写真でアーティストを目指す人へ 誰からアドバイスをもらうべきか?

ファイン・アート系の写真は、誰かが作品に価値を見出すことで初めて存在する。最初から価値があるのではない。これらはアートの歴史の中で意味付けられ、資産価値が認められる。もっと具体的にいうと、21世紀の現代で、社会的に価値がある(独りよがりでない)メッセ―ジを発していると誰か認めるということ。
それを行うのは、美術館などのキュレーター、評論家、編集者、写真家、ギャラリーのディレクター、ギャラリー・オーナーであるギャラリスト、コレクターなどである。ファイン・アート系を目指すのなら、彼らから価値を認められなければならないのだ。
ただし、なかには単なる作品に対する好み、表層的な意見、感想を述べるだけの人もいるので注意が必要だろう。私は作品に対しての立場上の責任の重さにより、発言者の意見・感想の信頼度が左右されると考える。

一番信頼できるのは、経験豊富なベテラン・コレクターの発言だろう。もし高く評価した場合、自分がその作品を購入する可能性を意味するからだ。お金を出す価値があるかの判断は真剣勝負になる。

ギャラリストの発言も傾聴に値する。高い評価は自分がオーナーのギャラリーでの作品展示や購入の可能性につながるからだ。ディレクターの意見も信頼性はあるものの、最終判断はオーナーに伺わなければならない。どうしても前記の二人よりはやや軽くなる。
ただし、コレクターもギャラリー関係者も独自の方向性や好みを持っている点には注意が必要だ。自分の作品のテイストが彼らと全く違う場合は意見はあまり参考にならない。事前の情報収集が必要だろう。

キュレーターは、美術館クラスの作品を相手にしている場合が多い。一般写真家の作品に対して責任感を持って発言する機会は少ないだろう。欧米のキュレーターは一般人向けのポートフォリオ・レビューには参加しないものだ。

評論家、編集者、写真家は、しがらみが少なく最も自由に発言できる。ただし写真の技術論や幅広い感想になりがちでもある。具体的なアドバイスが欲しいファイン・アート系を目指す人には物足りないかもしれない。しかし、キャリア初期で自分の作品の方向性が見えないアマチュア写真家などには、彼らの様々な視点を持つ意見や感想は参考になるはずだ。写真が趣味で多くの仲間とコミュニケーションを図りたい人にも適切なアドバイスをしてくれる存在だと考える。

写真を評価してもらう時には、まず自分が目指す方向を明確に認識して欲しい。それによって見てもらうべき人がおのずと決まってくる。またどの職種の人でも、経験が長い人の意見の方が信頼できるだろう。単純に判断基準となる、ヴィジュアル、アイデア、コンセプトなどの情報蓄積量が豊富だからだ。ポートフォリオ・レビューなどでレビュアーを選ぶ際はそれらの点に注意するべきだろう。写真撮影やプリント制作が上手くなりたいアマチュアは、経験豊富なプロ写真家がよいだろう。アーティスト志望で責任を持った重い発言を受け止められる人は、作品ポートフォリオの完成度によって、コレクターやギャラリー関係者に見てもらうべきだ。もしあなたが自分の写真の評価やコメントに物足りなさや、違和感を感じているのなら、見せる相手が間違っているのかもしれない。