女性ファッション写真家の再評価が進行中
美術館展が相次いで開催!

今年の海外美術館で開催された展覧会では、以下のように女性ファッション写真家が非常に多く取り上げられていた。

デボラ・ターバビル(1932-2013)スイス・ローザンヌのエリゼ写真美術館、
シーラ・メッツナー(1939-) 米国ロサンゼルスのゲッティー・センター
エレン・フォン・アンワース(1954-) 米国アトランタのSCAD FASH Museum of Fashion + Film などだ。

美術館展の開催準備には通常は短くても数年以上の時間がかけられる。たぶん上記の展示はコロナ前の時期から企画されていたのだと思われる。ファインアート業界は男性優位社会の傾向が強く、市場で高額落札されるのも男性アーティストが比率が高い事実は広く知られている。生成AIに聞いてみたところ、以下のような回答だった。

「アートの世界において、男性が女性よりも優位であるという認識が広くあります。しかしながら、美術業界における男女比率は、国や地域によって異なります。例えば、米国の18の美術館の常設コレクションに収蔵された作家の男女比は、男性87%、女性13%であることが報告されています。美術品のオークション大手Artnetのベストセラーアーティスト100の中で女性はわずか5人と報告されています。」

世界中で起きている「ジェンダーフリー(固定的な性別による役割分担にとらわれず、男女が平等に能力を生かし自由に活動できること)」の動きがアートの世界でも進行中なのだ。これが男性写真家が圧倒的に優位だったファッション写真の世界でも起きており、女性写真家の再評価が海外の美術館中心に行われているのだろう。写真展の詳細は以下のようになる。

ブリッツ・ギャラリー/1991年の個展の案内状

◎デボラ・ターバビル展 “Deborah Turbeville – Photocollage”
@スイス・ローザンヌ「エリゼ写真美術館(Photo Elysée)」
会期:2023年11月3日~2024年2月25日

デボラ・ターバビル(1932-2013)は、マサチューセッツ州ボストン生まれ。ヴォーグ、ハーパース・バザー、ノヴァ、ニューヨーク・タイムズや、コム・デ・ギャルソン、ギィ・ラロッシュ、シャルル・ジョルダンなどの有名ファッション・ブランドでファッション写真を撮影してきた。日本では1985年に渋谷パルコで開催された「Deborah Turbeville」展、パルコの広告写真で知られている。実はブリッツでも、ギャラリーが広尾あった1991年11月に個展を開催している。

本展は、エリゼ写真美術館と彼女の作品アーカイブを収蔵するMUUSコレクションのコラボレーションにより実現。キュレーションは同館ディレクターのナタリー・エルシュドルファー(Nathalie Herschdorfer)が担当している。
ファッション写真から極めてパーソナルな作品まで、ターバビルの写真表現の探求の過程を紹介し、彼女の作品がメディアにおけるファッションの表現にどのような変化をもたらしたかを探求している。未公開作品のセレクションを公開するほか、手作りのコラージュ作品にも焦点を当て、写真史における彼女の貢献について新たな評価を提供を試みている。

同名のフォトブックもThames & Hudsonから刊行。

“Deborah Turbeville – Photocollage”、Photo Elysée

美術館の公式サイト

フォトブック

◎シーラ・メッツナー展 “Sheila Metzner : From Life”
@米国ロサンゼルス「ゲッティー・センター(GETTY CENTER)」
会期:2023年10月31日~2024年2月18日

シーラ・メッツナーは、1939年ニューヨーク・ブルックリン生まれ。1960年代にドイル・デイン・ベルンバッハ広告代理店(Doyle Dane Bernbach)で初の女性アートディレクターとして活躍。その後、子育てを行いながら写真家キャリアをスタートさせる。1978年、彼女のポートレートがニューヨーク近代美術館で開催された「Mirrors and Windows: American Photography Since 1960」展で注目される。それがきっかけで、ギャラリー展やヴォーグ誌アレクサンダー・リバーマンからの仕事依頼へとキャリアが展開していく。当時のヴォーグ誌はリチャード・アヴェドン、アーヴィング・ペン、デニス・ピールが中心的に仕事を行っていた。その状況下で、メッツナーはヴォーグから安定的に仕事を依頼された最初の女性写真家となる。

