『フジフイルム・フォトコレクション』展 日本の写真史を飾った写真家の「私の1枚」

富士フイルム株式会社のフィルム事業の規模は2000年がピークで、当時は写真関連事業が営業利益の約60%を占めていたそうだ。それが僅か10年後の2011年には、なんと売り上げに占める比率が僅か1%にも満たなくなったそうだ。ちなみに競合していたコダックは2012年に経営破たんしている。写真の急激なデジタル化を象徴した驚くべき数字の推移だろう。
もはや中身は写真関連企業とはいえない富士フイルム。このたび同社は創立80周年を記念して、日本の写真史を飾る写真家約100名を選び出し各1点を『フジフイルム・フォトコレクション』として収集した。そのコレクションを披露する展示が東京ミッドタウンのフジフイルム スクエアで5日(水)まで開催中だ。2014年2月21日~2014年3月5日には大阪の富士フイルムフォトサロンに巡回する。
プレスリリースによると、「約150年前の幕末に写真術が日本に渡来してから銀塩写真が最盛期を迎えた20世紀の間に活躍し、高い技術と感性で国内外で高く評価を受けた写真家約100名の「この1 枚!」という代表的作品を、優れた技術で新たに制作された高画質の銀塩プリントで後世に残すものです。」とのこと。19世紀から1950年代生まれまでの写真家が選ばれている。
それらは、フェリーチェ・ベアド、下岡蓮杖、上野彦馬、内田九一、福原信三、田淵行男、木村伊兵衛、濱谷浩、土門拳、林忠彦、秋山庄太郎、植田正治、石元泰博、長野重一、芳賀日出男、奈良原一高、東松照明、細江英公、前田真三、操上和美、立木義浩、篠山紀信など。各作家1点だが、歴史を網羅するこれだけの写真家の作品がまとめて鑑賞できる機会はあまりないだろう。

コレクションの監修は写真ディーラーを長年務めている山崎信氏が担当している。写真家の知名度というよりも写真家の作家性が重視されていることが興味深い。商業写真、ファッション写真の分野で活躍した人などを含む、日本の写真史では必ずしも評価されていない人たちも選出されている。
アートとして日本写真の歴史では、いまだに書かれていない分野が数多くある。本コレクション展がきっかけでそれらが再評価されることを願いたい。

同時刊行された約220ページにも及ぶカタログは分厚く非常に豪華。印刷も高品位だし、作品解説、作家情報など、資料も満載されている。将来的に、この本が日本人写真家の作品コレクションにおけるレファレンスになるのではないか。販売価格は2500円と非常にリーズナブル。資料として買っておきたい1冊だ。