圧倒的なリアリティーが支配する世界
ファインアート写真は何を表現するのか(2)
オマージュ作品

アメリカとイスラエルが2月28日、イランに対して大規模な戦闘作戦を実施した。このような現実社会が世界中で常時激動しており、未来予想が極めて困難な時代では、アーティストが多くの人が共感する作品提示は極めて難しいといえるだろう。また世の中の多様化、複雑化が進行する中で、作品のヒント発見までにも従来以上の長い暗黙知の養成期間が必要になる。創作を続けてもすぐに結果は出ないので、ブランド価値が未構築の学生、若手、新人がキャリアを継続するのは極めて困難な環境なのだ。またもともと私たちは社会生活を送る以上、様々な認知バイアスや社会/文化的刷り込みの影響を受け、思い込みにとらわれやすい。表現を行う人は自己が起点となって作品創作を始める場合が多い、どうしても思い込みがアイデンティティーと重なり強化されがちだ。特に経験や学習量が少ない人はその傾向が強くなる。そうなると非認知スキルを養成する重要性を感じなくなり、創作の自由度が失われてしまう。柔軟な思考ができる人は自らを客観視する術を持っている。しかし痛々しいのがエゴの押し付けのような創作に陥ってしまう人だ。そのような人は他人を自我の延長線上にしかとらえられない。ギャラリーやキュレーターが、作品の見立てやアドバイスを試みても聞く耳を持たないのだ。思い込みにとらわれている自分に気付かないので、永遠に成長ができない悲劇的な状況に陥ってしまう。

今回は、このような現代アート的創作に厳しい環境の中、アーティストの創作アプローチのひとつを提案する。まずは、自らが作品のアイデア、コンセプトやテーマ性を見つけるのではなく、既存作品のオマージュ、もしくは本歌取りを行う方法を提案したい。最初から好きで尊敬する写真家/アーティストのポートフォリオの持つ作品テーマやアイデアなどを意識、そのルールや見立てを意識して写真を撮る行為になる。

さてオマージュはフランス語の「hammage」が語源。英語では「homage」と表記。好きな写真家のスタイル/作品アイデアを取り入れる創作になる。芸術や文学において、尊敬する作家や作品に影響を受けて、似たような作品を創作する事を指す用語で、しばしば「リスペクト」(尊敬、敬意)と同義に用いられる。(参考 Wikipedia) 単純に元の作品をそのまま流用するのではなく、尊敬・賞賛の意味を込めて、独自の手法で表現される。オマージュやパロディは一つの芸術スタイルとして確立されているのだ。実際のところ、創作自体は過去の先人たちの作品の要素をベースとして、アーティストが新たな組み合わせの発見や、突然変異を起こして生まれるもの。もともと無意識の中で起こるオマージュ的な要素を持つのだ。また写真史やアート史とのつながりの提示は、過去の作品と現代の作品への影響を可視化するので、両者にオマージュ的要素の関係性を発見するのと同じような意味になる。

よく盗作と混同されるが、「パクリ」とは他の作品やアイデアを盗用し、利益のために自分の創作として提示する行為で、著作権の侵害となる。この判断は、主に第三者により行われるので、作家本人はオマージュのつもりでも、他人が見るとパクリだと受け取られてしまう可能性もある。

写真表現では、方法論やテーマ性など、様々なオマージュ作品がある。また日本には先行作品への敬意を前提にする古来の和歌の伝統技法である本歌取りがあり、これは西洋のオマージュに近いものといえる。杉本博司は写真技法を「本歌取り」のアプリーチを取り入れて、創作の幅を大きく広げている。最近では、松濤美術館で2023年秋に「杉本博司 本歌取り 東下り」が開催されている。

Aaron Siskind (1903 – 1991)

実際にどのような写真表現での可能性があるのだろうか。まず抽象表現主義の絵画に触発されて写真で作品制作を行ったアーロン・シスキン(1903-1991)をとり上げる。抽象表現主義は、1940年代後半に米国で起こった美術界のムーブメント。抽象表現を行った代表作家には、ジャクソン・ポロック、バーネット・ニューマン、マーク・ロスコ、ロバート・マザウェルなどがいる。シスキンは、テーマがないこと自体をテーマにしている写真家。写真で絵を描いたともいわれる。ストリートの壁面などを絶妙なフレーミングとクローズアップで抽象的に撮影。しかし当時の写真界では理解されず、抽象表現主義の画家が最初に評価した。シスキンの70年代の作品をまとめた写真集「Places」(Light Gallery1976年刊)には、作品タイトルがなく、撮影場所と撮影地の制作番号のみが記載。抽象表現主義絵画とシスキンの写真とは、カラーとモノクロとの違いがあるだけだ。絵画との比較参考例として、ロバート・マザウェル(Robert Motherwell, 1915 – 1991) の《Elegy to the Spanish Republic No. 110》(1971年)を挙げておく。

Robert Motherwell, 《Elegy to the Spanish Republic No. 110》、1971年

この流れで90年代からカラー写真で抽象的表現に挑戦してきたのがテリ・ワイフェンバックだ。彼女はもともと抽象画を描く画家だった。写真家に転向して、眩い太陽が照った野外での風景写真で画面上の複数のフォーカスを利用し、ボケを積極的に取り入れてカラーによる抽象的世界の表現に挑戦している。 

Terri Weifenbach

ドイツのベルント&ヒラ・ベッヒャーは、グリッド状に提示されるタイポロジー(類型学)作品で、アートとしてのドキュメント写真の可能性を開拓。これは考古学や考現学などにおいて、物質をその特質・特性によって分類し、その結果を考察すること共通性や差異を明確にして、対象の理解を深める手法。「テーマ」よりも方法論(typology)へのオマージュ作品だといえるだろう。二人は59年から、給水塔、冷却塔、溶鉱炉、車庫、鉱山の発掘塔などドイツ近代産業の名残が残る、戦前の建築物をともに撮影し、「無名の彫刻」と命名。それらの写真を比較対照し機能種別に組み合わせたタイポロジー(類型学)的作品により、過去を内在した現在を指し示そうとしたのだ。

Bernd & Hilla Becher Gravel Plants 1988–2001

さらに、彼らのタイポロジー、ドキュメント、コンセプチュアル・アートの要素を併せ持った写真作品は、20年代ドイツで発生した徹底的な客観描写を掲げて絵画から写真を自由化した「新即物主義」のアルベルト・レンゲル・パッチュやアウグスト・ザンダーなどの延長上にあるオマージュ作品とも認識できるのだ。

Cindy Sherman, Untitled Film Stills

シンディー・シャーマンの初期シリーズ「Untitled Film Stills」もオマージュ的作品。1950–60年代のB級映画スチル写真の手法を取り入れ、当時の偏見に満ちたステレオタイプの女性像を可視化している。またジェフ・ウォール、グレゴリー・クリュードソンなど写真で表現する現代アート系アーティストの作品も創作ヒントにオマージュ的要素が見られる。

