テリ・ワイフェンバック写真展
“Certain Days”がスタート!

ブリッツ・ギャラリーは、米国人写真家テリ・ワイフェンバック(Terri Weifenbach、1957- )の写真展「Certain Days」を4月13日(木)から開催する。
ブリッツでは2014年に開催した「Hidden Sites」以来の5回目の個展となる。本展は2017年4月9日から静岡県三島のIZU PHOTO MUSEUMで行われている、国内外の美術館での初大規模個展「The May Sun」に合わせての開催となる。同展のパンフレットと入場割引券をブリッツ店頭で配布しているので興味ある人は声をかけて欲しい。(数に限りがあります)
今回の展示は、ワイフェンバックの約20年以上にわたる写真家キャリアを振り返る内容。IZU PHOTO MUSEUMでは、2005年に発表された「The Politics of Flowers」(onestar press刊)と、伊豆に長期滞在して撮り下ろされた最新作「The May Sun」シリーズ、映像やインスタレーション作品が展示されている。こちらのレビューは近日中に紹介する予定だ。
ブリッツの展示では、「In your dreams」(1997年)、「Hunter Green」(2000年)、「Lana」(2002年)、「Hidden Sites」(2005年)、「Some Insects」(2010年)、「Between Maple and Chestnut」(2012年)からの作品セレクションとなっている。
デビュー作の「In your dreams」は、マーティン・パーとジェリー・バジャー著のフォトブック・ガイド「The Photobook:A History volume II」(Phaidon Press、2006)に取り上げられている。同書で著者は”ワイフェンバックは美しい写真を撮影している。多くの写真家は美しさの表現で失敗を犯している。それは彼らが”きれい”や”かわいい”をアートと混同しているからだ。しかし彼女の写真はただ表層的に美しいのではなく、深い洞察力を持って表現されている”としている。そして、毎日の経験を日記的に抽出するアプローチは、撮影対象が全く異なるがナン・ゴールディンと同じだとしている。私はこの文章は彼女の作品を最も的確に評論していると考える。
デビュー作刊行から約20年が経過しても、ワイフェンバックの写真世界は一貫している。撮影された場所や時期が違っても、自然風景や植物が主要な撮影対象であることに変わりはない。そして、彼女はそれらに自然を愛し崇拝する感覚を持って接している。また私たちの目に見えない、場所特有の雰囲気や気分を感じ取り作品に反映させてきた。私たちが普段は見過ごしてしまうような何気ないシーンが、彼女の手にかかると特別な写真世界へと高められるのだ。
多忙な現代人にとって、身の回の自然や動植物、場所の記憶などは完全に無意識化された存在だろう。彼女は、自作を通して、忙しい生活の中で自分を見失いがちな人たちがそれらに意識的になり、さらに自らを客観視して元気になることを願っているではないだろうか。
写真作品と同様に、ワイフェンバックの写真集を通してのヴィジュアル表現は極めて高く評価されている。今までに刊行された多くの写真集のうち、初期作品は貴重かつ高価なコレクターズ・アイテムとなっている。
本展では、「Instruction Manual No1 : 21 May 1995」、「Instruction Manual No2 : 21 April 1996」、「Instruction Manual No3 : 25 June 1996」、「In your dreams」、「Hunter Green」、「Lana」、「The Politics of Flowers」、「Another Summer」など、彼女の手掛けた写真集も展示している。一部の写真集は購入可能だ。また同展の限定カタログには写真作品とともにコレクター向けに詳細な情報満載の写真集ガイドも収録している。
本展では、現在はデジタル化の進行で制作が困難になった貴重なタイプCプリント作品18点と、多数の写真集が展示される。ぜひワイフェンバックの20年以上にわたる写真世界の変遷を堪能してほしい。