新機軸のアート写真オークションの試み
女性やファッション系に特化した企画(3)

さて本年の6月19日、クリスティーズは、舞台をニューヨークからパリに移して、Leon Constantiner氏のコレクションからの最後になる“Icons of Glamour & Style: The Constantiner Collection”を開催した。

今回は92点が出品され落札率は81.5%、総売り上げは約264.3万ユーロ(約3.3億円)だった。カタログ・カヴァーを飾ったのはヘルムート・ニュートンのポラロイド作品“Poster Project Wolford, 1995”。落札予想価格8000~1.2万ユーロのところ2.5万ユーロ(約312万円)で落札されている。実は本作は2008年に開催された最初の“The Constantiner Collection”で不落札になった作品。この10年間にファッション系作品の人気が高まった事実を象徴した落札結果だったと言えるだろう。
ニュートンは15点が出品され、12点が落札。やはり知名度が低い絵柄の作品は不落札だった。

Helmut Newton “Sie Kommen, Dressed & Sie Kommen, Nude, Paris,1981” Christie’s Paris

ニュートン作品の最高額は“Sie Kommen, Dressed & Sie Kommen, Nude, Paris,1981”, 20 X 24″サイズの2枚組作品。15~25万ユーロの落札予想価格だったが、ほぼ下限の17.5万ユーロ(2187万円)で落札された。本作品は1992年4月のササビーズ・ニューヨークにおけるオークションにおいて2.09万ドルで落札された作品。今回の17.5万ユーロは、1ドル・1.12ユーロで計算すると約19.6万ドル。1992年からの約28年間で約9.37倍になった計算になる。単純な複利計算では約8.32%で運用できたことになる。参考までに、1992年4月の米国30年債の利回りは約8%だった。

Richard Avedon “Dovima with Elephants, Evening Dress by Dior, Cirque d’Hiver, Paris, 1955″ Christie’s Paris

最高額はリチャード・アヴェドンのアイコン的作品“Dovima with Elephants, Evening Dress by Dior, Cirque d’Hiver, Paris, 1955” の、大判サイズの130.5 x 104 cm作品。25~35万ユーロの落札予想価格だったが、こちらもほぼ下限の26.2万ユーロ(約3275万円)で落札された。本作品は2005年10月に開催された上記の“20th Century Photographs -The Elfering Collection”に出品され18万ドルで購入された作品。今回の26.2万ユーロは、1ドル・1.12ユーロで計算すると約29.34万ドル。2005年からの約14年間で約1.63倍になっている。単純な複利計算、約3.55%で運用できた計算になる。ちなみに、2005年5月の米国10年債の利回りは約4%だった。

Andy Warhol “Statue of Liberty, 1976-1986” Christie’s Paris

続いたのはアンディー・ウォーホールの6点のグリッドの組写真。4~6万ユーロの落札予想価格だったが、上限の3倍以上の21.25万ユーロ(約2656万円)で落札。本作品は2000年4月にクリスティーズ・ニューヨークで開催された“Photographs”に出品され4.7万ドルで購入された作品。今回の21.25万ユーロは、1ドル・1.12ユーロで計算すると約23.8万ドル。2000年からの約20年間で約5倍になった。単純な複利計算では約8.45%で運用できたことになる。2000年4月の米国10年債の利回りは約6.2%だった。

高額落札の作品で、過去のオークション落札記録のある作品はいずれも利益を出している計算になる。しかし、購入時期によってマイナス利回りになる場合もある。購入時期が2008年4月というリーマンショック前の相場のピーク時に購入されたのが、リチャード・アヴェドンによるアメリカの有名モデル・女優ローレン・ハットンの大胆な構図のセミ・ヌード作品“Lauren Hutton, Great Exuma, The Bahamas, October 1968”。

Richard Avedon “Lauren Hutton, Great Exuma, The Bahamas, October 1968” Christie’s Paris

当時の購入価格は12.7万ドルだったが、今回の落札価格は9.375万ユーロ(約1171万円)。1ドル・1.12ユーロで計算すると約10.5万ドルになるので、約11年の所有で単純な複利計算ではマイナス約0.675%の運用だった計算になる。個人的には相場のピークという最も厳しいタイミングでの作品購入でも、当初の価値をキープしているのは驚異的なパフォーマンスだと見ている。
念のために確認しておくが、上記の運用利回りは経費を考慮していない単純な計算になる。実際には、オークション会社への手数料や所有期間の保険料、保管料、作品輸送費用などの諸経費がかかることになる。

リーマンショック後は世界的に金融緩和が進み、低金利が一般化してしまった。現在の米国10年債の利回りでさえわずか2%程度だ。この経済状況は市場性の高い作品の将来価値にどのように影響を与えるか、また与えないのか、個人的に今後の動向に興味を持っている。

オークショナーを務めたフィリップ・ガーナ―氏は、本セールを振り返り“今回で最後になるConstantiner Collectionが市場に強い情熱を持って受け入れられたことをうれしく思う。今回の成功は、私たちの文化と写真史における、偉大なファッションと関連するエディトリアル写真の偉業の重要性を強調しているといえるでしょう。”と語っている。まさにその通りのオークション結果だったといえるだろう。

私は20世紀のファッション/ポートレート写真分野は、まだまだ再評価される可能性のある写真家が数多く残っていると考えている。

(1ユーロ/125円で換算)