams」は、マーティン・パーとジェリー・バジャー著のフォトブック・ガイド「The Photobook:A History volume II」(Phaidon Press、2006)に取り上げられている。同書で著者は”ワイフェンバックは美しい写真を撮影している。多くの写真家は美しさの表現で失敗を犯している。それは彼らが”きれい”や”かわいい”をアートと混同しているからだ。しかし彼女の写真はただ表層的に美しいのではなく、深い洞察力を持って表現されている”としている。そして、毎日の経験を日記的に抽出するアプローチは、撮影対象が全く異なるがナン・ゴールディンと同じだとしている。私はこの文章は彼女の作品を最も的確に評論していると考える。
もう一つの新しい表現は、抽象的な作品が含まれていること。デジタルの方が抽象的なヴィジュアルを作りやすいかどうかは私は専門家でないので判断できないが、明らかに絵画を感じさせる表現が増えている。フィルムだと現像しないと画像がわからないが、デジタルはその場で確認できる。たぶんそのような作成過程の違いが、抽象的なヴィジュアル探求のきっかけになったのだろう。彼女は元々は絵を描くアーティストなので、新たな方向性としてカメラによる絵画制作に挑戦していると思われる。
ワイフェンバックは来年4月に静岡県三島のIZU PHOTO MUSEUMの個展が決定している。伊豆で撮り下ろされた作品群を中心に、2005年のモノクロ作品”The Politics of Flowers”も展示されるという。新作の一部を見せてもらったが、古の日本人が山河で感じた自然の神々しさが表現されているように感じた。そこにも抽象画を感じさせるような作品が含まれていた。同展ではかなり大きなサイズの作品が展示されるという。これもデジタル写真の恩恵といえるだろう。全貌が明らかになるのが非常に楽しみだ。
なお、ブリッツでも4月にテリ・ワイフェンバックの個展開催を予定している。
“As the Crow Flies”展は、アート写真のコレクターはもちろん、写真撮影を趣味とする人にも技術的に興味深い展示だ。ワイフェンバックはフルサイズのデジタル・カメラで、ウィリーは8X10のアナログ・カメラを使用。両者の写真には、絞り解放のカラーと絞り込んだモノクロという明確な違いがある。そしてともにインクジェットで制作された作品なのだ。ワイフェンバックは元々はCプリントのプリントを自身で行っていた。いまでも学校で写真とプリントを教えている。今回のカラーの展示プリントもプリント専門家の彼女により制作されている。
本展の企画は、この長年の友人である同世代の二人の写真家の発案で始まった。2016年の年初、ニューヨークで行われた共通の友人の写真展会場で二人は偶然再開する。ワイフェンバックは、ちょうどワシントンD.C.の自宅裏庭で野鳥、自然風景、季節の移り変わりをテーマにしたカラー作品が完成したところだった。ウィリーも2015年から始めた、8X10大判カメラを使用して樹木を探求したモノクロ作品のシリーズ”Anatomy of Trees”(樹木の解剖学)を撮り終えたばかりだった。
さて二人展に戻るが、写真展タイトルの「As the Crows Flies」も二人で決めている。ワイフェンバックは自宅の庭で数々の飛ぶ回る鳥を撮影している。それを踏まえて感覚的につけたのだろう。ちなみに本作のシリーズ名は「The 20 x 35 Backyard」という。自宅の庭のサイズを表している。「Under the Sun」というタイトルも最後まで候補に残ったことを付け加えておこう。私たちは、忙しい現代生活の中、身の回りにある樹木などの自然や鳥などの動植物の存在を完全に忘れている。二人は本作をきっかけにして、それらに意識的に接してみて欲しいと希望しているのだ。アートに触れることで視点が変わると、当たり前だった環境が突然魅力的に感じるようになるかもしれない。