アーヴィング・ペン全仕事
場所:
東京都写真美術館
作家名:
アーヴィング・ペン
主催者:
東京都歴史文化在団、東京都写真美術館、朝日新聞社
後援:
アメリカ大使館
助成:
国際交流基金
協賛:
SHISEIDO、株式会社東芝東京支店、株式会社ニコン
協力:
サッポロビール、日本航空、東武鉄道、プロラボ・ダック
(This Exhibition has been organized by The Art Institute of Chicago)
開催情報:
99年11月11日〜2000年1月23日
料金:
大人600円、学生480円、小・中・高校生300円
問い合わせ先:
03-3280-0031
図録:
「アーヴィング・ペン全仕事」税込み3,000円、
ワークシート〔アーヴィング・ペン全仕事〕無料
Reviews

Y.F(blitzintl@nifty.com)

アメリカの有名写真家アーヴィング・ペンの50年以上のキャリアの全貌をまとめた写真展です。ペン本人からシカゴ美術館に寄贈された作品中心に130点で構成されています。日本でのペンの大規模な写真展開催は1985年以来です。国際巡回展で日本での開催は、写真美術館のみです。

作品展示は民族誌学的写真、静物写真、肖像写真、ファッション、ヌード、旅行写真、広告の分野から代表作をセレクションした総合的なものです。写真の他にも掲載雑誌、コンタクトプリント、スタジオ日誌、書簡などの写真関連資料の展示もあり、名作が生まれた過程を垣間見る事ができるように工夫されています。 これだけの数のペンの作品を鑑賞できる機会は海外でもあまりありません。 アート写真ファンはもちろん、アート・ファンの方にも是非観賞して頂きたい写真展です。

アーヴィング・ペンは1917年米国ニュージャージー生まれ、今年で82歳です。 1930年代後半フィラデルフィア美術大学でハーパース・バザーのアートディレクターとして有名なアレクセイ・ブロドビッチに学びました。
ハーパース・バザーにイラストが採用され、その原稿料でローライフレックスカメラを購入、写真の撮影を開始しました。その後1940年からサックス・フィフス・アベニューのグラフィック・アーティストとしてブロドビッチと共に働きました。 ペンの本当の興味は絵画とドローイングで、画家を目指し1942年にはメキシコに渡っています。
帰国後の1943年にアレクサンダー・リーバーマンに請われてヴォーグで働くようになります。表紙のデザインのアイデアを提案しますが、当時の有名写真家に相手にされず、リーバーマンの提案でペン自身が撮影するようになりました。偉大な写真家の経歴はこの様に始まりました。リーバーマンはペンのメキシコ滞在時や米国内旅行のコンタクト写真を見ていて、ペンの才能を見抜いていたのです。

その後1947年にトップ・モデルのリサ・フォンサグリーブスと結婚。特に1950年のパリ・コレクションの写真はペンのファッション写真の頂点として高く評価されています。彼は単純な背景と北側からの間接光によるニュートラルな明るさを好みました。彼のファッションそしてポートレートも自然光を強調するために人工光線を使うテクニックを取り入れました。当時とても斬新で、後のファッション写真に影響を与えました。

ペンが受け入れられたのは時代的な背景があります。大戦が終了して、世の中の価値観が変化しました。ファッション誌の読者も裕福な階級の婦人から若い働く女性になってきたのです。しかしファッション写真はいまだヨーロッパ的な戦前の保守的なイメージから脱する事ができていなかったのです。ペンそしてハーパース・バザーのアベドンの作り出すイメージは戦後の新しいアメリカ女性の理想のスタイルが提供されていたのです。
写真美術館の3階で"写真表現の軌跡・第3部・ヨーロッパの写真"が同時開催されています。そこに戦前のセシル・ビートンのファッション写真が何枚か展示されています。是非、ペンのファッション写真と見比べて見てください。

ファッション以外にもペルー、ネパール、モロッコなど世界中を旅行して各地の特徴のある民族の写真を単純な背景の仮設スタジオで撮影しています。民族衣装や部族の特殊な化粧にファッション性を見出した写真はヴォーグ誌でも紹介され、新しいスタイルのファッション写真として高い評価を得ました。

ペンはその後アート志向を強め、ファッションやポートレートと同じアプローチで煙草の吸い殻や、ゴミを巨大なプラチナプリントで制作しています。普段私たち全く関心を示さない何気ない題材に静謐な美と質感を作り出すペンのアプローチは現代美術に通じるものがあります。今回展示はありませんが、有名な"Cigarette No.37 NY 1972"をオークションの下見会で近くから目にしたことがあります。写真集の大きさでは決してわからないそのプリントの美しさに感動して、買えるなら本当に自分で欲しい、と思った鮮明な記憶があります。この写真展では"Cigarette No.50 NY 1972"が展示してあります。

