2018年アート写真のオークションがスタート! アイコン的作品の人気が続く

今年のライブによるアート写真オークションは、2月15日に米国ニューヨークの中堅業者スワン(Swann Auction Galleries)の”Icons & Images:Photographs & Photobooks”でスタートした。出品作品の約86.6%が落札予想価格上限1万ドル以下の低価格作品中心のオークションとなる。落札結果はほぼ予想通りで、落札率は約73%、総売り上げは約166万ドル(約1826万円)だった。
ちなみに2017年の同オークションも、落札率は約73.9%、総売り上げは約158万ドルとほぼ同等の結果だった。

Swann Auction Galleries, Robert B. Talfor

今回注目点ははフォトジャーナリズムのルイス・ハイン (1874-1940) の24作品が出品されたこと。注目されていたカタログの表紙を飾るハインの代表作”Mechanic at Steam Pump in Electric Power House, Circa 1921”。落札予想価格は7万~10万ドル(770~1100万円)のところ、8.125万ドル(約893万円)で落札された。
最高額だったのは19世紀の英国出身写真家Robert B. Talforによる113点の歴史的写真アルバム “Photographic Views of Red River Raft, 1873″。(上の画像)
落札予想価格は1.8万~2.2万ドルのところ、9.375万ドル(約1031万円)で落札された。アートコレクションとというよりも歴史的な資料の価値が強い作品。美術館や公共機関が購入したのではないだろうか。

2月15日には、ササビーズ・ロンドン”Erotic: Passion & Desire”オークションが開催された。リチャード・アヴェドン、ロバート・メイプルソープ、ヘルムート・ニュートン、マン・レイ、トーマス・ルフなどの高額評価のヌード写真が絵画、版画、ドローイング、彫刻などとともに出品された。
総売り上げは約371万ポンド(5.56億円)。写真関連作品は18点が出品された。全体の落札率は約70%、写真は約77%だった。

写真の最高額はクリス・レヴィーンの、ケイト・モスをモデルにした立体感のあるレンティキュラー・プリントのライトボックス作品”SHE’S LIGHT (LASER 3), 2013″の7.5万ポンド(約1125万円)だった。(下の画像)

Sotheby’s London, “Erotic: Passion & Desire”, Chris Levine SHE’S LIGHT (LASER 3), 2013

レヴィーンは、ロンドンを拠点に活躍しているカナダ出身のアーティスト。セントラル・セント・マーチンズを卒業してから、光とアートを融合した“ライトアート”作品を制作。最新テクノロジーを駆使して光や画像を形にして、レーザー、LED、レンズ、ライトボックス、写真などによる斬新な官能的作品を作り上げている2004年、エリザバベス2世のホログラム(レーザー光線によって作られる3次元の立体写真)撮影に指名される。20世紀に最もアイコニックなイメージと言われるこの3Dポートレートシリーズがレヴィーンを一躍著名なアーティストにした。今回のケイト・モス作品は彼の代表作。100X150cmの大判サイズでAPを含めて2点しか制作されていない写真だが絵画に近い貴重な作品。

ササビーズ・パリは、低価格帯から中間価格帯までの比較的買いやすい価格帯の現代アート、家具などのデザイン、アート写真をまとめ販売する”NOW!”を2月28日に開催。住空間の中でのアートや関連商品を新しいコレクター層に提案するオークションとなる。総売り上げは約179万ユーロ(約2.32億円)。

写真関連作品は現代アート系から銀塩20世紀写真まで約60点が含まれた。全体の落札率は約75%だったが写真は約58%にとどまった。最高額はドイツ人写真家ギュンター・ザックス(1932-2011) の、1点102X102cmの大判カラー作品の8点組”Hommage a Warhol, 1991″で、3万ユーロ(約390万円)で落札。ナン・ゴールディンの69.8 x 101.5 cmサイズのチバクローム作品”GREER AND ROBERT ON THE BED, NYC, 1982″は、2.357万ユーロ(約306万円)で落札された。

2月28日には、ヘリテージ・オークションが約170点の”Online Photographs Auction”を開催。こちらは1000ドルから1万ドルの作品が中心、総売り上げは約14.2万ドル(約1562万円)だった。今後は、このような低価格帯の20世紀写真はコストのかかるライブ・オークションからオンライン・オークションにシフトしていくと思われる。

2月になって1月の米国の雇用統計のよるインフレ懸念と長期金利上昇を受けて、景気回復、低インフレ、低金利が続く適温相場が変調の兆しを見せてきた。金融市場では相場の乱高下が続き、どうも低ボラティリティーの時代は終焉を迎えてようだ。金利上昇などがアート相場に与える影響にについては皆がまだ予想できないでいる。先の見通しが不明確だとなかなか参加者も入札に強気になれないだろう。作品の選別化が進行していたアート写真市場にはどのような影響が出てくるのだろうか?今週ロンドンで行われる現代アート・オークションとともに、来月のニューヨークのアート写真定例オークションが注目される。

(1ドル/110円、1ポンド/150円。1ユーロ/130円)