2025-1-14

  

Michael Brodie: Failing

Twin Palms Publishers, 2025

Michael Christopher Brodie(マイク・ブロディー)

マイク・ブロディー(Michael Christopher Brodie, 1985-)は、17歳時に初めてトレイン・ホッピング(train hopping)を経験し、瞬く間に魅了されてしまいます。 トレイン・ホッピングは、貨物列車に勝手に乗って旅をすること。非常に高いリスクを負う危険な行為で一般的ではなくなっていますが、いまでも貨物列車で移動するコミュニティーは少数ですが存在します。
2003年、18歳のブロディーはトレイン・ホッパーとして全米の旅に出かけます。旅の途中にポラロイドSX-70と出会い、約3年間に渡り友人や旅の仲間を撮影。その後、35mmサイズのニコンF3とフイルムで撮影を継続します。2013年、ニコンで撮影された作品が"A Period of Juvenile Prosperity"としてTwin Palmsより刊行。
旅の中で自由に生きることを実践したブロディーの青春ドキュメントは、不自由な人生を送る多くの一般人を魅了し、いまではアメリカ・ロードトリップ写真の最も印象的なアーカイヴスだと評価されています。

2冊目に出版された"Tones of Dirt and Bone"は、ブロディが 「ポラロイド・キッド 」として知られていた頃、写真に導かれて初めて貨物列車を飛び回ったときに撮ったSX-70の写真を集めたもの。その後、彼は写真をやめたと発言して、突然アートの世界から姿を消してしまいます。それは、彼の別の神話、もしくは必要な隠居だったのかもしれません。彼は、「すべてのことから自分を切り離していたんだ。そして私は成長していた。別の人生を追い求めていたんだ」と語っています。
実はブロディーはナッシュビルでディーゼル・メカニックになっていました。そして恋に落ち、再び国を横断し、結婚。さらにジョニー・キャッシュが歌った埃っぽいネヴァダのウィネマッカの長い道路近くに土地を購入し家を建て、自分のビジネスを始め、いったんは根を下ろします。そしてその生活が崩れだしたときに再びオープンロードが彼を呼んだのです。そのほとんどすべての過程で、彼はカメラとともにいました。そしてついに、本書でそれらの写真が明るみに出ました。
彼の約10年前の最初のフォトブックが映画的な夢であったとすれば、本書は彼の目覚めと清算だといえるでしょう。愛と失恋、喪失と悲しみに彩られた10年間を、生々しく、傷つき、鋭く正直に綴ったフォト・ダイアリーです。ここでは、アメリカン・ドリームの裏側を内側からとらえています、彼は中毒と死の残酷なカオスを間近に目撃しています。また地域の庶民たちのコミュニティーが支えている、ヒッチハイカーや社会の片隅をさまよう同胞たちとの出会いが描かれています。彼の写真で表現されている、埃にまみれた窓の向こうには、広々とした田園と失われた地平線がぼんやりと広がっています。ブロディの目は、忘れ去られた場所に存在する奇妙ではかない美しさに対していつまでも開かれています。

ペーパーバック : 412ページ、サイズ 21.59 x 27.94 cm、約193点のカラー図版が収録されています。



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