彼女は、19世紀フランスで開発されたフレッソン・プリントという版画に近い古典的手法を採用し、1980年代にはクラシックでロマンティックな質感と美を持ったスタイルを確立させる。それらのイメージは 普通のカラー写真にない、柔らかな色味と質感を持っているのが特徴。常に芸術の境界線の拡大を探求するメッツナーの写真美学は、やがてファッション写真から、ファインアート、ポートレート、静物、風景などの分野でも地位を確立していく。写真作品は、メトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館、国際写真センター、J.ポール・ゲッティ美術館、ブルックリン美術館、シカゴ美術館などがコレクション。日本では1992年に大丸ミュージアムで写真展を開催している。

本展は、ファッションと静物の分野で20世紀後半の写真史にその名を刻み、国際的に高く評価されたシーラ・メッツナーの芸術性を称えるもの。彼女のユニークな表現は、ピクトリアリズムとモダニズムの側面を融合させ、写真史の中で傑出しているだけでなく、1980年代の最高のファッション、スタイル、装飾芸術のトレンドと密接に関連する美学を作り上げている。本展では、1960年代のウッドストックでの親密な家族のポートレート、ファッションのエディトリアル、ヌード、神聖な風景など、彼女のライフワークを紹介している。

美術館の公式サイト

フォトブック

◎エレン・フォン・アンワース展
“ELLEN VON UNWERTH: THIS SIDE OF PARADISE”
@米国アトランタ市「SCAD FASH Museum of Fashion + Film」
会期:開催中~2024年1月7日

エレン・フォン・アンワースは、1954年、ドイツ・フランクフルト生まれ。ドイツとフランスでモデルとしてキャリアをスタートし、その後フォトグラファーに転身している。彼女の作風は、ヘルムート・ニュートンやピーター・リンドバークと比べられることが多いが、その挑発的なエロチシズムの中にはロマンチシズムや女性らしさが感じられるのが特徴。また強く、自信に満ちた女性のパラダイムを写真世界に再構築した独自の写真スタイルを確立している。モデル出身だけに特に被写体の表情や感情の引き出し方の巧みさでも有名。孤独でタフな幼少期を過ごしたことから人間力をつけ、どんな人にも心が開けるようになった、と本人は語っている。

数十年にわたるキャリアの中で、シャネル、ディオール、ミュウミュウ、アズディン・アライア、エージェント・プロヴォケーター、ゲス、ジミー・チュウ、フェラガモ、アブソルートなど、数え切れないほどのブランドのキャンペーンを手がけ、地位を確立する。彼女の写真は、ヴォーグ、i-D、インタビュー、エル、ヴァニティー・フェア、グラムール、プレイボーイなどに頻繁に掲載。本展「This Side of Paradise」展のキュレーションは、SCAD FASH美術館のクリエイティブ・ディレクター、ラファエル・ゴメスが担当。

美術館の公式サイト

欧米のファインアート写真の世界では、80年代後半まではファッション写真は作り物のイメージであることから全く評価されていなかった。巨匠のリチャード・アヴェドンやアーヴィング・ペンでもファッション写真の市場評価は低かったのだ。それが英国のヴィクトリア&アルバート美術館などがファッション写真の中に、単に洋服の情報を伝えるだけではなく、言葉にできない時代に横たわる気分や雰囲気が反映されているイメージが混在している事実を発見し、それらに新たなアート性を見出すのだ。その流れにフォトブック出版社やギャラリーが乗って、この分野のコレクターが増加したのだ。4半世紀が経過して、いまやファインアート系ファッション写真はオークション市場で最も人気のあるカテゴリーに成長した。しかし唯一いまだに過小評価されていたのが女性ファッション写真家だった。この分野の写真家は、サラ・ムーンだけではないのだ。