しかし、オマージュ的作品への取り組みには、本当に自分が尊敬、敬愛するアーティスト/写真家との出会いが必要になる。そして作品文脈の的確な理解の上にオマージュ作品が生まれる土壌が作られる。そこに行きつくまでには、膨大な時間と、関連フォトブックなどの資料収集などの金銭的負担、美術館/ギャラリーでの実物の作品鑑賞などの実経験の積み重ねが求められる。現代アート系作品と同様に、タイパ、コスパはあまり良くない。特に学生や若手/新人にはかなり敷居が高いと思われる。そこで、次に比較的手軽に取り組みが可能な定型ファインアート写真の可能性を提案したい。
(ファインアート写真は何を表現するのか(3)に続く)

圧倒的なリアリティーが支配する世界
ファインアート写真は何を表現するのか(1)

21世紀のファインアート写真では、従来の自己表現の背景にある作者の意図よりも、作品自体の社会や時代への問いかけが重視される。それは、私たちが普段は意識しない社会に横たわる、様々な前提、認知、偏見、思い込みなどを露呈させ、可視化するもの。当たり前になっている価値観や構造を組み直すような作品だ。そして作者と見る側とのコミュニケーションが機能する仕組みとして、アイデア、コンセプト、テーマが求められる。アイデア(意図)は、作品制作の基盤となる考え方。コンセプト(概念)は、アイデアを具体化するための土台。テーマ(問題点)は、社会、文化、政治などの表現分野のことだと理解すればよいだろう。それらを通して見る側は作品からストーリーを読みとり、何らかの意味を生み出すのだ。
しかし、アート作品により何らかの新しい視点が社会に展示され、それが機能するのは平時の時だ。いまは地球規模の大きなテーマがあらゆるところで顕在化している社会の激動期だ。すぐに思いつくだけでも、世界的な戦争の勃発、気候変動、脱炭素化、SDG’s、感染症、自由主義経済/グローバル化の揺れ戻し、所得/地域格差の拡大、民主主義の危機、インフレ懸念、過剰債務問題、ワクチン格差、中国の不動産バブル崩壊などが挙げられるだろう。これらの現実の前では、個人レベルでの作品の問いかけは些細なことのようにさえ感じてしまう。いま世の中では、アートがなくても誰もが容易に意識できる大きなテーマだらけなのだ。このような圧倒的な強度のリアリティーを持つ現実を前に、多くの個人は生き残りに必死で、アートを愛でるどころではないのだ。ファインアート市場でブランドが確立した人の作品に人気が集中するのは、このような状況が反映されているからではないか。

アーティストにとって、多くの人が共感するような作品の提示は極めて難しい環境だといえるだろう。また世の中の多様化、複雑化が進行する中で、新たな作品のヒントを見つけ出すためにも従来以上の長い経験と暗黙知の養成期間が必要になるだろう。いまの環境では、創作を続けてもすぐに結果は出ないので、ブランドが構築されていない、学生、若手、新人が作品作りを継続するのは極めて困難なのだ。ファインアート写真に携わる一人として、新たな才能が育たないことによる市場の将来の先細りを懸念しないわけにはいかない。そこで、写真家/アーティストが写真でファインアート作品を制作する従来とは違うアプローチはないか考えてみた。

私が提案したいのは、自分の外側に広がる、変動や不安定が当たり前の社会的、文化的な事柄への視線を持つ作品ではなく、より本源的な人間の存在に向いた作品への取り組みだ。人間は空蝉(うつせみ)のような空虚な存在と言われるが、それは幻想のように実体のない世界に生きる事実を私たちに気付かせてくれる作品になる。私はそれこそがすべてのアーティストが表現を行う究極の動機だと考えている。現代アート的表現の王道である、感動を起点に発見された新たな視点を提示するような作品作りはライフワークとして時間をかけて取り組んでもらいたい。そしていま取り組み可能な、2つの創作アプローチを提案したい。最初から既存の作品の文脈を用意し、撮影者はそれを意識したうえで創作を行う方法だ。

まず「オマージュ作品/本歌取り」。好きなアーティスト/写真家のスタイル/作品アイデアを取り入れる方法になる。
そして「定型ファインアート写真」。これもオマージュ作品の一種になる。最初に既存作品から見立てられた文脈ありきで、それを意識して、その枠の中で写真を撮る行為の提案となる。ビジュアルの定型創作のアプローチは数多くあるが、私はその中で「定型ファインアート風景写真」を推したい。詳しくは次回以降で解説していく予定だ。もともとは経験が浅い学生向けのファインアート写真制作取り組みアプローチとして考えたものだが、創作に行き詰っている人にも役に立つと思う。

(2)につづく

鋤田正義 写真展の見どころ
AIが生成できないファッション写真

ブリッツ・ギャラリーでは、鋤田正義の初期ファッション作品と有名ミュージシャンのポートレートを紹介する「SUKITA : Photographs from Early Fashion to Rock Icons」展を開催中。本展で展示されているのは、ファインアートに成りうるファッション写真。現在主流の洋服の情報を提供する目的で制作される、美しいだけのイメージとは異なる。写真家が自らの身体で感じ取った撮影時の世の中の無意識、つまり当時の時代の気分や雰囲気、都市の空気などが反映された写真なのだ。それらには写真家がその時、その場所で受けた感動が詰まっており、そのメッセージを通して見る側とのコミュニケーションが発生する可能性がある。その先に、もし写真からストーリーが立ち上がってくれば、見る側にとって意味ある写真作品となる。ファインアート写真としてのコレクションの対象に成りうるのだ。

鋤田は70年代初めから若者文化の最前線の地にあこがれて、ロンドンやニューヨークに旅立っている。60~70年代といえば反抗と自由、そして退廃と解放の緊張が世の中に横たわる時代だった。特に当時のロンドンは活気に満ちていた。50~60年代の新しい若者文化が開花した、スウィンギング・ロンドン直後の熱量がまだ溢れていた時代だった。またエキゾティシズムがもてはやされており、歌舞伎の上演などもあり、ジャポニスムが再注目されていた。

今回の展示作品は、そのような当時の世相が見事に反映されている。モデルの山口小夜子が山本寛斎デザインの洋服を着た作品3点展示されているが、それらはエキゾティシズムが反映されたファッション写真の典型例だろう。日本人モデルの起用により当時の身体感覚が強く作品に表現されている点にも注目したい。「Motion Blur series」では、眩い色彩とモデルの動きで当時のサイケデリック・ムーブメントの世相を見事に取り入れている。
そして鋤田は、ミュージシャンも時代の気分づくりに欠かせない象徴的な存在だととらえていた。彼にとっては、特にボウイのポートレートは、時代性が反映された広義のファッション写真なのだと理解したい。

なぜ鋤田のファッション写真が私たちの目に魅力的に映るのだろうか?
いまはAIがどんな画像も生成してくれる。たとえば。60年代風、70年代風のファッション写真も簡単に生成される。しかし、それらは各時代の平均的な面白みのない画像でしかない。AIは写真家が感じ取った時代性を写真に反映させ、再現はできない。だから私たちは実際にその時代に生きた写真家の生の写真に魅了されるのだろう。それらには、各時代の人々の持つ、身体感覚、価値観、社会的緊張、欲望、あこがれや夢が反映されている。鋤田は実際にその時代に生きていたが、AIは生きていない、また肉体を持たないAIは身体性も表現できない。いまアート界は生成的・ネットワーク的世界観を持つ作品が趨勢を強めている。このような時代だからこそ、AIには代替できない、時代の気分が濃厚に刻まれたファッション/ポートレート写真、そのなかでも特に手作業で個別に制作された銀塩写真はますますコレクターに求められるようになると考えている。ちなみに、どの時代のファッション写真の市場での人気が一番高くなるかをAIに質問したところ、「1960〜70年代」と「1990年代」とのことだった。都市の空気が写真に一番刻まれていて、社会の変化とファッションが密接に連動していたからという、珍しくあまり違和感のない回答だった。

