2023-11-29

  

ゲイリー・ウィノグランド

WINOGRAND, Garry (1928-1984)

ウィノグランドはロバート・フランク、ウィリアム・クラインの影響を受けて1960年代に活躍を開始し、 その後数十年に渡ってアメリカ写真界をリードしたコンテンポラリーフォトグラファーズの中心人物です。
彼は1928年ニューヨーク生まれ、 第二次世界大戦中、空軍で写真を撮影し始めます。その後ニューヨーク市大学とコロンビア大学で絵画を学び、 1951年にアレクセイ・ブロドビッチのニュースクールでフォトジャーナリズムのクラスに参加します。
1953年からフリーの写真家として"ライフ"、"ルック"など多くのグラフ雑誌で活躍しています。この頃の写真はニューヨーク近代美術館で1955年に開催された"ファミリー・オブ・マン"展に2点選出されています。

ウィノグランドは1966年ジョージ・イーストマン・ハウスで開催された"社会的風景に向かって"に ブルース・デビットソン、リー・フリードランダー、ダニー・ライアン、デュアン・マイケルスとともにディレクターのネーサン・ライオンズにより選出され注目されます。 1967年のニューヨーク近代美術館"ニュー・ドキュメンツ"展 にもリー・フリードランダー、ダイアン・アーバスとともに選出されています。
この2つは60年代以降の新しい写真動向を決定付けたことで写真史上重要な写真展です。選ばれた写真家たちは従来の記録の為のドキュメント写真ではなく、ロバート・フランクが提示した パーソナルな視点から身の回りの社会風景を撮影していることが 大きな特徴です。ウィノグランド自身が"現実と写真は全く違う"と語っているように写真を自己表現であるとの視点に立っているのです。 そして70年代以降、35mmカメラを使用して重要な出来事を記録するのではなく、日々の生活の断片を撮影する新しいスタイルのドキュメント写真がアメリカ写真界の主流となって行きます。

ウィノグランドの写真は、影響を受けたロバート・フランクよりも系統だった知的さと分析力により成立しており、彼の知的さによって自身の経験をより複雑、微妙で、解読不能なユーモアにも似た不可思議さを持った写真表現にするのに成功しているとMOMAのジョン・シャーカフスキーは指摘しています。 彼は都市の混乱の中で作品のモチーフとなる人々の態度や存在を発見する鋭い視点を持っていました。

1969年には43枚のイメージからなる動物と人間との関係を批判的に観察した伝説的な写真集"The Animals"を刊行。1973年からテキサス大学で講師を務めています。
1975年には女性解放が一般化した後の社会状況を写真集"Women are beautiful" でスナップショット的手法で捉えています。 1977年には様々な集会に 集まった人々の姿を通して社会が大きく変動するアメリカの実像に迫った"Public relations"展をMOMAで開催しています。
1984年に亡くなった後に、膨大な未整理の写真が残されていたことで 回顧展開催まで4年の時間が費やされたことでも知られています。