今年の一連の美術館展の開催は、間違いなく女性ファッション写真家の市場に影響を与えると思われる。今後はオークションへの出品も増加し、相場も適正価格になっていくのと思われる。
この流れだと、次はどこかの都市の有名美術館が、リリアン・バスマン(1917-2012)やルイーズ・ダール=ウォルフ(1895-1989)などの女性ファッション写真家を取り上げて、そのアート性を再評価するような展覧会が行われるのではないか。もしかしたらすでに企画は進行中かもしれない。ファッション写真ファンにとって今後の動向がとても楽しみだ。

海外オークション・レビュー 「Madonna x Meisel」
@クリスティーズ

2023年秋のニューヨーク・フォトグラフス・オークションでは、クリスティーズで10月6日行われたスティーブン・マイゼル撮影によるマドンナの写真集「SEX book」からのセール「Madonna x Meisel – The SEX Photographs」が大きな話題になった。1992年刊行のこの写真集はなんと世界中で150万部を販売したという。日本版は同朋舎出版から販売されている。

当時の日本はヘアヌードが解禁された時代だった。マスコミでは時代の歌姫マドンナのスキャンダラスなヘアヌードという話題性で紹介されていた。しかし、実際は超一流ファッション写真家スティーブン・マイゼルとハーパース・バザー誌米国版を刷新したアート・ディレクターのファビアン・バロンを起用した、かなりアート色が強い写真集だった。

同オークションは42点が出品され、落札16点、落札率は38.1%、総売り上げは133.45万ドル(1.97億円)だった。残念ながら26点が不落札という全くの期待外れの結果だった。落札内容もよくなく、買い手がついた作品の多くが落札予想価格の下限以下だった。ほとんどの作品は163.8 x 132.3 x 5.7 cmと巨大サイズ、マイゼルとマドンナの二人のサインが入った1点ものだった。
作品の人気度により落札予想価格は最低5万ドルから最高35万ドルと幅があった。内訳は、5~7万ドルが10点、8~10万ドルが1点、8~12万ドルが11点、10~15万ドルが10点、15~25万ドルが7点、20~30万ドルが1点、25~35万ドルが2点。写真集発売時にプレス用に利用され、幅広く流通したイメージが高額の評価だった。
最高額はロット4の「Madonna, New York, 1992」で、落札予想価格8~12万ドルのところ20.16万ドル(約2983万円)で落札されている。

Christie’s NY, Steven Meisel,「Madonna, New York, 1992」

過去のオークション・データを調べてみると、マイゼル作品のオークションでの出品数は思いのほか少なかった。今回の出品作と同様の大判サイズで、少ないエディションの作品を比べてみると、最高額は、2017年11月2日にフィリップス・ロンドンのULTIMATEオークションに出品された「CK One, New York City、1994」。これは93 x 274.3 cmという横長巨大サイズの1点もの作品が75,000ポンドで落札されている。当時は1ポンド=1.34程度だったで、約100,500ドルだったことになる。

Phillips London, 2017, Steven Meisel,「CK One, New York City、1994」

ほぼ同じサイズでは、やや古くなるがフィリップス・ニューヨークで2012年10月2日に行われたオークションで、「Walking in Paris, Linda Evangelista & Kristen McMenamy, Vogue, October 1992」がある。187 x 147.5 cmサイズの1点もので、86,500ドルで落札されている。同作は、写真集「In Vogue: The Illustrated History of the World’s Most Famous Fashion Magazine」(Rizzoli、2006年刊)の、カヴァーに採用された作品だ。

「In Vogue: The Illustrated History of the World’s Most Famous Fashion Magazine」(Rizzoli、2006年刊)

