2023-1-20

  

ベレニス・アボット

ABBOTT, Berenice (1898-1991)

ベレニス・アボットは1898年オハイオ州スプリングフィールド生まれです。コロンビア大学でジャーナリズムを学んだ後、ニューヨーク、パリ、ベルリン で絵画、彫刻、写真を学びました。1923年にはパリでマン・レイのアシスタントになり写真を学んでいます。その後、自分自身の写真スタジオをオープンし、 パリに集うアバンギャルド・アーティストのポートレートを撮影するとともに個展も開催し、写真家としての地位を確立します。
1927年には晩年のアジェに会い、その写真に魅了され、彼のプリントと乾板を購入し、世界に紹介することに尽力しています。 1929年、短期間のつもりでニューヨークに戻った彼女は高層ビルが立ち並び、古い町並みが壊されていく都市の変化に驚愕します。そしてニューヨークを撮影することを決心し 8年の欧州滞在から帰国します。
アボットは工業化が進み急速に変りゆく1930年代のニューヨークに魅せられ、 摩天楼、古いビルや鉄橋が作り出す幾何学的な光景やそこに住む人々の生活や表情を8X10の大型ビューカメラ(1932年以降)で 記録し続けました。アジェが消えゆく19世紀のパリを撮影したのと同じ視線でアボットは変化するニューヨークを撮影したのです。 1935年から1939年までは恐慌による失業対策のアート・プログラムで ニューヨーク市立美術館の経済的援助を受けて撮影しています。その一連の仕事は写真集“変りゆくニューヨーク”にまとめられています。 彼女の作品はパリ時代の“ポートレート”、“ニューヨーク・シティー”の他に、アメリカの地方の撮影を行なった“アメリカン・シーン”、 自身でカメラ器材を改良し、目にみえないミクロワールドの美を撮影した“サイエンス”シリーズ があります。 写真撮影の他にニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチで写真講座を開設し20年以上の間、写真教育に携わっています。その間フランス政府から芸術功労賞を受賞、 アメリカ芸術院会員にも選出されています。
彼女の作品はニューヨーク市立美術館をはじめ、世界中の美術館でコレクションされています。 オークションでも頻繁に取引され、 特に“ニューヨーク・シティー”シリーズが高い人気を誇っています。