2026年春シーズンのニューヨークのモダン/現代アート系オークションは、5月中旬に開催された。今シーズンの最高額は、5月14 日にサザビーズで行われた“Robert Mnuchin: Collector at Heart Evening Auction”に出品された、マーク・ロスコ(Mark Rothko)の“Brown and Blacks in Reds, 1957”。Robert Mnuchin コレクションから出品されたトップロットで、8578万ドル(約132.95億円)で落札されている。

写真系作品が出品されたオークションの名称は各業者によりことなり、サザビーズは、“Contemporary Day”、クリスティーズは、“20th Century Evening, Marian’s Richters and 21st Century Evening, Post-War and Contemporary Art Day, and Breaking Ground”、フリップスは、“Modern and Contemporary Art Evening and Afternoon Sessions”となる。

今シーズンの写真系最高額落札は、クリスティーズに出品されたゲルハルト・リヒターの有名作“Strip, 2012″だった。これは、210 x 230 cmサイズのデジタル・プリント(digital print on paper between Alu-Dibond and perspex <Diasec>, in two parts)の1点もの作品、予想落札価格80~120万ドルのところ、176.53万ドル(約2.73億円)で落札された。本作が厳密に写真作品に分類されるかは様々な意見があると思うが、彼の手作業による絵画(oil on canvas)などとは区別してここでは写真系とした。ちなみに彼の、ろうそくを描いた代表作の絵画“Kerze (Candle)”は、おなじくクリスティーズ“Marian’s Richters & 21st Century Evening Sale”で、桁違いの3513.5万ドル(約54.4億円)で落札されている。

同じくクリスティーズに出品されたロシア構成主義の主要人物アレクサンドル・ロトチェンコの“Maquette for ‘War of the Future’, 1930”が次点だった。50.8 x 34.9 cmサイズのフォトコラージュ(photomontage, collage and gouache on black paper)のマケット作品。ロット資料では、同作を”アーティストがアメリカ近代の象徴を取り込み再解釈。超高層ビルは進歩、資本、技術的成果の象徴でありながら、支配と破壊のより大きな機械の一部として再構築されている。建築、航空、兵器の融合を通じて、ロドチェンコは民間空間と軍事空間の境界を崩壊させ、現代文明の成果が権力と統制のシステムと密接に結びつく未来を示唆している”と解説している。落札予想価格45~65万ドルのところ、152.4万ドル(約2.36億円)で落札された。

続くのはフリップスでの最高額のバーバラ・クルーガー“Untitled (My face is your fortune),1982”。189.5 x 123.5 cmサイズ、エディション/アーティスト・プルーフが共に1点の銀塩作品(gelatin silver print)。落札予想価格60~80万のところ、103.2万ドル(約1.59億円)で落札された。ちなみに現存するもう1点はシンシナティー美術館(Cincinnati Art Museum, Cincinnati, Ohio)に収蔵されているとのこと。

クリスティーズに出品されたシンディー・シャーマンの初期作も落札予想価格を大きく上回って落札されている。“Untitled Film Still #48、1979”は、サイズ20.3 x 25.4 cm、エディション10の銀塩作品(gelatin silver print)。落札予想価格25~35万ドルのところ、60.96万ドル(約9448万円)で落札された。彼女の初期作品の人気の高さが改めて強く印象付けられた。
今シーズンのモダン/現代アート系オークションに出品された、評価が5万ドル以上の高価格帯の写真関連作品の落札率は100%で、上位の高額落札作品は軒並み落札予想価格の上限越えだった。中東情勢の不安定さやインフレ懸念など、社会・経済状況の先行きに不透明さはあるものの、高額カテゴリーの写真分野の市場は好調が継続しているといえるだろう。
一方で低価格帯の写真作品に対する需要はあまり盛り上がっていない。4月のニューヨークの大手業者によるファインアート写真オークションの後には、米国/欧州で中小業者による低価格帯中心のオークションが開催された。Ragoニューヨーク、Lempertzケルン、Aderパリ、OstLichtウィーンなどの結果をみるに、1万ドル以下の低価格帯の20世紀写真の市場が苦戦している印象だった。
(為替 1ドル/155円換算)