今回の一連の作品評価額とその落札結果からは、クリスティーズは写真家マイゼルの作家性、被写体マドンナと彼女のサインの価値を過大評価した可能性が高かったのではないか。同社は、本作をファインアート系のファッション写真であり、それを現代アート的なテイストの大判サイズ作品としてセールにかけた。
しかし、コレクターの多くは、本作はどちらかというとコレクション系アート作品だと認識したのではないかと思う。マドンナは、ファインアート系ファッションの世界で時代性を代表していたというよりも、ポップ・ミュージック界における時代のアイコン/セレブとして記号化され消費された存在だった。その価値は相対化されており、主観的に評価されていたのだ。つまり好きな人は好きだが、そうでない人は興味を持たないということ。今回の出品作はマドンナが大好きなファンが欲しがるコレクション系アート作品に近かったのだが、それらはファインアートとして高く評価された。残念ながら、多くの人たちには手が出なかったのだろう。

撮影したスティーブン・マイゼルは、ファッション写真家としては、時代を切り取ることに長けた優秀な表現者だった。しかし、彼が活躍したのが世の中の価値観が急激に多様化した時代だった。90年代中盤以降には、多くの人が共感するような時代性を持った作品の制作は、本人の能力と関係なく非常に困難な環境だったといえるだろう。今後のコレクションの対象になるマイゼル作品は、80年代から90年前後までの制作が中心になるのではないか。

(1ドル/148円で換算)

2023年秋ニューヨーク写真オークションレヴュー
外部環境の悪化により市況が低迷

ファインアート写真のニューヨーク定例オークションが10月上旬に開催された。外部環境を見てみると、米国の労働市場は相変わらず底堅く、また財政不安も背景にあり、長期金利の上昇が続いていた。また執拗なインフレ高進による当局の金融引き締めの長期化が世界経済のリスクであるとの見通しから投資家のリスク資産回避の動きもみられた。値動きが世界の景気の先行指標といわれる銅の国際相場も、中国の不動産市況悪化による需要低迷の連想から安値圏で推移していた。NYダウは2023年8月に35,630.68ドルだったがオークションが行われた10月上旬には一時33,002.38ドルまで下落している。経済や金融市場の動向はアート・オークションの参加者に心理的な影響を与えると言われている。オークション開催時の外部環境は、かなり厳しい状況だったといえるだろう。

さてオークションは出品者の違いにより2種類に分けられる。複数委託者の作品を1回にまとめて行うものと、単独の委託者によるコレクションを一括に販売するオークションだ。今秋は、複数委託者による「Phographs」オークション以外に、単独委託者によるオークションが複数開催された。

業者ごとのオークションをまとめると、クリスティーズは、10月3日に「A Century of Art: Photographs from The Gerald Fineberg Collection(Online)」、4日に複数委託者による「Photographs(Online)」、6日にスティーブン・マイゼルが撮影したマドンナの写真作品のセール「Madonna x Meisel – The SEX Photographs」を行っている。

サザビーズは、5日に「Photographs(Online)」、フィリップスは、10月11日に複数委託者による「Photographs」を開催した。サザビーズでは、「ピア24フォトグラフィー」閉鎖に伴う2回のオークションを春に続き開催。10月3日に「Photographer Unknown: Pier 24 Photography from the Pilara FamilyFoundation」、25日に「Pier 24 Photography from the Pilara Family Foundation」が行われている。
ただし春の売り上げをニューヨークのセールに含んでいないので、今秋の同セールも合計に含めないことにする。

さてオークション結果だが、3社合計で668点が出品され、470点が落札。全体の落札率は約70.4%で春の77.8%よりに悪化している。総売り上げは、約903万ドル(約13.27億円)で、今春の約966万ドル、昨秋の約1054万ドルからも減少。落札作品1点の平均金額は約19,217ドルで、今春の約22,273ドルより減少している。今春と比べると出品数が増加し、落札率が悪化したことから、総売り上げが減少し、落札単価も下落したことになる。不透明な経済状況から高額評価の作品の出品が控えられたことがわかる。

