2024-10-1
Robert Frank(ロバート・フランク)
Museum of Modern Art, 2024
ロバート・フランク(1924-2019)は、50年代の繁栄する米国のダークサイドをパーソナルな視点で撮影し、写真集"The Americans"(仏版1958年刊、米国版1959年刊)にまとめたスイス出身の写真家。同書は、ウィリアム・クラインの"New York - Kife is Good and Good For You in NY"(1956年刊)とともに現代米国写真のルーツといわれています。
60年代にかけて、フランクは写真から映画に活動の中心を移し、ドキュメンタリー、フィクション、自伝的な要素をジャンルを超え融合させたような革新的作品を製作します。"Pull my Daisy"以後、1959年から2002年までに25本の映画/ビデオを製作、そのうち何本かは50年~60年代のニューアメリカンシネマのクラシックとなっています。
その後、1970年代になり再びポラロイドカメラでモノクロ写真も撮影するようになます。キャリア後期には、ヴィジュアル・ダイアリー・シリーズに取り組んできました。
フランクはかつて、「私は決して立ち止まることのない世界に立っていると思う。今、自分がやろうとしていることを信じているから、私はまだそこで戦っているし、生きている」と記しています。
本書は、フランクの生誕100周年を記念して開催されるニューヨーク近代美術館での初個展に際して刊行。企画はルーシー・ギャラン(キュレーター)が担当し、写真、映画、書籍などのメディアを横断するフランクの様々な試行錯誤、そして、他のアーティストやコミュニティとの対話を探求しています。また彼のあまり知られていない側面にも注目し、その幅広い作品群に新たな視点を提供しています。展覧会では、2019年に作家が亡くなるまでの60年間に制作された約200点の作品が紹介され、その多くはMoMAの膨大なコレクションから集められたもので、これまで未展示だった資料も含まれます。
同展タイトルは、フランクが1980年に制作した痛烈な映画"Life Dances On”から引用。その中で彼は、自身の人生の見通しを形成に関わってきた人たちを振り返っています。彼の作品の多くと同様、この映画の舞台はニューヨークと、1970年に妻でアーティストのジューン・リーフとともに移り住んだノバスコシア州ケープ・ブレトンです。映画の中で、リーフはカメラ目線でフランクに「なぜこのような写真を撮るのですか?」と尋ねます。この映画の上映の紹介で、彼は「生きているからです」と答えています。
本書には、写真、フィルム、書籍、アーカイブ資料がふんだんに掲載され、フランクが影響を受けた人物やその過程について語った言葉が引用されています。ケイトリン・ブーハー(ボーモント&ナンシー・ニューホール学芸員)などのよる3つの学術的エッセイ、未発表ビデオ映像の抜粋、豊富なビジュアル年表なども収録。フランクの絶え間ない創造的探求と人生に迫っています。
ハードカバー: 192ページ、サイズ 22.86 x 2.29 x 26.67 cm、多数の図版を収録。