モダンアートと写真

01年10月6日から02年2月3日まで上野の森美術館で開催されたMoMA名作展の展示は20世紀前半美術の検証を目指して構成されました。アート写真ファンの方は モダン・フォトグラフィーがこれらモダン・アートの影響を受け成立した事実を念頭において観賞したいものです。

モダン・フォトグラフィーの元祖はアルフレッド・スティーグリッツです。彼はカンディンスキーの絵画と抽象絵画論に影響され、雲と空をモチーフにした “エキヴァレント(等価物)”シリーズを制作したと言われています。
彼が1905〜1917年まで開いていた291ギャラリーでは写真展開催のほか 今回のMoMA展でも展示されているロダン、マティス、ルソー、セザンヌ、ピカソ、ブラック、ブランクーシなどのヨーロッパの後期印象派、 モダン・アートが積極的に紹介されていました。当時のヨーロッパ前衛アートはアメリカの写真家に多大な影響を与えたのです。
ストレート写真の元祖の一人であるポール・ストランドは291ギャラリーで見たピカソのキュービズム絵画に多大な影響を受けたことが知られています。 ポール・アウターブリッジやラルフ・スタイナーもモダンアートのエッセンスを 作品に積極的に取りこんでいます。

サルバトール・ダリの代表作“記憶の固執”が展示されていますが、1930年代のシュールレアリスムの作品はフィリップ・ハルスマン、ハンス・ベルメール、アンドレ・ケルテスハーバート・リストアーウィン・ブルメンフェルド など多くの写真家やファッションなどの商業写真に影響を与えました。 消えゆくパリを記録したアジェの写真はマン・レイが見出し シュールレアリスム雑誌上で初めて紹介されました。
シュールレアリスムの影響は現在活躍している ジョエル・ピーター・ウィトキン、デュアン・マイケルズなどにも 受け継がれています。

その他、アート写真とモダンアートは数々の接点があります。 カルチェ=ブレッソンの写真集“決定的瞬間、1952”にはマティスの絵が、 写真集“ヨーロピアン、1955”にはミロの絵が使用されています。
ルネ・マグリッットは趣味や絵画の研究用などに写真を撮影していました。彼の没後、写真作品のポートフォリオや写真集が発刊されています。

このようにモダン・フォトグラフィーの誕生にはモダンアートが多大な影響を与えているのです。そして20世紀初頭にアメリカで確立されたアート写真の独自性こそが後に一世を風靡するポップ・アートや ニューペインティング誕生のベースになっているのです。MoMA名作展はアート写真ファンも楽しめる、見逃せない展覧会です。


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