2023-1-20

  

ジャック=アンリ・ラルティーグ

LARTIGUE, Jacques-Henri (1894-1986)

天才的アマチュア写真家として知られるラルティーグは1894年6月13日、フランスのパリ郊外の裕福な家庭に生まれます。 8歳の時に父親からカメラを与えられ、彼は当時は貴重だったカメラに魅了されます。 日常生活を撮影した写真日記をつけ始め、アルバムを制作し、それを生涯続けました。

ラルティーグの興味はベルエポック時代の裕福な家族や友人達がゲームやレジャーを楽しむ喜びの表情を捉えることでした。 同時に若い彼はスピードと動きに魅了され、自動車レース、飛行機、グライダー、スポーツイベント、 ジャンプする人などを盛んに撮影しています。またアール・ヌーボー最盛期の流行ファッションをスナップショットしたイメージなどは ファッション写真としてみても一級品の作品です。 いずれもパーソナルな視点でとらえられてアート作品として、 また当時の風俗や雰囲気を記録した貴重な名作として高く評価されています。

今でこそ写真家として有名なラルティーグですが、写真はあくまでも趣味でした。彼は写真のどんな流派や芸術運動にも 影響されずに、生涯自分の好きなイメージを直感で撮り続けました。 彼は自らを画家と名乗っていました。パリのアカデミー・ジュリアンで絵画を学んでおり、 1920年代から30年代にかけて絵画作品を数々の展覧会に出品しています。彼の活動の中心はその後もずっと絵画でした。

1960年代の中頃まで、彼は写真家として全く無名でした。1963年にニューヨーク近代美術館 で初個展が開かれ、ライフ誌に特集が組まれてから脚光を浴びるようになります。 ベルエポック時代のノスタルジーを伝える自由な表現がアメリカで高く評価されました。 その後、1966年に“家族のアルバム”が世界出版され知名度が上がり、1970年にリチャード・アベドンが 写真集“世紀の日記(Diary of a century)”を 編集して世界的に有名になりました。

1975年にパリ国立装飾美術館でフランス初の回顧展が開催、1979年には全生涯の写真をフランス政府に寄贈しています。 1986年に92歳で亡くなるまでになんと16万枚以上の写真が 撮影され、14,317ページにも及ぶ写真アルバムが制作されたといわれています。 現在はフランス人写真家としてあのカルチェ=ブレッソンと並ぶ名声を得ています。まさに