2023-1-23
SOTH, Alec (1969-)
アレック・ソス(1969-)は米国ミネアポリス出身の写真家です。米国中のロード・トリップを通じて、各地の特徴的な人々と風景を、主に8X10"の大判カメラで撮影しています。彼は熱心な旅行家として知られています。ミネソタで取り組んでいた"From Here To There"プロジェクトから展開して、ミシシッピ川流域を3年以上かけて何回も旅し、出合った人々、室内、風景を8x10"の大判カメラとカラー・ネガで撮影します。ソスは、時に見逃されているようなアメリカの風景をパーソナルな視点で、詩的にドキュメント。アメリカの伝統的な大河から呼び起こされる、希望、恐れ、欲望、悔恨などを表現しています。この作品は、2003年にキャリア初のフォトブック"Sleeping by the Mississippi"として自費出版され、2004年には「Steidl」社から一般向けに刊行されています。同作は、アメリカのロード・トリップ写真の元祖であるウォーカー・エバンスの"American Photographs" や、ロバート・フランクの"The Americans"を踏襲しているパーソナルで詩的な写真旅行記として写真界で注目されます。
この本がきっかけで、ホイットニー・ビエンナーレ2004に参加。展覧会ポスターに彼の写真"Charles"が採用されたことで一躍有名になります。その後、写真集が「Steidl」社から出版されています。2008年以来、マグナム・フォトの正会員として活躍しています。
2作目ではカナダのオンタリオ州とアメリカのニューヨーク州とを分ける国境に位置する世界三大瀑布の一つ "ナイアガラの滝" をテーマに選んでいます。2006年に初版がドイツの「Steidl」社より刊行。その後、英国の「MACK」より復刻されています。前作と同様、主題に自然を選びながら、その雄大さや驚異というより、むしろそこに集まる人々の欲求や願望といった人間の内面が色濃く写し出されています。二年間に渡り滝のアメリカ側とカナダ側双方から8x10の大判カメラで撮影した写真には、新婚夫婦や全裸の恋人たち、モーテルの駐車場、質屋で売られている結婚指輪などが収められており、どれも緻密に組み立てられ細かなディテールまでもが美しく描写されています。
2010年には、ミネアポリスのウォーカー・アート・センターで過去15年間に撮影された代表作品を網羅した初の本格的回顧展「From Here to There: Alec Soth’s America」を開催しています。2015年には、米国の社会生活をテーマにした「Songbook」と、大規模な米国の4つのプロジェクトを回顧する「Gathered Leaves」をともにMACKから出版。2019年にはプライベート空間での親密な出会いが表現されたポートレートとその周りのイメージを表現した"I Know How Furiously Your Heart Is Beating"を発表しています。本作タイトルは、アメリカの現代詩人ウォーレス・スティーヴンズ(Wallace Stevens)の短い詩"THE GRAY ROOM”の一節から引用。写真での親密さの叙情的表現の限界を探求することがテーマになっています。
ソスの作品はニューヨークのSean KellyやサンフランシスコFraenkelなどのギャラリーなどで取り扱われています。"I Know How Furiously Your Heart Is Beating"シリーズは約14000ドルから販売されています。オークションでの取引実績はまだあまりありません。
2022年6月、日本初の美術館展「Alec Soth Gathered Leaves」が神奈川県立近代美術館 葉山で開催されました。