鋤田はいま過去のファッション写真のアーカイヴを本格的に見直している。今回セレクションされた作品はほとんどがスタジオでの撮影だった。私が興味あるのは、スタジオから飛び出してストリートで撮影された鋤田のファッション写真の発見だ。彼は当時英国のファッション写真にストリートやドキュメントの撮影を導入して新風を巻き起こした、デヴィッド・ベイリーやダフィーの作品を見ているはずだ。間違いなく、自らのファッション写真で当時最新のアプローチを取り入れていたと思う。彼がボウイを京都で撮影した1980年の一連の写真は極めて有名だ。これらこそがまさに背景の時代性を取り込んだストリート系のファッション写真だといえるだろう。今後のアーカイヴ調査の進展に期待したい。
Photographs ©SUKITA

(お知らせ)
好評につき写真展の会期が2月22日(日)まで延長されました!
2月11日の祝日も通常営業します。
ぜひ鋤田の濃厚な時代性を感じるファッション作品をご高覧ください。

“SUKITA : Photographs from Early Fashion to Rock Icons”
2026年2月22日 (日)まで
水曜~日曜、 1:00  PM~ 6:00  PM
月曜火曜は休廊、 入場無料
ブリッツ・ギャラリー

2025年写真作品
オークション高額落札ベスト10
マン・レイが現代アート系を抑え第1位!

2025年の写真作品オークション最高額落札は、マン・レイの20世紀シュルレアリスムの象徴といわれる「Noire et blanche (Black and White), 1926」だった。6月にサザビーズ・ロンドンで開催された“Modern & Contemporary Evening, Contemporary Day Auctions”で、2,114,000 ポンドで落札されている。作品サイズは、17.5X 22.8cm、制作年は1926年で1935年までにプリントされた初期ゼラチン・シルバー・プリント。落札予想価格は1,500,000 – 2,000,000ポンド、落札額は1ポンド/1.37ドル換算で、2,896,180ドル、1ポンド/201.25円で換算すると約4.25億円となる。本作は、1926年5月にパリ版『ヴォーグ』に初掲載、1920年代半ばのパリでのマン・レイとキキの創造的なコラボの象徴だと言われている。

マン・レイは決して失敗を恐れない実験的な精神を持つアーティストで、作品制作では常に即興的なアプローチを行っていた。本作の現存するプリントは、意図的な異なるトリミング、多種多様な写真用紙の使用、そして異なるレベルのレタッチにより、厳密には2つとして同じものは存在しないと言われている。ほとんどの流通作品は、修正が施されたプリントから作成されたインターネガティブから制作されている。しかし今回のプリントには、特徴的な緊密なトリミングと修正の痕跡から、専門家はマン・レイのカンパーニュ・プルミエール通りの暗室で、オリジナルのガラスプレートネガティブから直接制作された初期作の可能性が高いと評価している。

2位以降はランキング常連の現代アート系アーティスト、シンディー・シャーマン、リチャード・プリンス、バーバラ・クルーガーが入っている。

3位には、3月18日にフィリップス・ニューヨークで 開催されたウィリアム・エグルストンによるダイ・トランスファー作品43ロットの単独オークション「Color Vision: Masterworks by William Eggleston from Guy Stricherz and Irene Malli」の出品作が入った。同セールの目玉だった、1965年~1974年までに撮影されたエグルストンの代表作「Los Alamos」のポートフォリオ。オリジナルの75点のセットに、2組の各13点からなるダイ・トランスファー作品の「Cousins」と「Lost and Found」が追加され、プリント総数は101点におよんだ。オリジナル・ポートフォリオを含む包括的なシリーズのオークション出品は初めてとのこと。落札予想価格は、200~300万ドルのところ、 1,875,000ドル(約2.82億円)で落札。これはエグルストン作品の単一ロットの新記録となる。高額落札上位20にはエグルストン作品が4点入っている、彼の市場での人気が確固なものになっている事実が強く印象付けられた。その他、20世紀写真では、エル・リシツキーの珍しいヴィンテージのフォトモンタージュが6位、ヘルムート・ニュートンが7位だった。

参考までに総合順位の上位20位の円貨合計額を比較すると2025年は約29.9億円で2024年の27.7億円から微増だった。1位マン・レイの落札金額£2,114,000 (約4.25億円)も、2024年1位のリチャード・プリンスの£2,097,000 (約4.14億円)とほぼ同じだった。全般的にサプライズの落札のない平均的な1年だったといえるだろう。また2024年のオークションハウスの実績面では、上位10位のうちトップ8位までがクリスティーズが独占した。2025年は他の大手業者も健闘し、クリスティーズがトップのマン・レイをはじめ4件、サザビーズが5件、フリップスが1件の落札実績だった。

2025年の年間平均TTS 為替レートは、対ドル150.71円、対ユーロ170.50円、対英ポンド201.25円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)で、ほぼ2024年と同じレベルだった。しかし2026年になり、高市早苗首相が早期に衆院を解散するとの観測をきっかけにした積極財政リスクへの懸念からさらに円安が進行している。日本人コレクターにとっては引き続き厳しい為替水準が続く気配だ。

2025年オークション高額落札ランキング

1.マン・レイ「Noire et blanche, 1926/1935」

サザビーズ・ロンドン(Sotheby’s London)
“Modern & Contemporary Evening, Contemporary Day Auctions”
2025年6月24、25日
£2,114,000 (約4.25億円)

2.シンディー・シャーマン「Untitled Film Still #13, 1978」

クリスティーズ・ニューヨーク(Christie’s NY)
“20th Century Evening, 21st Century Evening, and Post-War & Contemporary Art Day Sales”
2025年11月17、19、20日
$2,271,000.(約3.42億円)

3.ウィリアム・エグルストン「Los Alamos (101 prints), 1965-1974/2001-2007」

フリップス・ニューヨーク(Phillips NY)
“Color Vision: Masterworks by William Eggleston from Guy Stricherz and Irene Malli”
2025年3月10日
$1,875,000.(約2.82 億円)

4.リチャード・プリンス「Untitled (Cowboy), 2016」

クリスティーズ・ニューヨーク(Christie’s NY)
“Leonard & Louise Riggio: Collected Works, 21st Century Evening Sale, and Post-War and Contemporary Art Day Sale”
2025年5月12,14,15日
$1,502,000.(約2.26 億円)

5.リチャード・プリンス「Untitled (Cowboy), 2000」

サザビーズ・ニューヨーク (Sotheby’s NY)
“Now and Contemporary Evening and Contemporary Day Auction”
2025年5月15、16日
$1,392,000.(約2.09 億円)

6.エル・リシツキー「Self-Portrait (The Constructor), 1924」

サザビーズ・ロンドン (Sotheby’s London)
“Modern & Contemporary Evening, Contemporary Day Auctions”
2025年6月24、25日
£889,000 (約1.78億円)

