アート・フォト・サイトは、ネットでの売り上げをベースに洋書中心の写真集人気ランキングを毎年発表している。2015年の速報データが揃ったので概要を紹介する。
昨年度も、ここ数年続いている当たり外れのない歴史的名作・人気本の再版・改訂版の人気が相変わらず高かった印象が強い。ここ数年は、アベノミクスによる短期的かつ急激な円安で洋書の販売価格が上昇し、全体の売上高・販売冊数が激減していた。昨年は円安がさらに進んだものの、やや回復傾向を示した。決して楽観はできないが市場縮小にやっと歯止めがかかったのではないか。
2015年に一番売れたのは、20世紀写真の巨匠アンリ・カルチェ=ブレッソン(1908-2004)の”The Decisive Moment”だった。
同書のオリジナル版は、1952年にEditions Verve(パリ)とSimon and Schuster(ニューヨーク)により共同で出版された”Images a la Sauvette(The Decisive Moment)”。日本では”決定的瞬間”と訳されている。収録されているのは、カルチェ=ブレッソンのキャリア初期のベスト作品。彼の写真スタイルの”決定的瞬間”をコンセプトに制作されたフォトブックだと認識されている。カバーは画家のヘンリ・マチスによる美しいコラージュで装飾、本自体の装丁も非常に高い評価を受けている。また、ロバート・フランクをはじめ、その後の多くの世代の写真家に多大な影響を与えたことでも知られている。
当時は、フランス版、英語版の合計1万冊がプリントされた。高い評価の割に当初の売り上げは良くなかったらしい。しかし、今ではコンディションのよいオリジナル版はレアブック市場で1000ドル(@115/11.5万円)以上で取引されている。本書は、このフォトブック史上の名作を、美しい本作りで知られるドイツのシュタイデル(Steidl)がオリジナルに忠実に再現した待望の再版。(英語版2015年、フランス版2014年刊) 1万円を超える高価本だが、大判、スリップケース入り、ブックレット付で、コレクターの所有欲を十分に満たしてくれる。たぶんアート写真に興味ある人はほとんどが買ったと思うので、皆が納得の1位獲得といえるだろう。将来的な値上がりを期待して購入した人も多かったのではないか。本書の人気は今年になっても衰えず、いまでも売れ続けている。
当時は、フランス版、英語版の合計1万冊がプリントされた。高い評価の割に当初の売り上げは良くなかったらしい。しかし、今ではコンディションのよいオリジナル版はレアブック市場で1000ドル(@115/11.5万円)以上で取引されている。本書は、このフォトブック史上の名作を、美しい本作りで知られるドイツのシュタイデル(Steidl)がオリジナルに忠実に再現した待望の再版。(英語版2015年、フランス版2014年刊) 1万円を超える高価本だが、大判、スリップケース入り、ブックレット付で、コレクターの所有欲を十分に満たしてくれる。たぶんアート写真に興味ある人はほとんどが買ったと思うので、皆が納得の1位獲得といえるだろう。将来的な値上がりを期待して購入した人も多かったのではないか。本書の人気は今年になっても衰えず、いまでも売れ続けている。
2014年まで3年連続で1位だったヴィヴィアン・マイヤー(1926-2009)の「Vivian Maier: Street Photographer」(powerHouse Books 2011年刊)。首位の座は明け渡したものの昨年も2位を獲得した。
その他は、ウィリアム・エグルストンやスティーブン・ショアーの定番本がランクイン。”Stephen Shore: Uncommon Places: The Complete Works”は、2004年版に未発表作が追加されたの2015年刊の再版。
マイク・ブロディーは2013年に、”A Period of Juvenile Prosperity”がTwin Palmsより刊行され注目された。初版は完売して、現在は2版が販売されている。”Tones of Dirt and Bone”は、待望のブロディー2作目の写真集。デビュー作より前の、2004~2006年までにポラロイド・カメラとTime-Zeroフィルムで撮影された作品が収録されている。
今回はテリー・オニールの本が2冊ランクインした。写真展開催と作家来日という特殊事情で売り上げが伸びたと思われる。彼は音楽、映画、政治、皇室、スポーツなど全分野をカバーする世界的に有名な英国人写真家だが、今まで日本では知名度が低かった。”The A-Z of Fame”は彼のキャリアを本格的に回顧する写真集。”Terry O’Neill’s Rock ‘n’ Roll Album”では、彼の得意分野のロック系名作をコレクションしている。
“Tim Walker Pictures”は、2008年刊行で、絶版だったティム・ウォーカーの人気本の改訂版。
“Wim Wenders: Written in the West,Revisited”もヴィム・ヴェンダースによる長らく絶版だった人気本の改訂版。テキサスのパリで撮影された15点を新たに収録している。
2015年ランキング速報
1.Henri Cartier-Bresson:The Decisive Moment, 2015
2.Vivian Maier: Street Photographer, 2011
3.William Eggleston’s Guide, 2002
4.Stephen Shore: American Surfaces, 2005
5.Tim Walker Pictures, 2015
6.Terry O’Neill:The A-Z of Fame, 2013
7.Mike Brodie: Tones of Dirt and Bone, 2015
8.Stephen Shore: Uncommon Places: The Complete Works, 2015
9.Wim Wenders: Written in the West, Revisited, 2015
10.Terry O’Neill’s Rock ‘n’ Roll Album, 2015
より詳しい解説は、近日中にアート・フォト・サイトで公開します。