2013年春NYアート写真オークション結果 景気回復期待で取引額が増大!

2013年春のニューヨーク・アート写真オークションは、クリスティーズ、ササビーズ、フィリップス(Phillips de Pury & Company)ともに、有力コレクションからの単独オークションをメインとして、それとともに複数委託者のオークションも開催した。結果はおおむね順調で、優れたアート写真に対する需要が強いことを改めて印象付けられた。ちょうど開催期間が、世界最大のアート写真フェアのAIPADフォトグラフィー・ショーと重なった。一部には、フォト・フェアの売り上げに影響が出たという意見も聞かれた。

有力コレクションの優れた来歴を持つ逸品が多かったことから、総売り上げは昨秋と比べ約81%も伸びて約3086万ドル(約30.8憶円)となった。これはほぼリーマンショック前の2007年のレベルとなる。売り上げ高トップは今期もクリスティーズ。開催した二つのオークションともに売り上げ総額は落札予想価格上限合計を超えている。

最近はトップエンド価格帯市場の勢いがやや弱まっている傾向がみられていた。今春、大手オークションハウスはこのセクターにかなりの逸品を投入してきた。結果は、5万ドル以上の高価格帯セクターでの予想落札価格上限の総額をオーバーしたのはクリスティーズだけだった。ここの落札率も約92%~68%とかなりばらつきがあった。価格推移についてはほぼニュートラルな結果だったと言えよう。主要3社全オークションの落札率は約81%。その後に開催されたフォトブックを含む低価格帯作品の出品の多いスワン・オークションズの落札率はずっと下がって66%だった。昨年来ずっと続いている、”高額作品の活況と動きが鈍い低価格帯”という傾向はまだ変わってないようだ。

高額落札は以下の通り。
最高額はクリスティーズの”the deLIGHTed eye, Modernist Masterworks from a Private Collection”に出品されたマン・レイの”Untitled Rayograph, 1922″。もちろん貴重はオリジナルの1点物。本作は最初に雑誌メディアで紹介されたマン・レイのレイヨグラフとのことだ。落札予想価格の3倍を超える、$1,203,750.(約1億2千万円)で落札された。久しぶりの100万ドル越えの作品だ。
同オークションからは高額落札が続き、ポール・ストランドの”Akeley Motion Picture Camera, New York, 1922″は落札予想価格25万~35万ドルのところ、$783,750 (約7837万円)で落札されている。

クリスティーズも複数委託者オークションでは、ロバート・フランクの歴史的写真集「The Americans」の表紙イメージの” Trolley-New Orleans, 1955″が注目された。本作は、1961年にニューヨーク近代美術館でエドワード・スタイケンのキュレーションで開催された、ハリー・キャラハンとの二人展用にフランク自身により制作されたもの。サイズが29X42.4cmと大きいことも作品の評価を高めている。落札予想価格40万~60万ドルのところ、$663,750(約6637万円)で落札されている。

驚きの高値が付いたのがフリップスに出品されたのダイアン・アーバス”Identical Twins Cathleen and Colleen, Roselle, NJ, 1967″。落札予想価格18万~22万ドルを大きく超えて$602,500(約6025万円)で落札。これはアーバス作品のオークションでの最高額だった。

ササビーズで高額落札が期待されていたのがエドワード・ウェストンの”Two Shells, 1927″。本作は珍しいマット系ペーパーにプリントされている上にサインも初期のものだ。
落札予想価格60万~90万ドルのところ、ややがっかりさせられる$533,000(約5330万円)で落札された。
クラシカルなエドワード・ウェストンの高額落札はクリスティーズでも続き、”Nude, 1925″は
$483,750(約4837万円)で落札されている。

次のアート写真市場の関心は、5月開催のロンドン、パリのオークションに移っていく。
(為替レートは1ドル100円で換算)