7.ヘルムート・ニュートン「Walking Women, Paris, 1981」

サザビーズ・ニューヨーク (Sotheby’s NY)
“Now and Contemporary Evening and Contemporary Day Auctions”
2025年11月18、19日
$1,000,000.(約1.5 億円)

8.リチャード・プリンス「Untitled (Cowboy), 2000」

クリスティーズ・ニューヨーク (Christie’s NY)
“20th Century Evening, 21st Century Evening, and Post-War & Contemporary Art Day Sales”
2025年11月17、19。、20日
$889,000.(約1.33億円)

9.バーバラ・クルーガー「Untitled (Love for Sale), 1989」

サザビーズ・ニューヨーク (Sotheby’s NY)
“Now and Contemporary Evening and Contemporary Day Auctions”
2025年5月15、16日
$787,900.(約1.18 億円)

10.バーバラ・クルーガー「Untitled (You Are Not Yourself), 1983」

クリスティーズ・ニューヨーク (Christie’s NY)
“Leonard & Louise Riggio: Collected Works, 21st Century Evening Sale, and Post-War and Contemporary Art Day Sale”
2025年5月12,14,15日
$756,000.(約1.13億円)

2025年/年間平均円貨TTS 為替レート、
対ドル150.71円、対ユーロ170.50円、対英ポンド201.25円
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

現代アート系/20世紀写真作品のいま
シンディー・シャーマン作品が200万ドル越えで落札

2025年秋シーズン定例のニューヨークでのモダン/現代アート系オークションは、11月中旬に開催された。マスコミで話題になったのが、11月18日にサザビーズで行われた“ Leonard A. Lauder, Collector | Evening Auction”に出品された、グルタフ・クリムト(Gustav Klimt)の“Bildnis Elisabeth Lederer (Portrait of Elisabeth Lederer)”。本作は今年亡くなった米化粧品大手「エスティローダー」名誉会長だったレナード・ローダー氏のコレクションで、美術品の歴代高額2位の2億3636万ドル(約354.5億円)で落札された。ちなみに歴代1位は、2017年11月にクリスティーズ・ニューヨークで落札されたレオナルド・ダ・ヴィンチの“サルバトール・ムンディ”で、落札額は4億5030万ドルだった。最近は、高額評価の写真作品も一連のこの分野のオークションに出品されるのが当たり前になっている。ここでは、同カテゴリーに出品された写真作品の市場動向を紹介する。

Sotheby’s NY, Gustav Klimt “Bildnis Elisabeth Lederer (Portrait of Elisabeth Lederer)”

オークションの名称は各業者により異なり、サザビーズは“Now & Contemporary Evening and Contemporary Day Auctions”、クリスティーズは“20th Century Evening, 21st Century Evening, and Post-War & Contemporary Art Day Sales”、フィリップスは“Modern & Contemporary Art Day Sale, Morning and Afternoon Sessions”となる。写真作品の注目作は、クリスティーズに出品されたマン・レイのヴィンテージ作品の“Sade, Pas Terminé, 1933”。落札予想価格は180万~200万ドルだったが不落札だった。今シーズンの最高額落札は、クリスティーズに出品されたシンディー・シャーマンの代表作“Untitled Film Still #13、1978″だった。これは、1978年に製作されたエディション3の、40 x 30 インチ(101.6 x 76.2 cm.)の大判作品。落札予想価格50~70万ドルのところ、227.1万ドル(約3.46億円)で落札された。彼女の初期作品の人気の高さが改めて強く印象付けられた。

Christie’s NY, Cindy Sherman “Untitled Film Still #13、1978″

続くのはサザビーズに出品されたヘルムート・ニュートンの3点の組写真 “Walking Women, Paris、1981”。各135.3 x 113cmの大判サイズ、エディション3のヴィンテージ作品。落札予想価格120~180万ドルのところ、控えめの100万ドル(約1.5億円)で落札された。本作は、2015年4月にフィリップス・ニューヨークで90.5万ドルで落札された作品。当時の落札予想価格は70~90万ドルだった。10年所有して業者手数料などの経費を考えるとかなり厳しいリターンだったと思われる。本作は絵柄が代表作のアザーカットで、特に有名ではない。やはり有名アーティストでも、コレクターは高額でも代表的な作品を求める傾向が強いことが入札に影響しているのだろう。

Sotheby’s NY, Helmut Newton, “Walking Women, Paris、1981”

フィリップスの最高額はアンドレアス・グルスキーのスニーカーのディスプレイを作品化した“Untitled V, 1997”だった。184.5 x 442 cmサイズ、エディション4/6。落札予想価格20~30万のところ、38.7万ドル(約5805円)で落札された。

今シーズンのモダン/現代アート系オークションに出品された、評価が5万ドル以上の高価格帯の写真関連作品の落札率は約78%で、好調な結果だったといえるだろう。

Phillips NY, Andreas Grusky, “Untitled V, 1997”

以前に結果を紹介した、10月のニューヨークの大手業者によるファインアート写真オークションの後には、欧州で中小業者による低価格帯中心のオークションが開催された。Aderパリ、Millonパリ、Leitz Galleryウィーン、OstLichtウィーンなどの結果をみるに、1万ドル以下の低価格帯の20世紀写真の市場が苦戦している印象だ。4つのオークションで、低価格帯の作品は1142点出品され、567点が落札。不落札率は約50.36%で、約半分の作品に買い手が見つからなかった。落札作品もほとんどが落札予想価格の範囲内かそれ以下で、上限を超えることはほとんどなかった。

写真市場黎明期の1980~1990年代には、当時の新しい世代のコレクターがパッションや写真の表層の好みで、まだ割安だったアナログの銀塩写真を買っていた。その世代はいまや高齢化してコレクション整理を考え始めていると思われる。中小業者が取り扱う低価格帯作品の流通量は明らかに増加している。しかし、それに続くデジタルや現代アートに慣れ親しんでいるミレニアル世代/Z世代は、前世代と比べてコレクションの特徴や傾向が変化しているといわれている。パッションだけでなく、作品の背景にあるストーリ性や資産価値も重視するようになってきたのだ。中高価格帯の20世紀写真はそのような要素を持っている場合が多い。しかし低価格帯の20世紀写真の多くでは、文脈が語られるのは稀なのだ。それゆえに伝統工芸品の写真ヴァージョン的な評価を受けるようになっており、新世代のコレクターはあまり興味を示さないのだ。供給が増加しているに需要は伸びていないわけで、結果的に落札率も低迷しているのだと思われる。

また今回の20世紀写真の結果はユーロ圏の市場動向となる。欧州の低調な景気もアート市場に影響を与えている可能性が高いだろう。有名アーティストの代表作品に人気が集中する傾向が今後も続くのか、市場を注視していきたい。

(為替 1ドル/150円換算)

鋤田 正義 写真展
60~80年代のファッション写真の見どころ!
@ブリッツ・ギャラリー

ブリッツ・ギャラリーは、鋤田正義の初期ファッション作品とミュージシャンのポートレートを紹介する「SUKITA : Photographs from Early Fashion to Rock Icons」展を開催中。

