2023-1-20

  

Gregory Crewdson: Cathedral of the Pines

Aperture, 2016

Gregory Crewdson(グレゴリー・クリュードソン)

グレゴリー・クリュードソン(1962-)は、約30年のキャリアを持つニューヨーク・ブルックリン生まれのアーティスト。彼は、演出を行う"ステージド・フォト"の代表作家として知られています。映画のような大掛かりなセットとライティングを駆使し、8x10の大型ビューカメラを使用することで、ドラマティクかつ幻想的なヴィジュアルを作り上げます。郊外在住の米国中流階級家族の、日常生活に潜む夢と不安をテーマに表現してきました。彼の作品は、世界中の主要美術館やギャラリーで展示・コレクションされています。

"Cathedral of the Pines"は、彼の5年ぶりの新作です。本シリーズで、彼は従来の1点の写真作品で物語を紡ぎだすスタイルへ回帰。光と色彩を駆使して、心理的に揺さぶられる、親しみやすい、新たなヴィジュアルを創り上げています。作品は作家にとっての時間の移り変わりを示す内容で、それには結婚の終わりやニューヨークから遠く離れた西部マサチューセッツの自宅とスタジオへ引きこもって社会から遠ざかっていた時期が含まれます。彼はこの間には、日々長距離の水泳やクロスカントリー・スキーを行っていました。本作のタイトルは、マサチューセッツ州ベケットの深い森にあるスキーコースの名前から引用されています。クリュードソンは、この地で新作制作のインスピレーションを得ています。暗い気持ちが消え、アート作品制作の創造性との新たなつながり感じ、作品制作に打ち込む時期へと再起していったのです。
エッセーは、スタンフォード大学のアレクサンダー・ネメロフ(Alexander Nemerov)が担当。彼は、この地でこれまでに起こったすべての出来事が彼の作品の中で結晶化しているようです。まるでクリュードソンの静かでメランコリックな感覚によって、かつてこの地にいた人たちの顧みられることのなかった感覚や大きな悲しみが集まってきたかのようです、と語っています。

ハードカバー: 31ページ、サイズ 39.9 x 1.5 x 31 cm、カラー図版31点を収録。