2023-1-20
Art Institute of Chicago, 2021
Andre Kertesz(アンドレ・ケルテス)
アンドレ・ケルテス(1894-1985)は、20世紀写真のマスターの一人として知られています。小型カメラの特徴を作品作りに生かしたパイオニア的存在です。ハンガリー出身ですが、パリを経て第2次大戦時の1936年にニューヨークに移り住みます。庶民の何気ない日常生活のなかの魅惑的な一瞬をとらえた、シンプルで調和のとれたモダンな画面構成を持ったスナップ的なイメージは世界的に高く評価されています。「写真の詩人」とも呼ばれ、ブラッサイ、カルチェ=ブレッソンなど多くの写真家に影響を与えたことでも知られています。
1925年、ケルテスは、カメラとわずかな貯金だけを持ってパリにやってきました。それから3年の間、彼はアマチュアとプロ、フォトジャーナリズムと前衛芸術家、ダイアリストとドキュメンタリストなどの領域を行き来しながら、写真を撮り続けました。そして1928年末までには、彼の存在は広くアート界で知られるようになり、マン・レイやベレニス・アボットなどと並んで、モダンアート写真の主要人物としての地位を確立します。この3年間、彼は写真のほとんどを「カルト・ポスタル」(ポストカード用紙)にプリントすることを選択していました。この選択は、当初は経済的な利便性から生まれたものでしたが、彼はこの一般的なフォーマットでの芸術的な可能性を探求します。そして暗室でイメージを厳密に合成し、新しい種類の写真オブジェクトを作りました。またこの小さなカードの写真は、イメージとオブジェクトの両方として機能します。写真を多くの人に見てもらうことが可能になり、カフェで国際的な友人の輪を広げるのに役立ちます。また彼は遠く離れた家族に封筒で送ったりしています。
本書は、シカゴ美術館で2021年10月から2022年1月かけて開催される同名の展覧会開催に際して刊行。同展はケルテスの貴重なカルト・ポスタル・プリントを一堂に集めた初めての展覧会です。今や代表作となった収録作品を通して、ケルテスの実験的な初期作品の存在を新たに知ることができます。
ハードカバー : 240ページ、サイズ 21.59 x 3.18 x 27.31 cm、390点のモノクロ/10点のカラー図版を収録。