2018年アート写真市場がいよいよ幕開け
春の大手業者のオークション・プレビュー

4月5日から8日にかけて、世界最大規模のアート写真に特化したアートフェアーの”AIPAD フォトグラフィー ショー2018″がニューヨークで行われる。今年もこの世界中のコレクターや関係者が集まる機会に合わせて大手3社のオークションが開催される。

クリスティーズでは、昨秋から続いているニューヨーク近代美術館コレクションのオンライン・セール6回目となる”MoMA: Walker Evans”が、4月3日から11日にかけて開催される。多数の代表作を含む落札予想価格が3000ドル~15,000ドル(約33~165万円)の109点が出品される。ほとんどの作品が同館で1971年に開催された回顧展の際に制作されたものとのことだ。ウォーカー・エバンスは、アーバスやウィノグランドなど多くのストリート系写真家に多大な影響を与えた巨匠。これまでのオンライン・セールの目玉となることから動向が注目されている。

ライブ・オークションでは、大手3者が単独コレクションと複数委託者による5つのオークションが開催される。
クリスティーズは、4月6日に”Photographs”と”The Yamakawa Collection of Twentieth Century Photographs”、フィリップスは、4月9日に”Photographs & The Enduring Image: The Collection of Dr. Saul Unter”、ササビーズは、4月10日に”A Beautiful Life: Photographs from the Collection of Leland Hirsch”と”Photographs”を開催する。
トータルで663点が出品。昨年春の741点、昨年秋の874点よりは少ない。

PHILLIPS NY “Photographs” Catalogue

高額落札が予想されている作品はフィリップスに集中している。”Photographs”に出品されるピーター・ベアードの”Heart Attack City,1972″。100.6 x 123 cmサイズの、銀塩写真、水彩ドローイングなどを含むコラージュ作品。落札予想価格は50万~70万ドル(5500~7700万円)。
同じく”The Enduring Image: Photographs from the Dr. Saul Unter Collection”に出品されるのは、エドワード・スタイケンの”Gloria Swanson, New York,1924″。こちらは24.1 x 19.1cmサイズの銀塩のヴィンテージ作品。落札予想価格は40万~60万ドル(4400~6600万円)。続いては、これも”Photographs”に出品されるアンドレアス・グルスキーのサッカー場と選手を撮影した”EM, Arena, Amsterdam I,2000″。207 x 166.7 cmサイズ、エディション4のクロモジェニックカラー・プリント作品。 こちらの落札予想価格は35万~45万ドル(3850~4950万円)。

クリスティーズの”The Yamakawa Collection of Twentieth Century Photographs”には、ダイアン・アーバスによる、アート史上において非常に重要なポートフォリオ・セット”A box of ten photographs”が出品される。このポートフォリオが、彼女の死後のキャリア評価を決定づけるとともに、写真がシリアスなアートだと認識されるきっかけを作ったと言われている。こちらには、ニール・セルカークがプリントして、ドーン・アーバスがサインしたポーツマス・プリント10点が収録。アーバス本人が作品をセレクションしていることから、数多い個別作品の中でもポートフォリオ収録作品の評価が高くなっている。落札予想価格は50万~70万ドル(5500~7700万円)。個人コレクターというよりも美術館などの公共機関がぜひ所有したい逸品だろう。

ササビーズの”Photographs”で注目されているのは、マン・レイの”MINOTAUR,1933″と、ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットの”THE PENCIL OF NATURE(自然の鉛筆)”の6冊完全セット。落札予想価格はともに15万~25万ドル(1650~2750万円)。

私が個人的に注目しているのは、ササビーズの”A Beautiful Life: Photographs from the Collection of Leland Hirsch”と、クリスティーズ”Photographs”に出品されるリチャード・アヴェドンの代表作”Dovima with Elephants, Evening Dress by Dior, Cirque d’Hiver, Paris, 1955″。ともに124.5 x 101.6 cmサイズ、エディション50の銀塩写真。落札予想価格は30万~50万ドル(3300~5500万円)。
ちなみに90年代の前半、まだアヴェドンが存命だったときは、一回り小さい20X24″(約51X61cm)の方が人気があって、値段も高かった。約4半世紀が経過して、アート写真は現代アートの一部となり、大きなサイズの方がはるかに高額になっている。本オークションの出品作の当時の値段は2.7万ドルだった。現在の評価は10倍以上になっている。

(為替レート1ドル/110円で換算)