業者別では、売り上げ1位は約450万ドルのフィリップス(落札率78%)、2位は約346万ドルでクリスティーズ(落札率70%)、3位は106万ドルでサザビース(落札率48%)と、今春と同じ順位だった。サザビーズは複数委託者オークションの売り上げ、落札率ともに悪化している。しかし、これは特殊要因の影響による。同社は春から秋にかけて継続的に「ピア24フォトグラフィー」閉鎖に伴う4回のオークションを行い、総額1273万ドルの売り上げを記録している。
2023年、同社はセールの重点をすぐれた単独コレクションの一括セールに置いていたのだと判断できる。

Phillips NY「Photographs」、William Eggleston「Memphis, circa 1969」

今シーズンの高額落札は、フィリップス「Photographs」の、ウィリアム・エグルストンの代表作「Memphis, circa 1969」だった。1970年ごろに製作された、約30.5X 43.8cmの貴重なヴィンテージのダイ・トランスファー作品。落札予想価格25万~35万ドルのところ31.75万ドル(約4667万円)で落札された。

Phillips NY「Photographs」、Hiroshi Sugimoto「Opticks 161、2018」

2位も、フィリップス「Photographs」に出品された杉本博司の「Opticks 161、2018」だった。、118.7 X 119.4 cmサイズ、エディション1/1のChromogenic作品が落札予想価格10万~15万ドルのところ24.13万ドル(約3547万円)で落札されている。今シーズン杉本博司作品の人気は高かった。25日にサザビーズで開催された「ピア24 フォトグラフィー」で行われたセールでも、7点セットの作品「Henry VIII, Catherine of Aragon, Anne Boleyn, Jane Seymour, Anne of Cleves, Catherine Howard, and Catherine Parr、1999」が、落札予想価格40万~50万ドルのところ44.45万ドル(約6534万円)で落札されている。こちらは各149.2 X 119.4 cmサイズ、エディション5の銀塩作品。

Sotheby’s NY, Hiroshi Sugimoto 「Henry VIII, Catherine of Aragon, Anne Boleyn, Jane Seymour, Anne of Cleves, Catherine Howard, and Catherine Parr、1999」

2023年10月からロンドンのヘイワード・ギャラリーで彼の大規模回顧展「Hiroshi Sugimoto: Time Machine」がスタートしている。やはり有名美術館での展覧会開催はオークションでの相場に少なからず影響を与えているのだろう。

Christie’s NY,「Steven Meisel, Madonna, New York, 1992」

3位は、クリスティーズ「Madonna x Meisel – The SEX Photographs」の、「Steven Meisel, Madonna, New York, 1992」、163.8 x 132.3の1点もの、落札予想価格8万~12万ドルのところ20.16万ドル(約2963万円)で落札された。このオークション結果については後日に詳しく分析してみたい。

年間ベースでドルの売上を見比べると、現在の市場の状況が良く分かる。相場環境が悪いと、特に高額作品を持つコレクターは売却を先延ばしにする傾向がある。つまり高く売れない可能性が高いと無理をしないのだ。結果的に全体の売上高が伸び悩む傾向になる。政治経済見通しの不透明さが続く中、2023年のニューヨーク・セールの売り上げは約1865万ドル(落札率約73.7%)だった。ちなみに2022年の売り上げは約2029万ドル(落札率67.4%)だった。しかし、上記のように今年はサザビーズで、春から継続的に「ピア24フォトグラフィー」閉鎖に伴う4回のオークションが行われている。これを加えると2019年以来の3138万ドルの売り上げとなる。今回の一括セールを特殊要因だと判断するかで市場の現状評価が分かれるだろう。厳しい外部環境の影響で市場は調整期が続いている。しかし少なくとも新型コロナウイルスの感染拡大により落ち込んだ2020年の約2133万ドルレベルからは回復基調をたどっていると判断したい。

市場が様子見気分の時は、実は良い作品が割安に購入できるチャンスにもなる。しかし日本のコレクターは、いまの約1ドル/150円近い為替レートと、作品の運送コストの高止まりが続く中では積極的には動きにくいだろう。来春には、ウクライナ戦争やイスラエル・ガザ戦争の停戦合意や、世界的なインフレ見通しの改善など、市場環境の改善を期待したい。

(1ドル/147円で換算)