一時期、婦人を亡くして、ペン自身気分が落ち込んでるという話をきいたことがあります。随分周りが心配した時もあったようです。展示解説資料によると高齢にかかわらず現在も元気に活躍しているそうです、たいへん喜ばしいことだと思います。ますますのご活躍を期待します。

◇アーヴィング・ペンのポートレート
写真美術館の3階で"写真表現の軌跡・第3部・ヨーロッパの写真"が同時開催されています。
その中に20世紀初頭のドイツの写真家アウグスト・ザンダーによる、当時の労働者の写真が3枚展示されています。アーヴィング・ペン写真展の帰りにはぜひこちらに立ち寄って2人の同じ題材のポートレート写真を見比べて欲しいと思います。ペンはロンドン、パリ、ニューヨークで職人や労働者をいかにもザンダーに影響を受けたかのようなスタイルで撮影しています。また世界各地を旅して同じスタイルで各地のユニークな衣装を纏った部族も撮っています。 ザンダーとペンの写真の違いはその背景です。ザンダーは労働者が仕事をしている場所で撮影しています。一方、ペンはすべて簡素な背景幕の前で仕事を行っています。ザンダーの意図は当時のモデルの労働者の社会的な存在を示す事であったことは明らかです。しかしペンは背景を簡略することで衣装そのものを際立たせようとしたと思われるのです。ペンにとってその人物の社会的存在はまったく関心ないのです。衣装があって彼らが初めて存在するのです。つまりペンはファッション写真のアプローチで色々な格好をした労働者や民族を撮影したのです。

一方、ペンは欧米の膨大な数の著名人の写真を撮影しています。これらは無名の労働者のポートレートと異なり有名人自身の顔が中心になっています。つまり今回は個人の顔自体に知名度があることからペンは彼らがどんな洋服を着ていてもまったく関心がないのです。ファッションが個人を特徴づけるメディアと理解すれば、有名人の顔自身が既に特徴を持っていて、着るもので個性を出す必要は稀薄であるという事なのでしょうか。そのように解釈すればペンの有名人のポートレート写真も彼の全体の写真の中ではれっきとしたファッション写真になるのです。
アーヴィング・ペンの偉大さはファッション写真を洋服を撮影するメディアから、さらに社会、文化をも解釈できるものにしたことではないでしょうか。

◇ペンのオリジナルプリント
アーヴィング・ペンの作品は題材によりだいたい以下の様に分類されます。 プリントのサイズ、種類がシルバープリント、プラチムプリント、ダイトランスファーかによって異なります。
オークションでの値段の目安は大体以下の通りです。

  • ファッション
    イメージにより$7,000.〜(@105 \735,000.〜)。有名作品は非常に高価。
  • ヌード
    $5,000.〜(@105 \525,000.〜)
  • 有名人のポートレート(ピカソ、フランシス・ベーコン、コレットなど)
    ポートレートは被写体の人気度により価格差があります、 $4,000.〜(@105 \420,000.〜)
    ピカソは$15,000.〜(@105 \1,575,000.〜)
  • 労働者や職人のポートレート
    $7,000.〜(@105 \735,000.〜)
  • ドキュメンタリー・ポートレート(世界中の部族、民族、ヘルス・エンジェルの写真など)
    ヘルス・エンジェルは$10,000.〜(@105 \1,050,000.〜)
    部族のイメージは全般的に高価、有名なペルーの
    "Cuzco Children, Peru, Christmas. 1948" 11 X 10.25 インチ、ヴィンテージ シルバープリント$16,100.〜(@105 \1,690,500.〜)クリスティーズNY、98年10月。
  • スティル・ライフ(静物)
    $7,000.〜(@105 \735,000.〜)

  • ダイトランスファーによるカラープリント、花によって人気度が異なる。 $10,000.〜(@105 \1,050,000.〜)
  • 煙草の吸い殻,ゴミの拡大写真
    "Cigarette No.37 NY 1972" 59.1 X 43.9cm のサイズのプラチナプリントで $10,000.〜(@105 \1,050,000.〜)

Customer Comments

E.M from 杉並 11/15

アーヴィング・ペンの名前は知っていましたが、どんな写真家か知りませんでした。アート・フォト・サイトを読んで興味がわいたので観に行って来ました。確かに戦争前の写真と違うのが私なりに理解できました。現在のファッション写真とも又違う感じがしました。 ファッション写真はどんどん進化していくのですね。


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