2017年に売れた写真集
“All about Saul Leiter “が1位 !

アート・フォト・サイトは、ほぼ毎週ごとにおすすめのフォトブックを紹介している。毎年、それを通してのネット売り上げをベースに、ギャラリー店頭での動向を参考にして、独自のフォトブック人気ランキングを発表している。
最近は大手通販サイト経由ではなく、独自のネットワークやフォトブック専門店のみで販売する出版社、ギャラリー、美術館、写真家も多くなっている。また発行部数が少ない人気写真家の限定フォトブックなどは、市場に出回る前に完売する場合もある。
いまや複雑化したフォトブック流通を完ぺきに網羅する人気ランキングの集計は非常に困難といえるだろう。それぞれの専門店、オンライン・ブックショップごとのランキングが存在する状況だと考えている。

こちらの洋書ベスト10″も、できる限りの客観性を心掛けているが、あくまでもコレクションのための参考資料だと捉えてほしい。さて、2017年の速報データが揃ったので概要を紹介しよう。

All about Saul Leiter 青幻舎 2017年

1位は、“All about Saul Leiter ソール・ライターのすべてだった。これは20174月に東京のBunkamura ザ・ミュージアムで開催され、約8万人という記録的な来場者を動員したというニューヨークが生んだ伝説 写真家ソール・ライター展に際して刊行された展覧会カタログ。ソール・ライター財団全面協力により制作された、完全日本オリジナル作品集。
初期のストリートフォト、広告写真、プライベートヌード、ぺインティングなど約200点とともに、アトリエ写真、愛用品などの資料も収録。彼の、人生観、情緒的表現、浮世絵の影響を感じされる構図、色彩などを探求している。サイズはコンパクトだが、豊富な図版や情報が詰まっているわりに2,500円(税別)と非常に魅力的な価格設定だった。

2016年の1位は、荒木経惟の復活した名作フォトブック「センチメンタルな旅」だった。これで2年続けて洋書と比べて価格が為替で変化しない和書のフォトブックが1位を獲得した。

また5位には、これも20174月に三島のIZU PHOTO MUSEUMで開催されたテリ・ワイフェンバックの“The May Sun”展のカタログが入った。同書は、ハードカヴァーの高品位印刷による限定の大判豪華本。それにも関わらず3,500円(税別)という非常に良心的な値段設定だったことが印象的だった。すぐに完売したので、発行部数が多かったら売り上げも伸びたと思われる。

洋書は、ここ数年の急激な円安で販売価格が上昇し、売上高・販売冊数の減少傾向が続いていた。2016年は英国のEU離脱や米国大統領選挙の不透明さから為替が円高方向に戻って、ドル・円の為替で108.7929円となった。しかし、2017年の平均は112.1661円と再びドル高に戻り、洋書価格が上昇傾向になった。従って、売上高・販売冊数ともに2016年よりも減少している。

1年前の1月と比べると、売れ筋のスティーブン・ショアーの“Stephen Shore: Uncommon Places: The Complete Works”5,042円から6,631円へ、“Morandi’s Objects, Joel Meyerowitz”4,227円から5,805円、“Sarah Moon: Now And Then”4,136円から5,957円へと、かなり値上がりしている。(価格は日々変動している)人気の高いヴィヴィアン・マイヤーの定番フォトブック“Street Photographer”2011年の刊行当時は3,500円だったがいまは4,685円だ。
為替の影響以外にも、洋書の販売価格はドル高時、そして版元の在庫冊数が減少すると割引率が悪くなる傾向があるの点を付け加えておこう。販売業者が、為替差損を回避したいという心理が働くからだ。
また2017年に刊行された注目フォトブックは、当初の販売価格がかなり強気の設定だったと感じた。“Stephen Shore: Selected Works 1973-1981”9,500円、Stephen Shoreのニューヨーク近代美術館での回顧展カタログが8,900円、アーヴィング。ペンのメトロポリタン美術館のカタログが8,200円、リチャード・アヴェドンの“Nothing Personal”8,400円、ウィリアム・エグルストンの“Election Eve”10,100円、リー・フリードランダーの“The American Monument” 18,000円と、かなり高価なのだ。アート写真の表現の一部と考えると安いのだが、コレクターではないと気軽に何冊も購入とはいかないだろう。
しかし、その中でマイケル・デウイックの“The End: Montauk”と、リー・フリードランダーの“The American Monument” (ランク外)は高価な割に売れていた。この2冊はともに伝説のフォトブックの再版。初版は、古書市場で高価なことを知っているコレクターが入手したのであろう。

2017年を振り返るに、高価でもアート写真コレクションとして価値があるものと、ソール・ライターやテリ・ワイフェンバックのように低価格で高品質の、お値打ち感の高い展覧会カタログが売れる傾向が顕著だったといえるだろう。中途半端な、写真家のブランド、価格、内容、装丁のフォトブックはかなり売れにくい状況になっている。
フォトブックは、アート写真分野で低価格帯に分類される。その主要な購入者は中間層だと言われている。もしかしたら、最近よく言われる、中間層の収入の伸び悩みと、貧富の差の拡大がフォトブック市場にも影響を与えているのかもしれない。

 2017年フォトブック人気ランキング

  1. All about Saul Leiter ソール・ライター(和書)、青幻舎 2017
  2. Stephen Shore – Uncommon Places: The Complete Works スティーブン・ショア、Aperture 2014
  3. Wolfgang Tillmans: Concorde ウォルフガング・ティルマンズ、Walther Konig 2017
  4. Vivian Maier: Street Photographer, 2011 ヴィヴィアン・マイヤ、powerHouse Books 2011
  5. Terri Weifenbach The May Sun テリ・ワイフェンバック(和書)、IZU PHOTO MUSEUM 2017
  6. Ryan McGinley: The Kids Were Alright ライアン・マッギンレイ、Skira Rizzoli 2017
  7. Avedon’s France: Old World, New Look リチャード・アヴェドン、Harry N. Abrams 2017
  8. The End: Montauk, N.Y., Michael Dweck マイケル・デウィック、Ditch Plains Press 2016
  9. Holiday Purienne Holiday ヘンリック・プリエンヌ、Prestel 2017
  10. Hiroshi Sugimoto: Gates of Paradise 杉本博司、Skira Rizzoli 2017