いまなんでロック系のミュージック写真が売れるのだろうか。
それは、90年代くらいまでは音楽が時代の気分や雰囲気作りの一翼を担っていたからだ。つまり優れたロック系ミュージック写真は、アート系ファッション写真と同じといえるのだ。この時代を生きた人は、自分が愛聴していた有名ミュージシャンの1枚の写真から過去の記憶が蘇る。当時はいまのような音楽配信ではなく、LPが中心だった。楽曲やミュージシャンの思い出はいま以上にヴィジュアルとともに強く残っている。これは日本だけではなく、世界的な現象になっている。市場規模はファッション写真よりも大きいと思われる。過去の良き時代を懐かしむ流れの一環なのだろう。
しかし、それは単にブロマイド的な有名ミュージシャンの写真が売れるのとは意味が違う。やや分かり難いので、ファッション写真に置き換えてさらに詳しく説明しよう。アート作品にならないファッション写真は、単に服の情報を提供しているだけだ。ミュージック系でも、スナップ、ライブ、広報用などの写真はミュージシャンの情報を提供しているだけなのだ。これらのヴィジュアルにはドキュメント性はあるが写真家やミュージシャンの創造性が作品に反映されていない。
アートになり得る優れたミュージック系写真が生まれるには、写真家とミュージシャンとの深い関係性が非常に重要となる。それは才能を認めあった両者によるコラボ作品なのだ。そのような、作品はLPジャケットでのセッションやプライベートでの撮影の中から生まれることが多い。
市場には、アート系とブロマイド系が混在している。ミュージック系の作品をコレクションする際は注意してほしい。アート系は一般的に限定数の販売で価格が高い。しかし、アート作品なので資産価値を持つ点が大きく違う。
例えば、昨年にデヴィッド・ボウイが亡くなったことで、彼と人間関係が深く、数多くのセッションを行っていたブライアン・ダフィー、テリー・オニール、鋤田正義らの作品相場は大きく上昇した。ボウイ作品でも、スナップ、ライブの写真の価値に変化はない。
さて、今週末から始まるフォトマルシェ4のテーマはMUSUICだ。
メイン展示では、鋤田正義が、デヴィッド・ボウイ、デヴィッド・シルヴィアン、イギー・ポップ、マーク・ボラン。
グリード・ハラリが、ボブ・マーレー、ルー・リード、フレディ―・マーキュリー、エリック・クラプトン、ケイト・ブッシュ、パティー・スミス、ジョニー・ミッチェル、デヴィッド・ボウイのポートレートを展示する予定となっている。
ボウイのようなビッグ・ネームは多くの人が時代性を共感する。しかし、いまほどでないにしても70~80年以降には上記のような数多くのミュージシャンが活躍している。それらのヴィジュアルに感銘を受けるかは、見る側がその時代をどのように生きたかによる。アート系でも、ミュージシャンや写真家の知名度によりお求めやすい価格の作品も数多くある。今回のフォトマルシェでは、来場者がかつて自分が生きた時代を思い起こす写真との出会いが数多くあることを願っている。写真がきっかけで、好きだったミュージシャンを語る場になってくれたら本望だ。
○ブリッツ・ギャラリー展示予定写真家
ブライアン・ダフィー、テリー・オニール、スティーブ・パーク、テリ・ワイフェンバック、鋤田正義、杵島 隆、新山 清、高橋和海、伊藤雅浩など。
○トミオ・セイケ写真展の案内状を配布!
ブリッツでは10月3日からトミオ・セイケ写真展「Julie – Street Performer」を開催する。毎回、好評の展覧会案内状。いつも会期開始直後になくなってしまう。本展のA5サイズカードを、フォトマルシェ4のブリッツのブース内のみで限定数無料配布する。希望者はブースのスタッフに声をかけてください。
○アート・フォト・サイトとJPADSも参加。
約15年にわたり開催しているファインアート・フォトグラファー講座。以下の参加した写真家の作品が展示される。
大塚卓司、橋村豊、柳田友希、今野光、藤原感市、安部礼子、伊藤雅浩。
今回はすべて小ぶりでお求めやすい価格の作品を展示している。私は日本の新しい分野の写真家に育つ可能性を持つ人たちだと評価している。週末には参加写真家も会場にいる予定だ。
○トークイベント開催
・「写真の見立て教室@フォトマルシェ」開催
ここ数年に渡り、ブログで提案している日本の新しいアート写真の価値基準。限界芸術や民藝の写真版としてクール・ポップ写真と呼んで普及に努力している。
7月29日は、初の「写真の見立て教室」を開催して、非常に好評だった。今回はその考え方のエッセンスを実例を提示しながらコンパクトに紹介していく予定。全く新しい枠組みで、現在の日本の写真の世界を分析していく。ブログを読んで興味を持って興味を持った人、写真家、コレクター、キュレーター、写真鑑賞が趣味の人はぜひご参加ください。
・伊藤雅浩(写真家)トーク・イベント
「宇宙の営みを可視化する」
伊藤雅浩(1983年生まれ)は、写真での現代アート表現に挑戦し続けている新進気鋭作家。これまでに、空間周波数に注目して写真のビジュアル分析を行い、ゆらぎ理論を用いたアート写真の客観評価の探求などを行っている。
今回フォトマルシェでは最新の2作品を公開。「陽はまた昇る(The Sun Also Rises)」で、目に見えない大地震のヴィジュアルによる可視化に挑戦。また「Life is a series of choices」では、カオス図形による抽象作品に取り組んでいる。
本トークでは、ユニークな作品メッセージの背景にある発想法やアイデアの見つけ方について本人が語る予定。
聞き手:福川芳郎
○テリ・ワイフェンバック初期作のコレクション相談会を実施
2017年10月1日より、アナログの写真用紙で制作されていたワイフェンバックの初期3作品の販売価格が改定されることになった。残念ながら従来の用紙がデジタル化進行により、生産が中止となり新たに作品制作ができなくなったことによる。エディション数が残っている作品も現在までに制作されたプリント数で制作終了となる。作品の希少性を鑑み、今回は40~50%の大幅な価格改定となる。
In Your Dreams、Hunter Green、Lana/Snake Eyesの作品購入を考えている人は、ぜひ価格改定前のこの機会に作品のコレクションを検討してほしい。会場では、ワイフェンバック作品も一部展示する予定。ブリッツのブースでは作品にご興味を持つお客様向けに随時相談会を開催する。既に売り切れの人気作品もあるが、まだ購入可能な素敵な彼女らしい作品も残っている。
期間中は購入可能作品を旧価格にて提供する予定。ただし、海外でも販売していることから人気作売り切れの場合はご容赦いただきたい。
私はだいたいブリッツのブースにいる予定だが、打ち合わせなどで席をはずすこともある。ご興味のあるお客様は、もし可能なら事前にお出でになる日時をメールで連絡してほしい。フォトマルシェに来場できない人に対してはブリッツで随時相談会を開催。(メールで予約受付中)旧価格でのご提供は9月30日受注分までとなる。