2023-3-18
ミューラル(Mural)とは、壁画のような巨大サイズのアート作品を意味します。
本展は、写真家リチャード・アヴェドン(1923-2004)の生誕100年を記念して幅35フィート(約1.5メートル)の巨大なモノクロ・ミューラル写真3点を中心に展示するものです。
1969年、アヴェドンはキャリア上の岐路に立たされていました。約5年間の活動休止後、彼は再びポートレートの撮影を開始しました。カメラを手持ちのローライフレックスから、三脚を用いる大判サイズに持ち替えます。ファッション写真のようにファインダー越しに被写体の周りで躍動して撮影するのではなく、固定されたカメラの横に立ち、被写体と正面から向き合うようになります。そして、当時の著名な芸術家、活動家、政治家たちと向き合い、アメリカにおける彼らの文化的影響力の大きさにふさわしい、巨大な写真によるミューラル写真のポートレートを制作しました。
これらの白バックが背景で人物の姿が際立った巨大作品は、当時のアメリカ社会をドキュメントする肖像画です。アンディ・ウォーホルのファクトリーのメンバー、ベトナム戦争に関わった軍人、官僚、政治家などたち、ベトナム戦争に反対するデモ隊など、これらの20世紀後半に活躍した立役者たちが、アメリカ生活の極めて激動的な時代を作り上げてきたのです。
本展では、ミューラル写真とセッションのアウトテイクや同時期に進行していたプロジェクトをまとめて紹介。アヴェドンにとってミューラル写真は、写真芸術の可能性を拡大させ、被写体を包み込むような大画面の中で、鑑賞者と被写体との関係性を根本的に転換させるものでした。彼がグループ・ポートレートの常識を覆し、このジャンルを進化させてきたアプローチを探求します。