2025-10-16

  

Robert Frank: Mary’s Book

MFA Publications, 2025

Robert Frank(ロバート・フランク)

写真家ロバート・フランク(1924–2019)は、歴史的フォトブック「The Americans」で知られています。彼の最初のフォトブックは1946年にスイスで修行中に手製本により作られた「40 Fotos」です。同書は2009年に「Robert Frank: Portfolio: 40 Photos 1941-1946」として、Steidl社から再現されています。その後6年間で、彼はさらに3冊のフォトブックを手掛けており、当時に付き合っており、まもなく妻となる芸術家メアリー・ロックスパイザーへのために作られたスクラップブック「Mary’s Book」もその1冊です。1949年制作の、フランクが最初の妻に捧げたアーティストブック兼ラブレターです。
同書はフランクが写真とテキストの並置を実験した、キャリア形成期の重要な唯一無二の手製本です。74点の小さなサイズの写真とそれに添えられた注釈は、物や空間が持つ詩的な共鳴に対する彼の感受性を明らかにしています。写真の多くには人物が写っていませんが、人間の存在する気配は随所に感じられます。例えば、彼がパリの椅子や街路について思いを巡らせながら、その合間にメアリーへのメッセージを綴ったページなどです。本書は孤独な思索についての考察であり、また叙情詩のようにも読み進められるとともに、また魅力的なパーソナルな写真シリーズでもあります。
約3年前、この「Mary’s Book」は、ハワード・グリンバーグ・ギャラリーを通して米国のボストン美術館はのコレクションに加わりました。2024年12月~2025年6月にかけて、同館はこの貴重なコレクションを紹介する展覧会を開催。本書は展覧会を期に完全再現されたフランクのキャリア初期のフォトブックです。 スチュワート・アレクサンダーなどの、第一線の研究者らによる洞察に満ちた論考を収録。布装丁の複製版にはフランクにより「これは君への贈り物だ」と記され、手書きのメモや手切りプリントが詰まった、互いに重なり合う未綴じページ群が再現されています。読者はフランクの洗練されたビジュアル・センスを通じて、1940年代末のパリを体験できるでしょう。

ハードカバー : 160ページ、サイズ 23.5 x 2 x 32 cm、約75点の図版を収録。



Robert Frank