本展の見どころで注目して欲しいのは、鋤田のファッション写真が、モデルのスタイリング、ディレクション、ヘアメイクだけでなく、写真のライティング、構図、色合い、デザインなど、ほとんど彼自身の意図とディレクションにより行われていること。そしてその結果生まれた写真を特徴づけているのが、現実離れして、奇抜な、極めてシュールな雰囲気に仕上がった独創的なビジュアルなのだ。
一般的な日本のファッション写真は、商品である洋服の情報提供を目的として制作される。そして洋服デザイナー、アート・ディレクター、編集者の指示で撮影されるのが一般的になっている。業界で優秀だといわれる写真家は、それらの関係者の意向を的確に忖度したビジュアルづくりがうまい人なのだ。残念ながら写真家はカメラ・オペレーターで、そこにはクリエイティブな要素は全くない。当然、それらの写真に表現上の面白さは全くないのだ。

しかし鋤田のファッション写真の場合、彼は洋服自体をメインに撮影していない。たぶん彼は当時の活気ある気分や雰囲気は、シュールで自由なスタイリングや色彩を通して表現できると感じ、それを写真を通して伝えようとしたのだろう。ファッション写真を通して写真家がパーソナルに感じた時代性を表現しようとしたわけで、まさに欧米のファインアートに成りうるファッション写真と同じ構図で制作されているのだ。写真に撮影者の感動が落とし込まれているから、同じような時代感覚を持つ人たちとのコミュニケーションが起き、彼らを魅了するのだ。

そしてその鋤田の感性はまさにデヴィッド・ボウイの持っていた”現状維持バイアスにとらわれないためにシュールな感性を愛でる”という世界観と重なるのだ。70年代前半の英国では、歌舞伎の上演や浮世絵の展示があり、西洋と全く異質な日本文化の存在が紹介されていた。ボウイは間違いなく、それらを奇抜でシュール存在に感じたと思われる。その影響は、その後のステージ衣装、メイク、スタイリング、パフォーマンスに反映されていく。特に山本寛斎が1973年に制作した舞台衣装「Tokyo Pop」は、幾何学的ラインと鮮烈な色彩を持ち、歌舞伎衣装の大胆さや誇張されたシルエットが反映されている。そのような問題意識を持ったボウイの前にまだ30歳代の若い無名の日本人写真家鋤田が現れたのだ。彼は自分が求めていた日本文化のエッセンスを鋤田の写真の中に見出したのだと思われる。二人の出会いは本当に絶妙なタイミングに起きたといえるだろう。
今回展示している一連の鋤田の初期ファッション写真を見るに、その一部だけを見て鋤田のオリジナリティーを見抜いたボウイの目利きは本当に凄いと思う。その後、約40年にわたって続く二人の信頼関係の原点のファッション写真の紹介が、本展開催の趣旨であり、一番の見どころなのだ。

作品展示に際して、当時の情報を鋤田本人に確認してみた。しかしかなり昔の撮影だったので本人の記憶はあまりはっきりしていなかった。想像するに、これだけ自由に撮影できたのは、多くがファッション雑誌等のエディトリアル・ページに掲載された作品だったからだと思われる。
“1981-ryuko-09”は、雑誌の流行通信に掲載された作品とのこと。同誌はデザイナー森英恵のPR誌からスタートした歴史あるファッション誌。当時の流行通信は、撮影時に写真家にかなり自由裁量を与えていたと思われる。あの横尾忠則がアート・ディレクターだったり、なんと横尾本人、藤原信也、浅井慎平もファッション写真を撮影しているのだ。

鋤田はミュージシャン坂本龍一の1981年のアルバム“左うでの夢”のジャケット写真を手掛けている。本展の展示作品 “1981-ryuko-09”も顔と左腕が白く塗られており、たぶん坂本作品のオマージュではないかと思われる。
また、案内状にも使用した、カラフルでアシッド感あふれる動きのある“Motion Blur series“はカメラ毎日に掲載された記録があるそうだ。あるコレクターから、雑誌プレイボーイに掲載されたのを見た記憶があると指摘があった。カメラ雑誌に撮りおろしはあまりないので、その可能性はあるようだ。

また当時の元祖日本人スーパーモデル山口小夜子が被写体の作品も3点展示されている。このファッションは山本寛斎デザインとのこと。またこちらは別のコレクターから資生堂の広報誌「花椿」に掲載された作品ではないかとの指摘があった。これらの情報の真偽は鋤田本人に確認中だ。もし当時の資料を持っている人がいたらぜひ提供して欲しい。ギャラリーとしても、作品展示をきっかけとして初期ファッション写真の撮影に関わる情報アーカイブを充実させたいと考えている。

鋤田作品の魅力は、写真と対峙することで見る側に様々なストーリーや想像が生まれること。それらの物語を通して、ファッション写真に意味が紡ぎだされるからこそ、多くのコレクターを魅了し続けるのだと思う。年内の展示は12月21日(日)まで、ぜひご覧ください!

“SUKITA : Photographs from Early Fashion to Rock Icons”
2025年10月29日 (水)~2026年2月15日 (日)
水曜~日曜、 1:00  PM~ 6:00  PM
月曜火曜は休廊、
年末年始休廊:12月24日~1月9日、
*年内の最終営業日は12月21日(日)となります。
入場無料
ブリッツ・ギャラリー

ギャラリー・アーティストの近況
Terri Weifenbach
Duffy
Steve Schapiro

テリ・ワイフェンバック(Terri Weifenbach)
 パリで美術館展開催

テリ・ワイフェンバッハの展覧会「Jardins parisiens(パリの庭園)」がパリのユージェーヌ・ドラクロワ国立美術館で開催中です。同館は、19世紀フランスのロマン主義を代表する画家ユージェン・ドラクロワが1857年から1863年までアトリエ兼自宅にしていた邸宅が美術館として公開されています。今回の企画は、『シティ・ブック パリ』のためにルイ・ヴィトンが制作しています。
同展では、ワイフェンバックの眩いカラー写真シリーズを展示。彼女の写真は、フランスの首都を象徴する緑の空間の美しさと静けさを、詩的で親密な視点で捉えており、観る者を都市中心部への視覚的な散歩へと誘っています。また同館には来館者が写真の鑑賞体験後に散策できる庭園があり、まさに最適の展示会場だといえるでしょう。
この展覧会は、画家ドラクロワの作品と対話する現代作家に焦点を当てる、同館の「Regards Croisés(交差する視線)」プロジェクトの一環として開催されています。

「画家と庭園の間には、人間の痕跡、野生の花や雑種の花、都市の庭園に適応した鳥など、さまざまな側面を持つ風景があります。定義と構成としての色。ラインとボケを提案します。セシリー・ブラウン、ドラクロワのエネルギー、ある特定のヴュイヤールの色、テオドール・ルソーの自然なパレット、ジョアン・ミッチェルの抽象画を思い浮かべています。私はこの宇宙にいて、庭で写真を撮りながら、3次元を2次元に変換する方法を考えています。私は自分のニーズに基づいて、自分が感じたことを記録します。絶え間なく続くものとともに存在する、儚さについて思いを馳せています。」
テリ・ワイフェンバック

「Terri Weifenbach : Jardins parisiens」
 ウジェーヌ・ドラクロワ国立美術館(Musée National Eugène Delacroix)
 会期:2025年11月6日~2026年1月4日

ダフィ ー(Duffy)
 デヴィッド・ボウイ「アラジン・セイン」ジャケット写真が高額落札!

