ソウル・フォト2011(Seoul Photo 2011)アジアのアート写真最前線 Part-1

 

先週末に開催されたソウル・フォト2011(Seoul Photo)に参加してきた。とりあえず速報をお伝えしよう。
このイベントは今回で4回目になるアジア最大級のフォト・フェアだ。昨年の来場者は約47,000人だったとのことだが、今年もかなり混雑していた。展示者は昨年の22から31に大きく増加、新たに経済発展が続いている中国のギャラリーが多く参加している。日本からの参加ギャラリーはブリッツのみだった。(ブックショップ部門には小宮山書店さんが参加している)主催者によると東日本大震災の心理的影響による参加キャンセルがかなりあったようだ。
会場では本当に多くの参加者、入場者から日本への見舞いの言葉をもらった。今年は大震災復興支援のために、「Japan Again」というチャリティー販売の特別ブースが設置されていた。個人的には、もっと多くの日本のギャラリーが元気な姿を見せてほしかった。ソウル・フォトはアジアのアート写真市場で韓国のハブ化を目指して開催しているという。アジア地域での、日本の経済、政治面の存在感低下がいわれて久しい。アート写真分野においても同じような状況になりつつあるようだ。

今回は中国の存在感を強く感じた。中国からギャラリーとともにコレクターも数多く来ていた。彼らは韓国の現代アート的な大判作品よりも、モノクロの小さな銀塩写真に興味を示していた。少なくとも、彼らは韓国人コレクターよりは欧米的な感覚を持っているようだ。
中国を代表するアーティストの王慶松(ワン・チンソン)は、大判作品4点が専用ブースに展示されていた。本人も来場していたことから多くの来場者の注目を浴びていた。何と1点3億ウォン(約2200万円)の作品2点が売れたとのことだ。そのせいか、ご本人はずっと上機嫌で気軽に記念撮影に応じていた。
昨年は、全般的に作品が売れている印象はなかった。今年は一転して地元作家中心にかなりの数が売れていた感じだった。3日目終了時点まで、約60点以上に赤丸シールが付いていた。

大陸のテイストは、繊細な感覚を持つ日本人の好みとはかなり違う。カラフルで大きな作品が好まれるようだ。中国や韓国には欧米や日本のように銀塩写真の歴史がない。絵画や現代アート分野の作家が写真を表現方法に取り入れて市場が展開していったそうだ。今年もコレクターの好みを意識した現代アート風の大判作品が数多く展示されていた。多くが、欧米ではあまり見られなくなったアクリル版への直接貼りだった。しかし、現代アートの要である作品コンセプトや時代性はやや弱いと感じた。この点が、現代中国の変化をテーマにする王慶松とは決定的に違う。
私は市場特性を意識した作品展示の必要はないと考えている。今年も、11×14″から20X24″位のサイズの作品を展示。マイケル・デウィック、トミオ・セイケなど、大震災チャリティー関係で横木安良夫、下元直樹だった。コンセプトが明快な写真作品は、サイズが小さくても、メッセージがあいまいな現代アート作品より優れていると思う。面白かったのは、多くの人がブリッツを日本のギャラリーだと気付かなかったこと。ステレオタイプの日本的写真を紹介していなかったからだろう。
アート写真の歴史と伝統は国ごとに違うし、独自に発展している。あえてその違いを地元に見せることもフォト・フェアに参加する外国ギャラリーの役割だと思う。
なお韓国写真事情と市場の分析は近日中にお届けします。