Nick Brandt: This Empty World

Thames & Hudson, 2019

Nick Brandt(ニック・ブラント)


ニック・ブラント(1964-)は、英国出身のファインアート写真家。絵画と映画を、当時のSaint Martin's School of Art(ロンドン)で学びました。1992年にカリフォルニアに移り住み、マイケル・ジャクソン、ジュエル、XTCなどの音楽ビデオを手掛けています。1995年、マイケル・ジャクソンの環境をテーマとした"Earth Song"の制作でタンザニアを訪問。この経験がきっかけとなり、彼は東アフリカの自然や動物に魅了されます。その後、映画での自己表現に限界を感じて写真家に転じます。2001年以降は人類により破壊され消えゆく自然世界をテーマに作品制作を開始します。
彼は野生動物を、写真スタジオでの人間のポートレートに近いアプローチで中判カメラを使用して撮影。人間同様に感覚を持った生き物である事実を提示しています。いままでの3部作"On This Earth""A Shadow Falls""Across The Ravaged Land"は、高く評価されています。

新作"This Empty World"は、ブラント初のカラー作品です。彼は、人間の手による急速な開発により自然破壊が拡大し、動物たちが生き残る場所がもはやなくなりつつある状況を提示しています。映画製作のような大規模セットを構築して、人間と動物がともに棲息する複雑なヴィジュアルを作り上げた意欲的な力作です。同名の写真展が、2019228日~427日まで、ロサンゼルスのFahey/Kleinギャラリーで開催されています。
本作のそれぞれのパノラマ作品は、2枚の写真が合成されています。同じカメラ位置から撮影されていますが、時間は約1週間程度離れています。最初に、部分的なセットを作り点灯し、その地に棲みつく動物がカメラのフレーム内に来るのを待ちます。動物が撮れた段階で、カメラは動かさずに完全なセットを構築。それらは、橋、ハイウェイなどの建築現場、ガソリンスタンド、バスの停車場、立ち並ぶ店舗、枯れた林などです。最後に、地域のコミュニティーから多くの出演者をセットに呼んで、2度目の撮影が行われます。最終制作される大判作品は、二つの複雑に計算された要素の集合体です。全体としてみると、人間の自然開発に圧倒されて、もはや動物が生き残る場所がない世界を見事に例示。また自然の驚異がなくなったとき、私たちはどのような世界に住むことになるかを、私たちに問いかけています。

ハードカバー: 127ページ、39.1 x 1.8 x 33.8 cm、約70点の図版を収録しています。

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