Brian Duffy, original dye transfer print for Aladdin Sane album cover, 1973.
Courtesy of Bonhams.
Photo Duffy © Duffy Archive & The David Bowie Archive ™

1973年リリースのデヴィッド・ボウイの「アラジン・セイン」のアルバム・ジャケット写真は「ポップのモナリザ」として知られる、英国人写真家ブライアン・ダフィー(1933–2010)撮影の超有名作品です。11月5日にロンドンのボナムズ(Bonhams)で開催された「Mona Lisa of Pop Property From The Duffy Archive」オンライン・オークションで、本作のヴィンテージ・ダイ・トランスファーによるオリジナル作品が381,400ポンド(497,088ドル)で落札されました。1ポンド201円で換算すると約7666万円です。

本作のボウイのメイクはピエール・ラ・ロシェ(Pierre La Roche)が担当、ダフィーがHasselblad 500C 6X6  カメラで撮影したオリジナルのカラースライド(color transparency)に、フィリップ・キャッスル(Philip Castle)がエアブラシで加工したもの。キャッスルはボウイの肩に「Water mark」を描き、さらにダフィーの指示のもと、ボウイの胴体の上の白い部分を強調し、まつげを長くしています。作品サイズは32X40cm、ダフィーのサインと日付が書かれています。

この落札価格は、アルバムカバーとして、また写真家ブライアン・ダフィーにとっても、オークション新記録となりました。これまでのアルバムカバーの最高額は、レッド・ツェッペリンの同名デビューアルバム(1969年)のジャケットを飾った英国人デザイナーのジョージ・ハーディー(George Hardie)による1937年のヒンデンブルク号事故を題材としたアートワーク。2020年にクリスティーズで32.5万ドル(約3億5000万円)で落札されています。

Courtesy of Bonhams. Photo Duffy © Duffy Archive & The David Bowie Archive ™

また同オークションには、アラジン・セインのオリジナルコンタクトシート 2 枚も19,200 ポンド(25,040 ドル/約385万円)で、撮影時にボウイが座ったスツール(丸椅子 )が2,816ポンド(3,680ドル/約56.6万円)で落札されています。

・スティーブ・シャピロ (Steve Schapiro)
 ドキュメンタリー映画「Being Everywhere」が公開

スティーブ・シャピロ(Steve Schapiro, 1934 – 2022)の新作ドキュメンタリー映画「Being Everywhere」が今秋に米国で公開されます。シャピロは、1934年ニューヨーク市ブルックリン生まれ。アンリ・カルティエ=ブレッソンに憧れて写真家を志し、ウィリアム・ユージン・スミスから写真技術や取り組み姿勢を学びます。1961年にフリーランスの写真家として活動を開始。1960年代の激動するアメリカの政治、文化、社会のドキュメントに取り組みます。また、ロバート・F・ケネディの大統領選挙キャンペーンに同行し、公民権運動の重要な瞬間を撮影。彼の写真は、「LIFE」、「Vanity Fair」、「Sports Illustrated」、「Newsweek」、「TIME」、「Paris Match」などの雑誌に掲載されています。

1974年、シャピロはロサンゼルスでデヴィッド・ボウイと濃厚なフォトセッションを敢行。二人のコラボレーションの成果は、アルバム「Station to Station(1976年)」、「Low(1977年)」、「Nothing has changed(2014年)」のジャケットや、雑誌「People」、「Rolling Stone」のカバーに生かされています。有名人ポートレートや映画関連の写真でも知られおり、特にフランシス・フォード・コッポラ監督の「The Godfather(1972年)」や、マーティン・スコセッシ監督の「Taxi Driver(1976年)」のスチール写真が有名です。シャピロの写真は、パーソナルな視点でアメリカ現代史の重要な瞬間をドキュメントしていると高く評価されています。

この映画は脚本家兼映画監督モーラ・スミス(Maura Smith)が手がけており、シャピロの数えきれないほどの写真作品を通してその生涯を解き明かしています。故シャピロは映画の中で自身の作品アーカイブに囲まれながら、「どんな被写体でも挙げてくれれば、おそらく私はその人を撮影しただろう」と語っています。

映画のニューヨーク市プレミアは11月14日、その後はシカゴ、ロスアンゼルスで上映される予定です。なおニューヨーク・タイムズ紙がこの冬見るべき65本の映画の一つとして本作品をセレクト。ドキュメンタリー作品の数少ない選出作品です。日本での公開は未定です。

ブリッツ・ギャラリーでは、2023年10月に『SUKITA X SCHAPIRO PHOTOGRAPHS』(鋤田 正義 / スティーブ・シャピロ 写真展)を開催しています。

2025年秋ニューヨーク
写真オークション・レヴュー
ダイアン・アーバスの名作が高額落札

2025年秋の大手3業者によるニューヨーク定例アート写真オークション。今回は10月上旬から下旬にかけて、複数委託者によるライブとオンラインの合計3件が開催された。

フィリップスは、10月8日にアーヴィング・ペン財団所蔵作品によるアーヴィング・ペン単独オークション“Visual Language: The Art of Irving Penn”(70点)と、9日に複数委託者による“Photographs”(212点)、クリスティーズは、10日に複数委託の“Photographs(Online)”(209点)、サザビーズは、21日にニューヨーク近代美術館から出品された20世紀写真のコレクション“Selections from The Museum of Modern Art: c. 1900–1990(Online)”、そして新しい試みとして高額評価のプリントと写真の混成オークションの“Prints & Photographs Part I””(17点)、と中低価格帯の写真を取り扱う“Photographs Part II”(101点)を開催した。

さてオークション結果だが、3社合計で654点が出品され、516点が落札。全体の落札率は約78.9%と春の約78.7%とほぼ同じレベルだった。
ちなみに2024年秋は出品737点で落札率75.6%、2024年春は出品766点で落札率73.5%だった。出品数の減少傾向は、大手3社が高額評価作品の取り扱いを重視し、中小業者に低価格帯作品の取り扱いがシフトしているからだと思われる。
総売り上げは約1581万ドル(約23.39億円)、同時期の昨秋の1466万ドル、今春の約1009万ドルより増加。落札作品1点の平均落札金額は23,261ドルで、今春の約21,691ドルより増加している。
過去10回のオークションの落札額平均と比較したグラフでは、総売上高は増加に転じている。

業者別では、売り上げ1位は久しぶりに約844万ドルを達成したフィリップス(落札率76%)だった。アーヴィング・ペンの単独セールの影響が大きかった。2位は約377万ドルのサザビース(落札率78%)、3位は約359万ドルでクリスティーズ(落札率83%)という結果だった。

年間ベースでドルの売上を見比べると、2025年ニューヨーク・セールの年間売り上げは約2591万ドル(落札率約78.8%)で前年比微減だった。ちなみに2024年は約2626万ドル(落札率約74.5%)、2023年は約1865万ドル(落札率約73.7%)、2022年は約2029万ドル(落札率67.4%)だった。
2025年の売り上げ結果は高額落札が相次いだ今秋フィリップスで開催されたアーヴィング・ペンの単独セールがかなり貢献している。同セール単体で66点が落札され、486万ドルを売り上げている。これがなければ、総売り上げ、落札率、平均落札金額ともに、ほぼ最近のトレンドに沿った結果となる。

