4-15~22 シンディー・シャーマン、 「Untitled Film still , #9,#16, #19,#22,#26,#33,#57,#58」 B級映画に描かれた多様な女性のステレオタイプのアイデンティティを自分で演じて表現した、1978年から1980年に8X10 ”カメラで製作された、キャリア初期のモノクロの代表シリーズ
5-2,3 アンセル・アダムス、「Clearing Winter Storm, Yosemite National Park, California C.1944」 、「Moon and Half Dome, Yosemitte Vallery, California, 1960」 “ゾーンシステム”という手法による高いプリントのクオリティー確立と芸術性を兼ね備える作品、アナログ時代に写真表現の限界拡大の可能性を追求したと現代でも再評価されている
中国からはチェン・ウェイ作品が展示されている。令和5年度の新規収蔵作品とのことだ。彼のプロフィールには、メインの展示になっている「In the Waves」シリーズは、ダンスクラブで音楽に陶酔する若者を写しだし、彼が作り出すシーンにおいて、今日の中国における社会問題を表現している、と記載されている。 社会問題とは非常に幅広い意味を持つ。それは何なのかに疑問に感じたので、会場にいた本人に通訳を通して質問してみた。 私たちは、クラブは一般の若い世代が集う西洋的な息抜きやストレス発散の場だと感じる。しかし、彼によると中国のクラブ文化は80年代に独自に発展したとのこと。西洋のクラブ文化が中国に輸入されたのではないそうだ。したがって作品制作には西洋文化/民主主義と中国文化/共産主義とは関係性の提示はないそうだ。そして中国でそこに集うのは、一般人ではなくインテリ層だったとのこと。たぶん当時のクラブの若い人たちは中間層以上の社会的に恵まれた人々であり、彼らが日常生活のストレス発散目的で踊りに陶酔したのだろう。会場で展示されている2点の大判写真「In the Waves」のクラブシーンは2013年制作だ。 私は同じ政治思想を持つ国家のキューバを思い出した。米国人写真家マイケル・ドウェックは「Habana Libre(ハバナ・リブレ)」(2011年)で、西洋社会では知られていないキューバのクリエイティブ・クラスという階級の存在を私たちにドキュメントを通して知らせてくれた。キューバの多くの住民はいまでも経済的には非常に貧乏だ。しかしキューバ政府が文化振興に力を入れた結果、アーティスト、作家、俳優、モデル、ミュージシャンたちの一種の特権階級が生まれているとのこと。彼らは裕福ではないが、ファッショナブルな生活を楽しんでおり、そこにも彼らがダンスを楽しんでいるナイトクラブのシーンが撮影されていた。
本展はファインアート写真のコレクションに興味ある人、写真撮影が趣味の人には今年の夏休み必見の写真展だ。 地下1階の展示室では、絵本作家/メディア・アーティストの岩井俊雄の展覧会「いわいとしお X 東京都写真美術家 光と動きの100かいだてのいえー19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ」も開催中。こちらは子供や学生を意識した展示内容になっているので、家族で一緒に訪れても皆が十分に楽しめるだろう。
ドアノー作品には数々のエピソードがあることが知られている。展示しているようにライフ誌1950年6月12日号の「パリの恋人」という企画で発表された1枚の作品で、1986年にポスターになったことで大人気となった。世界中で50万枚以上がポスターに複製されたとのこと。実は写真のモデルだった元女優のフランソワ・ボネが90年代に写真の肖像権料の支払いをドアノーに求めた裁判を起こし、この写真が純粋なドキュメントでなかったことが明らかになった。彼女によると、写真は演出して撮影されたが当時恋人だった二人のキスには偽りがなかったそうだ。実は数々の名作のコンタクトシートを収録した写真集「The Contact Sheet」(編集Steve Crist、2009年
Ammo Books刊)に、本作が収録されている。実際のコンタクトを見ると、ドアノーがカップルを様々な場所で演技させて撮影していることが分かる。
「The Contact Sheet」(2009年 Ammo Books刊)より
本作のエピソードはさらに続く。彼女は裁判では敗れるものの、2005年4月25日にパリArtcurial Briest Pulain le Fuで開催されたオークションで、彼女が所有する同作のオリジナル作品が155,000ユーロ(当時のレート@140、約2千2百万円)、落札予想価格の十倍以上でスイスのコレクターが落札されたのだ。同作は1950年に撮影された数日後にドアノーからプレゼントされた非常に貴重なヴィンテージ・プリントで、裏面にはドアノーのスタンプが押されていた。超人気イメージの来歴が確かな正真正銘のヴィンテージ・プリントだったことが高額落札の理由だった。今回の展示作品は特に記載はないので、年月経過後にプリントされたモダンプリントだと思われる。
デジタル時代になり、IZU PHOTO MUSEUMで開催された「The May Sun」展あたりから、彼女は表現の一部として自由に空間を演出するようになった。今回は本人不在にもかかわらず、彼女の意図がほぼ正確に反映された展示になっていると思う。会場設営の実務を的確に行った実行委員会のチームがとても良い仕事をしたと評価したい。
・ヌード作品の発見 彼はファッション写真家として活躍する以前から、親しい女性たちのパーソナルなヌードとポートレートを撮影していた。死後にモノクロ作品約3000点見つかっている。それらは、モデルとアイデアを出し合って制作された一種のコラボ作品だと評価できるという。その中でも主要な被写体は長年にわたりパートナーだったソームズ・パントリーだった。彼女は様々な役を演じ、二人は様々な実験を行っている。本展ではソームズ・パントリーのセクションで、ストリートでのカラー/モノクロ写真やインクによる絵画など約34点が展示されている。ヌード作品は、70年代に編集者ヘンリー・ウルフにより写真集化の企画があったものの実現しなかった。2018年に、Steidl社から「In My Room」として刊行されている。