ジェフ・ブラウス

BROUWS, Jeff (1945-)

ジェフ・ブラウスは、米国サンフランシスコ出身のアーティスト。ストーリー性のある作品や、タイポロジ―的な複数グループ作など、多数の写真表現を駆使して、歴史的、社会経済観点からのアメリカ文化の様々なシーンを長年にわたり探求しています。
それらは、地方のロードサイドの建築物、フランチャイズ化された大店舗、ショッピングモール、ファーストフードなどのシーン、均質化した住宅地区、都市内部の環境、北東部の脱工業化/ポスト工業化した都市風景、現代および歴史的な鉄道の風景などに及びます。

消費社会研究家の三浦展氏は「ファスト風土化する日本」(洋泉社 新書y、2004年刊)で、世界を均一な消費市場に変えるグローバル化経済の地方都市への影響を指摘しています。大型店の出店規制の解除がきっかけで日本全国の高速道路沿いに大型商業施設の建設ラッシュが起き、その結果、旧市街地のいわゆるシャッター通り化が起こり、地方の持つ固有の伝統と文化が破壊されました。地方の景色がまるでファーストフード店のような均一なものに変質している状況をファスト風土化と命名したのです。この流れは70年代の米国から発生し世界へ広まりました。その後、その発祥国の米国では郊外から都市部も巻き込んで深刻な社会問題が起きているのです。
ブラウスは、約20年間以上に渡り社会のファスト風土化の危うさをテーマに作品制作を継続しています。彼のプロジェクトは、自らが「写真による考古学」と呼ぶ、ロードサイドに残る50~60年代の懐かしいシーンを見つけ出し撮影することから始まりました。
やがて彼は道路周辺に点在する廃墟が生まれた歴史的、文化的背景に興味を持つようになります。長年に渡る撮影と調査の結果、それらはハイウェイ網の整備とともに個人経営の店舗が巨大資本のフランチャイズ企業に席巻され生まれたことを知るのです。
かつてアメリカ人は道の先に新しい可能性があるという移動神話を持っていました。しかし、いまや道の先には画一化した空間しか広がっていない事実を発見するののです。道の果てを見たブラウスの視点はその起点となる都市に向かいます。郊外に均一風景が広がると同時に都市部でも荒廃が進んでいたのです。技術進歩と経済グローバル化に取り残された巨大鉄工所の廃墟、スラム化し治安が悪化したマイノリティー居住区。それらはマスコミで流される豊かなアメリカではなく、まるで空爆されたあとのベイルートのようだったそうです。アメリカの暗部を見たブラウスは、社会における正義を追求するという写真家本来の役割と使命感が強く意識します。
その後、彼はアメリカの夢と希望が挫折した感傷的な風景の提示をテーマに撮影を続けるようになります。一連の作品は「Approaching Nowhere」(2006年、Norton刊)にまとめられます。

初期のタイポロジー的(類型学)な作品は、ベッチャー夫妻のように複数イメージをグリッド状に組み合わせています。ニュー・トポグラフィクス、ニューカラー作家の伝統を引き継ぐ写真家として評価されており、ウォーカー・エバンス、ジョエル・メイヤービッツ、スティーブン・ショアー、ウィリアム・エグルストンとのつながりが指摘されています。
伝統的なアメリカン・シーンをカラーで撮影する中堅作家としてこれからの作品展開が期待されています。

作品は、ホイットニー美術館、クリーブランド美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館などでコレクションされています。


Approaching Nowhere