2023-1-20

  

ダイアン・アーバス

ARBUS, Diane (1923-1971)

現代写真においてポートレート写真の意味を変革したことで知られる 伝説の写真家ダイアン・アーバス。 彼女はニューヨークの裕福なユダヤ人中流階級に生まれます。 18歳の若さで結婚し、夫のアランとともに写真に取り組み始めます。 戦後、夫婦でコマーシャル、ファッション写真家としてキャリアを開始し、 やがて、ヴォーグ誌やグラマー誌で活躍するようになります。

1940年代にベレニス・アボットのクラス、1954年にアレクセイ・ブロドビッチのデザイン・ラボラトリーに参加しウィジー、ルイス・フォアー、ロバート・フランクの写真に 触れています。 1955~1957年にリゼット・モデルに学び、彼女の優れた視点が評価され 作家活動を行うことをすすめられます。彼女は勇気づけられ、 視点をより被写体に近づけてニューヨークのストリートを撮影しています。 1950年代後半には作家として自己表現をより探求するためにコマーシャル の仕事を辞めます。結局、アランとは別居後の1969年に離婚しています。

1960年に“エスクァイア”誌に発表されたフォト・エッセイをかわきりに、“ハーパース・バザー”誌、“ロンドン・サンデータイムズ・マガジン” などに、次々と作品を発表し、徐々に評価を受けるようになります。 彼女の雑誌の仕事は死後編集された“Magazine Work”Aperture 1984にまとめられています。

1962年には35ミリから当時はスタジオ用と考えられていたローライフレックスを使用しロケ先で撮影するようになります。 1963年と1966年にグッゲンハイム奨学金を受け、米国全土を撮影旅行しています。 1967年にはニューヨーク近代美術館で開催された “ニュードキュメンツ”展(ジョン・シャーカフスキー企画) にリー・フリードランダー、ゲイリー・ウイノグランドとともに選出されて評価を高めています。 その後1960年代の約10年の期間で主要作品を制作しています。

彼女の主題は性倒錯者、小人、巨人、精神病院の収容者、などの人々を扱ったものが多く、それらを被写体の日常生活の中でとらえています。 また公園に集う人々、ヌーディスト、覆面舞踏会の参加者など普通の人間の中に潜む奇異なライフスタイル習慣や性格をも倒錯者と同様に暴き出そうとしてい ます。 彼女の写真の特徴はグロテスクな被写体を追求することと誤解されますが、現実を可能な限りそのままに表現しようとする冷徹な姿勢にあるのです。 被写体はどれもカメラに対して自分たちをさらけ出そうとしているかに見えますが、彼女自身のパーソナリティー、モデルに正面なポーズをさせる スタイル、正面からの直接のストロボを使用するライティングなどがその冷酷な被写体の演出に役立っています。彼女の直接的なアプローチは、1920年代にドイツで活躍したアウグスト・ザンダーの影響とも言われています。 また、被写体が自身をどのように見ているかに対して強い関心を払っており、自分の持つイメージと他者の持つ自分のイメージの違いを意識して 撮影していたことも作品の特徴といわれています。

1971年7月26日の自殺と、翌年秋にニューヨーク近代美術館で開催された回顧展で彼女は写真史で伝説化されます。 その後世界中の美術館やギャラリーで作品が展示され、写真表現に多大な影響を与えています。 生前には写真集がなかったアーバスですが、 1972年に刊行された“Diane Arbus : An Aperture Mnograph"は25万部以上も販売されました。