クリフォード・コフィン写真展
場所:
伊勢丹美術館(伊勢丹百貨店新宿店新館8F)
作家名:
クリフォード・コフィン
主催者:
日本経済新聞社
後援:
ブリティッシュ・カウンシル、(社)日本広告写真家協会
協力:
ブリティッシュ・ヴォーグ、ナショナル・ポートレイト・ギャラリー・ロンドン
企画:
アプトインターナショナル
開催情報:
00年1月3日〜1月24日  休館日なし
料金:
一般900円、大学・高校生700円、小・中学生500円
図録:
2300円(税込み)
Reviews

Y.F(blitzintl@nifty.com)

クリフォード・コフィン(1913-1972)
コフィンは1913年6月18日米国イリノイ生まれ。その後カリフォルニアのパサデナで成長しました。 ハイスクール卒業後アートに興味があったものの 家族の勧めによりUCLAで経済学を学びました。
彼の写真家になるまでの経歴は現在では考えられない程ユニークです。 ホテルチェーン、MGMで働いた後、石油会社テキサコの仕事でニューヨークに来ました。 そして大都市で暮らす中、写真の経験がないのに ファッション写真家、それもヴォーグで働くことを志すようになります。幸運に恵まれ、ヴォーグ誌のアート・ディレクターであるアレクサンダー・リーバーマン に写真の指導を受け腕を上達させ、1944年にヴォーグ誌に入社しました。戦争で多くの写真家が軍隊に 招聘されたことも大きな理由と思われます。 写真に関してはスタジオで働く傍らジョージ・プラット-ラインスの下で学び続けたそうです。
その後1946年2月から2年間、ヴォーグ・英国版に出向しています。 1948年にはヴォーグ・フランス版に移ります。
戦争で欧州の著名な写真家はほとんど米国に亡命していました。才能のある写真家がいなかったために 当時は米国から英国、フランス・ヴォーグに有能な写真家を派遣することが一般的だったのです。 このシステムは戦前から導入されており、実際ジョン・ローリングスが1937年〜1939年までロンドンに 派遣されています。
欧州時代のコフィンはセシル・ビートンの影響を受けるものの、 ロケーションの多用、撮影演出へのこだわりなど 当時はまだ珍しかった彼独自の手法を数多く実践しました。また当時流行のシュールリアリズム的な手法も 頻繁に引用しています。
1950年にはニューヨーク に戻って、1958年までヴォーグ・米国版、グラマー誌および広告写真で活躍しました。 彼の写真は特に自由裁量が多く与えられていたイギリス、フランス時代の作品群が高い評価を 受けています。

彼はライティングの技術で革新的な手法をもたらしたことでも有名です。これはリング・ライトと 呼ばれる物で、カメラレンズの周りにリング状にタングステン・ライトを設えた物です。 このライティングは撮影する対象物の影をよりなくすことに有用とされました。

彼自身非常にユニークなキャラクターでした。 ファッションもクルーカットのヘアースタイル、ラフで黒ずくめの格好したりと非常に目立っていました。 当時としては珍しく彼自身がホモセクシュアルであることを公表していたそうです。 個人的にメール・ヌードの撮影も行っていました。
押しの強い性格で、作品制作への 徹底したこだわりにより変わり者と見られることもあったようです。 そしてプライベートでも自由奔放な行動と気難しい言動で知られていました。 現在ではゲイで、こだわりが異常な写真家は決して珍しくありません。 しかし当時としては際立って異彩を放っていたようです。コフィンは20年早すぎたファッション写真家で あったのです。

1940年から50年代のクチュール全盛時代に個性あるファッション写真を発表したコフィンですが、 1965年のニューヨークのスタジオ火災でほとんどのオリジナル作品が焼失したと思われていました。 残念なことに彼の個人的なメール・ヌード写真はすべて焼失したそうです。 当時のファッション写真はアート作品とは 認識されていませんでした。それゆえ、作品がないことから長いこと人々はコフィンに注目しませんでした。 彼の敵を作りやすい非常に個性的な性格も影響したのかもしれません。 それが彼の死後の1986年に英国ヴォーグで多くのネガが発見され、ゲイの理解など環境が変化したこともあり 作家の再評価に繋がったのです。
アートとしてのファッション写真再評価の流れに乗り 1997年にはナショナル・ポートレート・ギャラリー・ロンドンで回顧展が開催され話題になりました。
今回の写真展はその回顧展が巡回してきたものでファッション写真63点、ディオール、マティスなどの有名人のポートレート59点、 セルフポートなど約8点の1945年から1955年までのヴォーグ誌で発表された合計130枚で構成されています。 モノクロ写真は当時のヴィンテージものらしくコンディションが若干良くない作品もありますが観賞には まったく問題ありません。

人知れず数十年間もロンドンで眠っていたコフィンのオリジナル作品はこのように時代の価値観が変化したことで 脚光を浴びるようになったのです。 彼がゲイであることが逆にアートとしての作品性を高めるとはコフィン自身夢にも思わなかったでしょう。 世界的にも知名度が高くないコフィンですが、彼の経歴、キャラクター、時代背景そして当時の 人間関係を知れば興味がどんどん涌いてきます。有名作家の写真展でさえ多くの動員が簡単でない現在の日本で玄人好みの 写真展を開催した美術館と主催者に敬意を表したいと思います。

なお写真展図録に掲載しているロビン・ミューア氏の評論を読むと興味が一層増すと思います。 2300円と洋書写真集よりはるかに廉価で、日本語訳付きです。非常に買い得だと思います。


Customer Comments

from Taro 1/11

クリフォード・コフィン写真展観てきました。電車の中・新宿駅・新聞と写真展の広告が多かったのには驚きました。会場内は予想外に人がいました。ファッション写真に興味の無さそうなおじさん・おばさんも多かったようです。 私はクラシックなファッション写真が好きなのですが、まさに私好みの写真が多かったです。コフィンの名前は全く知らなかったので、日本に紹介されていない写真家がまだまだ多いのだと感じました。どんどんそんな人の写真展をやって欲しいです。


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