2023-1-20

  

ベッヒャー夫妻(ベルント・ベッヒャー、ヒラ・ベッヒャー)

BECHER, Bernd(1931-2007)& BECHER, Hilla (1934-2015)

ベルント・ベッヒャーは1931年ドイツのジーゲン生まれ。1953~1956年までシュットガルトで絵画と石版画を学び、1957年~1961年までデュセルドルフでタイポグラフィーを学びます。デュセルドルフ美術アカデミー在学中に、写真専攻だったポツダム生まれの将来の奥さんヒラ(1934年生まれ)と出会っています。

二人は1959年から、給水塔、冷却塔、溶鉱炉、車庫、鉱山の発掘塔などドイツ近代産業の名残が残る、戦前の建築物をともに撮影するようになります。「無名の彫刻」と命名したそれらの写真を比較対称し機能種別に組み合わせたタイポロジー(類型学)の作品で過去を内在した現在を指し示そうとしています。
彼らのタイポロジー、ドキュメント、コンセプチュアル・アートの要素を併せ持った質の高い写真作品は1920年代ドイツで発生した徹底的な客観描写を掲げて絵画から写真を自由化した「新即物主義」のアルベルト・レンゲル・パッチュやアウグスト・ザンダーなどの延長上として評価されています。
彼らの作品は写真よりも60年代のコンセプチュアル・アートの流れで見出されます。 1963年に地元のギャラリーで初個展、1969年にはデュセルドルフ市立美術館で個展を開催しています。 1970年には写真集"Anonyme Skulpturen:A Typology of Technical Construcions"を発表、同年ニューヨーク近代美術館で開催された「インフォメーション」展に参加しています。

冷徹に撮影者の主観をなくした客観的な表現方法はミニマリズムの範疇で語られることも多く、特に1980年代以降に現代アートとして高い評価を受け、活躍の場を欧州、米国へと拡大しています。1990年ヴェネツィア・ビエンナーレのドイツ代表として金獅子賞を受賞、2004年にはハッセルブラッド国際写真賞を受賞しています。いまや現代アートオークションで作品が高額落札されることが多い世界的人気アーティストです。

1976年以降ベッヒャー夫妻はデュッセルドルフ美術アカデミーで教師としても才能を大いに発揮しています。彼らが指導したアンドレアス・グルスキー、トーマス・シュトルート、トーマス・ルフ、カンディダ・ヘファーなどはベッヒャー派と呼ばれ、タイポロジーという共通の興味で作品を発表し、現代アート分野で世界的に成功しています。