2016年人気写真集ランキング

ここ数年のアベノミクスによる短期的かつ急激な円安で販売価格が上昇し、洋書は売上高・販売冊数共に減少傾向が続いていました。2016年は英国のEU離脱や米国大統領選挙の不透明さから一時為替が円高に振れましたが、トランプ大統領選出後は、新政権への政策期待から大方の予想に反して再度円安に逆戻り。しかし、年間平均の為替レートは2015年の1ドル121.044円から108.7929円へと円高になりました。結果的に、洋書の売上冊数、売上高ともに改善傾向を示しています。購入者が今の為替レートのレベルに慣れてきた点もあるでしょう。現在のドル高傾向の継続がやや気がかりですが、とりあえず直近の洋書の売り上げの底は2014年で、市場縮小にやっと歯止めがかかったようです。

リーマンショック後に長らく続いていたのは、当たり外れのない歴史的名作・人気本の再版・改訂版への根強い人気。出版社も、売り上げ予想が不明なものよりも、確実性が高いこの種の本の発掘と出版に力を入れています。ちなみに2015年の1位は、カルチェ=ブレッソンの歴史的名作"The Decisive Moment"の復刊本。2016年もこの流れに変化はありませんでした。
2016年の1位は荒木経惟の復活した名作フォトブック「センチメンタルな旅」が獲得。和書がトップになったのはフォトブック人気ランキング史上初めてです。同書のオリジナルは、1971年に私家版で約1000部が刊行されました。フォトブックの代表的ガイドブック"The Book Of 101 Books"(Andrew Roth、2001年刊)、"The Photobook:A History volume 1"(Martin Parr/Gerry Badger、2004年刊)にも収録されているコレクターズアイテムです。荒木と陽子との新婚旅行の全貌が収録されたこの幻のフォトブックは、これまでは長きにわたって新潮社版「センチメンタルな旅・冬の旅」に収められた21点のダイジェストでしか見ることができませんでした。本書はオリジナル版の108点がすべて収録されて限定復刻されたもの。納得の1位獲得と言えるでしょう。

その他の新刊では、ジョエル・マイロウィッツがイタリア人画家ジョルジョ・モランディのオブジェ類をイタリア・ボローニャのアトリエで撮影した"Morandi's Objects"、ジャック=アンリ・ラルティーグのカラー作品を初めて本格的に紹介した"Lartigue: Life in Color"、サラ・ムーンのドイツ・ハンブルグのダイヒトーアホール美術館写真館(House of photography of the Deichtorhallen)で開催された展覧会に際して刊行された"SARAH MOON NOW AND THEN"、ピーター・リンドバークの"A Different Vision on Fashion Photography"、マイケル・デウィックの幻の写真集が未収録作を追加して復刊した"The End: Montauk, N.Y. " (10th Anniversary Expanded Edition)が入っています。

その他、ヴィヴィアン・マイヤー、ティム・ウォーカー、スティーブン・ショアなどの有名フォトブックはランキングの常連。2015年暮れに発売されたウィリアム・エグルストンの"William Eggleston: The Democratic Forest"は10分冊の豪華版写真集。高額本なのでさすがにベストテンには入りませんでしたが、予想以上の売り上げでした。2016年の年末にかけて同書から新たにセレクション・編集された廉価版が刊行されました。2017年には間違いなく売上の上位に登場するでしょう。

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