この時期は定例の春のニューヨーク・アート写真オークションが開催される。通常ならば結果を分析して提供しているはず。しかし、今期はコロナウイルスの影響で状況が様変わり。大手3社や、スワン・ギャラリー・オークションも公開オークションを延期。その中でササビーズ・ニューヨークのみがオンライン・オークションを開催した。
入札は3月24日から4月3日までの期間で開催。当初は227点の出品が予定されていたものの、市場環境の急変から全体の約12%にあたる28点が出品取り下げ、総出品点数は199点のオークションとなった。結果は122点が入札されて落札率は約61.3%、総売り上げは約299万ドル(約3.29億円)だった。
ちなみに昨年同期のササビーズの結果は、189点が出品され131点が落札、落札率は約69.31%、総売り上げは約403万ドル(約4.44億円)だった。
今回の中身を分析するに、手数料込での落札予想価格下限以下の落札が34件も見られた。それらが果たしてバーゲンの買い物だったかどうかは今後の相場動向次第だろう。
総出品点数の約48%が不落札か落札予想価格下限以下の落札となる。平時ならば厳しい内容だが、このような環境下であることを考慮すると、比較的順調だったと評価できるのではないか。なんとしても市場を支えようとする、アート写真コレクターたち関係者の強い意志を感じた。たぶん他の市場関係者にもその心意気は伝わったのではないだろうか。
最高額は、ラズロ・モホリ=ナギの「Photogram cover for the magazine Broom, 1922」。落札予想価格40~50万ドルのところ52.4万ドル(約5764万円)で落札された。
続いたのは、クリスチャン・マークレー(Christian Marclay、1955- )の、青いサイアノタイプの1点もの、約139X260cmの巨大作品「MEMENTO (UB40),2008」。落札予想価格5~7万ドルのところ16.25万ドル(約1787万円)で落札。
アルフレッド・スティーグリッツの「The hand on the man,1902」は、落札予想価格8~12万ドルのところ11.25万ドル(約1237万円)で落札された。
本作は2013年4月にフィリップス・ニューヨークで10.45万ドルで落札された作品。手数料などのコストを考慮すると約7年のリターンはマイナス。売却時期が悪かったといえるだろう。
私が注目しているアーヴィング・ペンは9点が出品。人気は相変わらずで7点が落札されている。しかし落札予想価格下限近辺のものが多かった。今後は相場が下方修正されると思われる。
コロナウイルスの影響はどれだけ続くかだれも予想できない。当分の間は、プライマリー市場はオンライン・ヴューイング・ルーム、セカンダリー市場はオンライン・オークションという流れが続くと思われる。
(為替レート/1ドル/110円で換算)