Sotheby’s NY, Diane Arbus, “Identical Twins, Roselle, N. J., 1966”

今シーズンの最高額落札は、サザビーズの新機軸のオークション“Prints & Photographs Part I””に出品されたダイアン・アーバスの名作“Identical Twins, Roselle, N. J., 1966”だった。シート68.6X68.6cm、イメージ37.5×37.5cmという大きなサイズの作品、サインは娘のドーン・アーバスによる。一流ギャラリーの取り扱い、美術館の展示などの記録がある来歴が良い作品。落札予想価格50~70万ドルのところ69.85万ドル(約1.03億円)で落札された。

Phillips NY, Irving Penn, “Ginkgo Leaves, New York, 1990/1992”

第2位は、フィリップスによるアーヴィング・ペンの単独オークション“Visual Language: The Art of Irving Penn”に出品された“Ginkgo Leaves, New York, 1990/1992”。1991年刊の写真集“Passage: A Work Record”のカバー・イメージ。イメージサイズ57.5X47cmのダイ・トランスファー・プリント。落札予想価格20~30万のところ、56.76万ドル(約8400万円)で落札、ペン作品のオークション最高落札額記録となる。

Christies NY, Ansel Adams, “Aspens, Northern New Mexico, 1958/c1968”

高額落札第3位は、クリスティーズ“Photographs(Online)”に出品されたアンセル・アダムスの“Aspens, Northern New Mexico, 1958/c1968”。イメージサイズ77.5 x 97 cmの大判銀塩作品。落札予想価格30~50万ドルのところ33.02万ドル(約4886万円)で落札されている。

さて今回サザビーズが新しい試みとして高額評価のプリント(版画)と写真の混成オークションの“Prints & Photographs Part I”を開催した。その内容と結果を詳しく見てみよう。アンディー・ウォーホール、ロイ・リヒテンシュタインなどのプリント作品とともに、ダイアン・アーバス、エドワード・ウェストンなどの写真作品が出品。全体55点のうち17点が写真関連だった。

出品作家は、ダイアン・アーバス、マン・レイ、ロバート・メイプルソープ、アルバート・ワトソン、ヘルムート・ニュートン、ラースロー・モホリ=ナジ、マヌエル・アルバレス・ブラボ、エティエンヌ=ジュール・マレー、エドワード・ウェストン、ゴードン・パークス、ザネレ・ムホリ、杉本博司と、幅広い分野と年代におよぶ。落札予想価格も下限額が10万ドル越えが7点、10万ドル以下が10点で、特に高額価格帯だけの出品ではなかった。それにプリント作品が加わるので、全体的に方向性や、まとまりは感じられなかった。現在の写真がアート界で置かれている中途半端な状況が反映されているともいえるかもしれない。このようなアプローチで写真をカテゴリー分類するのではなく、むしろ一つの表現方法ととらえて、評価額を考慮したカテゴリー分類の方がしっくりくると感じた。

Sotheby’s NY, Edward Weston, “Nude on Sand, Oceano,1936”

落札結果は17点のうち11点が落札された(落札率64%)。高額評価のロバート・メイプルソープ、ヘルムート・ニュートン、杉本博司(Sea of Buddha 004, 005, 006)は不落札だった。最高額落札は前記のダイアン・アーバスの名作“Identical Twins, Roselle, N. J., 1966”の69.85万ドル、続いたのはエドワード・ウェストンの貴重な初期プリント“Nude on Sand, Oceano,1936”で、落札予想価格25~35万ドルのところ30.48万ドル(約4510万円)で落札されている。

Sotheby’s NY, Roy Lichtenstein “Water Lilies with Japanese Bridge, from the Water Lilies series (Corlett 265; RLCR 4167)”

ちなみにプリント作品の最高額はロイ・リキテンスタイン(1923-1997)の、“Water Lilies with Japanese Bridge, from the Water Lilies series (Corlett 265; RLCR 4167)”。約211X147cmサイズのエディション23の作品。落札予想価格40~60万ドルのところ76.2万ドル(約1.12億円)で落札されている。

(1ドル/148 円で換算)

鋤田正義 60~80年代のファッション写真/
ロック系ポートレーツを展示!
@ブリッツ・ギャラリー

ブリッツ・ギャラリーは、鋤田正義(1938-)の初期ファッション作品とロック・ミュージシャンのポートレートを紹介する「SUKITA : Photographs from Early Fashion to Rock Icons」展を10月29日から開催する。展示作品の多くの未発表作となる。

鋤田は、福岡県直方市生まれ。日本写真映像専門学校卒業後、棚橋紫水に師事。大広、デルタモンドを経て、1970年からフリーとなる。70年代のはじめに時代の最先端の若者文化や音楽に惹かれニューヨークやロンドンに撮影に出かける。1972年夏、ロンドンでT・レックスのマーク・ボランやデヴィッド・ボウイと出会い、彼らを撮影。その後、多くのミュージシャンを世界中で撮り続ける。彼は被写体となったそロック・アイコンたちや、彼らの楽曲とともに、活気ある20世紀の時代の気分と雰囲気づくりにビジュアル面から関わってきた。いまでは彼のポートレート写真のアート性は特に海外で高く評価されており、2021年には彼のキャリアを回顧するフォトブック「SUKITA : ETERNITY」(ACC Art Books / 玄光社 ) が世界同時出版。また2010年代からは欧米各国で数多くの美術館展が開催されており、2025年にはスペイン・バルセロナのFotoNostrum で「Bowie X Sukita」展が開催されている。

しかし、ロック・アイコンたちのポートレートは鋤田の膨大な作品群の一部にしか過ぎない。彼はキャリアを通して、ファッション、広告、映画関係に取り組む一方で、ドキュメント、ストリート、風景、静物など様々なタイプのパーソナル・ワークにも取り組んできた。戦後の50~60年代の初期作品では、戦後混乱期の地元福岡のストリート・シーンや長崎の原爆被爆者、原子力空母入港反対デモなどの社会問題をパーソナルな視点でモノクロ写真でドキュメントしている。それらには「プロヴォ―ク」の写真家たちと同様の戦後日本の政治、社会、文化の混乱へのアンビバレントな感情が見られる。

Jazz #3, 1969 ⓒ Sukita

一方で60~80年代の初期ファッション写真では、広告の枠にとらわれない自由な発想の作品を制作。特に1969年のメンズ・ブランド「JAZZ」のファッション写真はよく知られている。これは、彼がシュールレアリスム画家ルネ・マグリットの絵画作品に触発されて制作した作品。当時の日本は女性ファッションが花盛り、メンズは超マイナー分野だった。逆にそれが鋤田に幸いして、表現に数多くの制限があるファッション写真で写真家に多くの自由裁量が与えられたのだ。つまりそれらはファッションの仕事の写真なのだが、鋤田の自己表現の作品でもあるのだ。それらのシュールなビジュアルは70年代初めにデヴィッド・ボウイを魅了し、二人の40年にも及び信頼関係を構築した原点となる。そして後にアルバム「Heroes」のジャケット写真につながっていく。本展では初期作品の中から、この鋤田のあまり知られていない未発表を含むシュールでカラフルなファッション写真を紹介する。70年代、海外で“東洋の神秘”と称賛されるなど注目されたスーパーモデルの山口小夜子のイメージも含まれる。

