鋤田正義 60~80年代のファッション写真/
ロック系ポートレーツを展示!
@ブリッツ・ギャラリー

ブリッツ・ギャラリーは、鋤田正義(1938-)の初期ファッション作品とロック・ミュージシャンのポートレートを紹介する「SUKITA : Photographs from Early Fashion to Rock Icons」展を10月29日から開催する。展示作品の多くの未発表作となる。

鋤田は、福岡県直方市生まれ。日本写真映像専門学校卒業後、棚橋紫水に師事。大広、デルタモンドを経て、1970年からフリーとなる。70年代のはじめに時代の最先端の若者文化や音楽に惹かれニューヨークやロンドンに撮影に出かける。1972年夏、ロンドンでT・レックスのマーク・ボランやデヴィッド・ボウイと出会い、彼らを撮影。その後、多くのミュージシャンを世界中で撮り続ける。彼は被写体となったそロック・アイコンたちや、彼らの楽曲とともに、活気ある20世紀の時代の気分と雰囲気づくりにビジュアル面から関わってきた。いまでは彼のポートレート写真のアート性は特に海外で高く評価されており、2021年には彼のキャリアを回顧するフォトブック「SUKITA : ETERNITY」(ACC Art Books / 玄光社 ) が世界同時出版。また2010年代からは欧米各国で数多くの美術館展が開催されており、2025年にはスペイン・バルセロナのFotoNostrum で「Bowie X Sukita」展が開催されている。

しかし、ロック・アイコンたちのポートレートは鋤田の膨大な作品群の一部にしか過ぎない。彼はキャリアを通して、ファッション、広告、映画関係に取り組む一方で、ドキュメント、ストリート、風景、静物など様々なタイプのパーソナル・ワークにも取り組んできた。戦後の50~60年代の初期作品では、戦後混乱期の地元福岡のストリート・シーンや長崎の原爆被爆者、原子力空母入港反対デモなどの社会問題をパーソナルな視点でモノクロ写真でドキュメントしている。それらには「プロヴォ―ク」の写真家たちと同様の戦後日本の政治、社会、文化の混乱へのアンビバレントな感情が見られる。

Jazz #3, 1969 ⓒ Sukita

一方で60~80年代の初期ファッション写真では、広告の枠にとらわれない自由な発想の作品を制作。特に1969年のメンズ・ブランド「JAZZ」のファッション写真はよく知られている。これは、彼がシュールレアリスム画家ルネ・マグリットの絵画作品に触発されて制作した作品。当時の日本は女性ファッションが花盛り、メンズは超マイナー分野だった。逆にそれが鋤田に幸いして、表現に数多くの制限があるファッション写真で写真家に多くの自由裁量が与えられたのだ。つまりそれらはファッションの仕事の写真なのだが、鋤田の自己表現の作品でもあるのだ。それらのシュールなビジュアルは70年代初めにデヴィッド・ボウイを魅了し、二人の40年にも及び信頼関係を構築した原点となる。そして後にアルバム「Heroes」のジャケット写真につながっていく。本展では初期作品の中から、この鋤田のあまり知られていない未発表を含むシュールでカラフルなファッション写真を紹介する。70年代、海外で“東洋の神秘”と称賛されるなど注目されたスーパーモデルの山口小夜子のイメージも含まれる。

David Bowie, 2002 ⓒ Sukita

また本展では、鋤田作品の代名詞となるデヴィッド・ボウイ、マーク・ボランら20世紀のロック・アイコンたちのポートレートを展示する。ギャラリーとしては、それらもミュージシャンの表情とファッションで当時の時代性が反映された、広義のファッション写真だと考えている。デヴィッド・ボウイの2点は、ギャラリーでの未取り扱い作品で、今回初めてエディション付きファインアート作品として販売される。モノクロ作品は、最近発売されたボウイの2002年から2016年の歩みをまとめあげた豪華13枚組CDボックス・セット『I Can’t Give Everything Away (2002-2016)』のジャケット写真に採用された2002年撮影の渋いイメージ。もう1点は1973年撮影の”ジギー・スターダスト”ライブの眩いカラー作品となる。ちなみに、海外では愛する人へのクリスマスプレゼントに写真作品を送るという素晴らしい習慣があるという。鋤田作品はボウイ好きの人への贈り物に選ばれることもよくあるらしい。毎年、秋ごろになると海外から鋤田事務所に問い合わせがあるという。今年は今回の写真展開催があるので、久しぶりにボウイ作品の新作が発表されたということだ。モノクロの方はCDジャケットのカヴァーだけにコレクター人気が盛り上がりそうだ。

Vivienne, 1974 ⓒ Sukita

本展の展示作品数は、ファッションとロック・アイコンズを合わせて約30点を予定。また、鋤田作品を使った鋤田アーカイブス公認のオフィシャルグッズ(Tシャツ・トートバッグ)の販売も行う予定。こちらは東京では初お目見えとなる。先般の博多展では、グッズは大人気で一部商品は完売して追加制作したという。ただし、今回の写真展の限定品のグッズではありません、ご注意ください。

鋤田はキャリアを回顧する写真集「SUKITA : ETERNITY」(2021年)の刊行以来、膨大な作品アーカイブスの本格的な調査を開始している。今回の初期ファッション写真の展示はアーカイブスの調査結果を紹介する写真展の一環になり、2021年開催の「SUKITA : Rare & Unseen」展に続く第2弾となる。調査作業は現在も進行中で、鋤田事務所によると、ファッション系は忘れ去られていた未発表イメージがかなり残っているという。嬉しいことに今年で87歳の鋤田巨匠はファッション関連アーカイブスの調査に積極的だという。今後、未発表のファッション写真展パート2も開催されると思う。どうか楽しみにしていてほしい!

“SUKITA : Photographs from Early Fashion to Rock Icons”
2025年10月29日 (水)~2026年2月15日 (日)
水曜~日曜、 : 1 PM~ : 6 PM
月曜火曜は休廊、年末年始休廊:12月24日~1月9日、 入場無料
ブリッツ・ギャラリー