2023-1-20

  

Sandra Cattaneo Adorno: Scarti di Tempo

Radius Books, 2022

Sandra Cattaneo Adorno(サンドラ・カッタネオ・アドルノ)

サンドラ・カッタネオ・アドルノ(1954-)は、2013年に彼女が60歳の時に写真を始めています。大学で写真を専攻する娘から5日間の写真教室に一緒に参加するという誕生日祝いの誘いを受けたのがきっかけ。彼女はそれまで写真をほとんど撮ったことがなく、まともなカメラを持っていませんでした。しかし、彼女にとって写真はとても魅力的で面白い経験で、瞬く間に魅了されてしまいます。彼女は"私はあまり社交的な人間ではありません。カメラは、この孤独な人間の素晴らしいパートナーになりました。そして、私は自分が育ってきた環境の中で生きてきましたが、カメラで自分の殻を破り、他人とつながりができました”と語っています。
趣味として始めた写真ですが、すぐに日常的な活動へと発展していきます。彼女は、写真を始める前から、すでに仕事で世界中を旅していました。写真という新しい情熱に没頭するにつれ、彼女は世界中で撮影を行います。そして専門知識やスキルを身につけ、編集方法を学び、インスタグラムを開始し作品を発表するようになります。数年にわたり、彼女のオンライン・フォロワーは増えていき、他の写真家や業界の人々とつながりできました。
2016年、彼女の写真の1枚がロンドンのサマセットハウスで展示されます。これはストリート写真部門の60点のうちの1点で、なんと応募総数は15万点でした。それ以来、彼女の作品は広く写真界で認められるようになりました。
写真集も「The Other Half of the Sky(Adorno、2019年刊)」、「Águas de Ouro (Radius Books, 2020年刊)」を相次いで発表。インスタグラムのフォロワーはいまでは5万人を超えています。彼女のキャリアは、何か新しいことを試すのに遅すぎることはないことを証明しています。

本書は、カッタネオ・アドルノの3冊目の写真集です。タイトルの「Scarti di Tempo」は「時間の不一致」、「時間の切れ端」というような意味です。2020年3月、パンデミックによって世界が停止したとき、彼女は自分の周りの時間が奇妙に動き始めたことに気づきました。しかし、それらは保存されなければ、まるで何もなかったかのように、記憶から消えてしまいます。そして、彼女はまるで自分が時間の「切れ端」を積み重ねているような感覚を覚えるようになったのです。この経験を、写真が時間の断片を保存し、また再配置することができることを利用して形にしようと決意します。彼女は自分の想像力の内側を旅するようになります。自分の過去のアーカイブを掘り起こし、関連性のないイメージをコラージュすることで、現実と幻想の境界を曖昧にし、心のメタファーのような一連の新作を創り出したのです。彼女は、時間、記憶、つながり、現実と幻想の境界が、どのように知覚されるかを作品で表現しようとしています。本来の表現から離れ、抽象化された写真は、私たちを音楽や詩と共有するような別の領域へと運んでくれます。音楽や詩と同じように、本書には、作家の夫が作曲したオリジナル楽譜にリンクするQRコードも収録。
イメージとサウンドの重なり合うハーモニーを体感できる機会を提供しています。

ハードカバー : 148ページ、サイズ 24.77 x 1.91 x 32.39 cm、62点のカラー図版を収録、ゲオルギー・ピンハソフ(Gueorgui Pinkhassov)による紹介文付き