David Bowie, 2002 ⓒ Sukita

また本展では、鋤田作品の代名詞となるデヴィッド・ボウイ、マーク・ボランら20世紀のロック・アイコンたちのポートレートを展示する。ギャラリーとしては、それらもミュージシャンの表情とファッションで当時の時代性が反映された、広義のファッション写真だと考えている。デヴィッド・ボウイの2点は、ギャラリーでの未取り扱い作品で、今回初めてエディション付きファインアート作品として販売される。モノクロ作品は、最近発売されたボウイの2002年から2016年の歩みをまとめあげた豪華13枚組CDボックス・セット『I Can’t Give Everything Away (2002-2016)』のジャケット写真に採用された2002年撮影の渋いイメージ。もう1点は1973年撮影の”ジギー・スターダスト”ライブの眩いカラー作品となる。ちなみに、海外では愛する人へのクリスマスプレゼントに写真作品を送るという素晴らしい習慣があるという。鋤田作品はボウイ好きの人への贈り物に選ばれることもよくあるらしい。毎年、秋ごろになると海外から鋤田事務所に問い合わせがあるという。今年は今回の写真展開催があるので、久しぶりにボウイ作品の新作が発表されたということだ。モノクロの方はCDジャケットのカヴァーだけにコレクター人気が盛り上がりそうだ。

Vivienne, 1974 ⓒ Sukita

本展の展示作品数は、ファッションとロック・アイコンズを合わせて約30点を予定。また、鋤田作品を使った鋤田アーカイブス公認のオフィシャルグッズ(Tシャツ・トートバッグ)の販売も行う予定。こちらは東京では初お目見えとなる。先般の博多展では、グッズは大人気で一部商品は完売して追加制作したという。ただし、今回の写真展の限定品のグッズではありません、ご注意ください。

鋤田はキャリアを回顧する写真集「SUKITA : ETERNITY」(2021年)の刊行以来、膨大な作品アーカイブスの本格的な調査を開始している。今回の初期ファッション写真の展示はアーカイブスの調査結果を紹介する写真展の一環になり、2021年開催の「SUKITA : Rare & Unseen」展に続く第2弾となる。調査作業は現在も進行中で、鋤田事務所によると、ファッション系は忘れ去られていた未発表イメージがかなり残っているという。嬉しいことに今年で87歳の鋤田巨匠はファッション関連アーカイブスの調査に積極的だという。今後、未発表のファッション写真展パート2も開催されると思う。どうか楽しみにしていてほしい!

“SUKITA : Photographs from Early Fashion to Rock Icons”
2025年10月29日 (水)~2026年2月15日 (日)
水曜~日曜、 : 1 PM~ : 6 PM
月曜火曜は休廊、年末年始休廊:12月24日~1月9日、 入場無料
ブリッツ・ギャラリー

2025年秋 New Yorkアート写真
オークション・プレビュー
サザビーズが新カテゴリー
「Prints & Photographs」創出!

Sotheby’s NY「Prints & Photographs Part I」, 2025-Oct-22, Diane Arbus”Identical Twins, Roselle, N. J., 1966″

ニューヨークで定期的に行われているファインアート写真関連作品の大手3業者による秋の定例オークション。今年の大体の開催概要、スケジュールと注目作品の情報をお届けする。

これまで何度も指摘しているように、いま現代アート市場の拡大とデジタル化の進行により「写真」の概念が大きく変化している。従来の19/20世紀写真に加えて、現代アート作品の影響を受けた、21世紀写真、現代アート系写真が市場で混在して取引されている。オークション会社も様々なアプローチで写真のカテゴリー分けを行っている。最近よく見られるのは、高額作品とそれ以外を作品の評価額により選別化する試みだ。また写真をプリント(版画)作品と同じオークションで取り扱うケースも散見されるようになった。今期のオークションでその傾向がより鮮明化してきたのがサザビーズだ。彼らは「Prints & Photographs」というカテゴリーを新設。10月22日開催のパートIではプリントと写真の高額作品11点が出品。その後、写真とプリントの単独オンライン・オークションが、10月14日から23日にかけて「Print Part II」、10月16日から23日にかけて「Photographs Part II」として開催される。以下がサザビーズによるプレスリリースの内容だ。

“「Prints & Photographs Part I」は、版画と写真の巨匠たちによる傑作を称える新たなライブ・オークション・プラットフォームです。2025年10月、主要な季節オークションと同時開催される本オークションでは、古典的な巨匠版画家から現代に影響を与えた現代・現代美術家まで、厳選された作品群を一堂に集めます。ハイライトには、アルブレヒト・デューラー、マン・レイ、ダイアン・アーバス、ロバート・メイプルソープ、ロイ・リキテンスタインらによる版画・写真作品が含まれます。”

同社のオークションでの高額落札候補は、ダイアン・アーバスのフォトブック表紙にもなった代表作“Identical Twins, Roselle, N. J., 1966”。落札予想価格は50万~70万ドル(約7400万~1.03億円)となる。

Christie’s NY 「Photographs Online」,lot27 Ansel Adams “Aspen, Northen New Mexico,1958”

一方、クリスティーズは「Photographs」のオンライン・オークションを9月25日から10月10日まで開催する。幅広いカテゴリーの209点が出品される。高額落札候補は、ロット47のアンセル・アダムス“Aspen, Northen New Mexico,1958”。1968年ごろにプリントされた、77.5X97cm サイズの大判作品、落札予想価格は30万~50万ドル(約4400~7400万円)となる。ちなみに同作は2017年4月6日にクリスティーズNYで開催されたオークションで落札予想価格20万~30万ドルのところ、43.95万ドルで落札されている。

Phillips NY「Photographs」, Diane Arbus, “A Jewish giant at home with his parents in the Bronx, N.Y.,1970”

フィリップスは、10月8日に 20世紀ファッション写真の巨匠アーヴィン・ペンの写真とペインティングの代表作を含む70点の「 Visual Language: The Art of Irving Penn 」を開催。ファッション、ポートレートからスティル・ライフまで、 彼の約70年の多彩な キャリアを回顧するオークションとなる。落札予想価格は、1万ドルから30万ドルのレンジとなる。また10月9日にはライブオークションの「Photographs」を開催する。こちらは幅広いカテゴリーの213点が出品される。高額落札候補は、ダイアン・アーバスのロット119“A Jewish giant at home with his parents in the Bronx, N.Y., 1970”。これはアーバス本人が1970~1971年かけて自らがプリントしたヴィンテージ作品となる。落札予想価格は30万~50万ドル(約4400~7400万円)。続いてはシンディー・シャーマンの“Untitled #470. 2008”で、落札予想価格は20万~30万ドル(約2960~4400万円)となる。

全般的に、大手3社の取り扱い写真作品は、評価1万ドル以下の低価格帯の作品数が少なくなっている印象だ。サザビーズは上記のように高額作品が中心となっている、5000ドル(約74万円)以下の作品は、クリスティーズで209点中44点、フィリップスで213点中45点にとどまっている。低価格帯の写真作品の取り扱いは、Bonhams、Swann、Heritageなど中小のオークション会社とオンライン・オンリーにシフトしていくのだろう。ニューヨーク秋のオークション落札結果の本格的レビュー/分析は今月末にはお届けできると思う。

(1ドル/148 円で換算)